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拒否

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「なにから話せばいいのか…
わからないんですけど…。

僕は…母親が病気で亡くなってから
父親に…」









彩明あやあきはぽつりぽつりと話しだした。








涙と鼻水とよだれで
持っていたハンカチは
ぐしゃぐしゃになり
柏葉かしわばからタオルを借り
そのタオルを握りしめ
ひとつひとつ丁寧に
今までの事を話した。



なにも包み隠さずに
すべてを打ち明けた。










「………そして、今日、覚悟して
ここに、来たん、で、す。」











最初椅子に座って話していた
彩明あやあきだったが気がつけば
床で柏葉かしわばに抱きとめられていた。










「よしよし…。つらかったな。
今までひとりでよくがんばった。」


そう言って柏葉かしわば
彩明あやあきの頭をなでてくれる。











どのくらいそうして
すすり泣いていただろう。



窓から日の光がさしていた
診察室は月の光でぼんやりと
あかりがあるだけで
夜の帳がおりていた。










「…す、すみません。
こんな…こんな時間まで。」


彩明あやあきは我に返って
柏葉かしわばから離れる。








「…いや。大丈夫だよ。
君のための時間だから。」








「先生…。う、わぁぁぁぁ……………!」

彩明あやあきは大声を上げて泣いた。
















「君の治療には時間が
かかるかもしれない。」


そう柏葉かしわばは告げた。




「今、話を聞く限り…
僕は『人格統合』という
治療がいいのかな、と思う。

もちろんこれから
いろんな検査とかテストなどをして
決めていくんだけれど。」





そう言うと彩明あやあきの肩に
手を乗せた。











「統、合…?」 









「あぁ。彩明あやあきくんとアキくんを
1つの人格に統合する。」











「…………………いやです。




そんなのいやだ!
僕は…僕は彩明あやあきです!





アキじゃない!




僕が僕でなくなっちゃうのは
いやだ!…いやです……………!」








覚悟をしてきたはずの
彩明あやあきだったが思わず
取り乱して叫んだ。











「わかった。ごめん。
いろんな治療がある。
いろんな方法がある。
だから。これから話し合って
決めていこう。な。」








「………うっ、うぅ…。

い、やで………す。」









そういうと彩明あやあき
必死に逃げ出した。







「!!!彩明あやあきくん!待って!」







柏葉かしわばは追いかけたが
1寸の差で彩明あやあき
手をすり抜けた。









彩明あやあきくん!彩明あやあきくん!!!」
















どれだけ走ったのか。

息が切れ喉がヒュウヒュウと鳴る。

涙と汗と吐き出す息の水分で
顔中がベタベタだった。







壁に背をすりつけて
ズリズリとしゃがみ込む。









(息が上手く吸えず苦しい…
このまま…死んでしまえば
楽になれるんだろうか。

いや、きっとアキが怒るよね…)






苦しいのに笑いが出てくる。






彩明あやあきは狂ったように
泣き笑い、号泣した。









泣くだけ泣いて嗚咽混じりに
息をつく。











その時、聞き覚えのある声が
聞こえた気がした。







「……ぐうじ?
……………神宮寺じんぐうじ、なの?
え?大丈夫か?」










「…………………か、んだ、く、ん…。
…………来、ないで!」









「!!な!なんだよ!
どうしたんだよ?」







「………来、ちゃだ、め。」






「おい!神宮寺じんぐうじ…」







俊詩としふみは助け起こそうと
彩明あやあきの肩を触った。









その瞬間、ビリビリと俊詩としふみの手と
彩明あやあきの肩が痺れ

「うっ!」「あっ…」と
声をあげ、驚く2人。









「っつ………………とりあえず
うちに行こう。
神宮寺じんぐうじ、立てるか?」








ちいさく首をふる彩明あやあき









神宮寺じんぐうじ

ここにお前を置いていけない。
だから、とりあえず
うちに行こうよ。」









彩明あやあきは、とまどいながらも
無言で立ち上がった。









「すぐ、そこだから、さ。」

俊詩としふみは先を歩く。

彩明あやあきは少し後ろをおずおずと歩いた。

















部屋の中に入って俊詩としふみ
玄関に佇む彩明あやあき

「シャワー、使っていいから。
はい。」と、タオルと
新しい下着と着替えの
スエットを渡した。









「…でも。」
彩明あやあきは、躊躇う。






神宮寺じんぐうじ
いいから。お前の状態、ひどいよ。
流して着替えてきて。」











神田かんだくん…。
………あり、がとう…」



「ん。」







彩明あやあきは震えながら
シャワーをなんとか浴びて
着替えた。







シャワーから出ると俊詩としふみから

「ほい、これ飲んで。」と
カップを渡たされる。






「…………ありが、とう。」


はちみつが入った
ホットミルクだった。










「俺、心がしんどい時さ、
それ飲むと落ち着くから。」







そう言い俊詩としふみ
彩明あやあきの向かい側に座った。








彩明あやあきは顔を上げることが
出来ずにいたが意を決して
俊詩としふみを見る。
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