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恋人
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朝、彩明は重い瞼を
無理やりに見開いた。
眠くて眠くて眠っているはずなのに
眠り足りない。
睡眠不足感で体は疲れていた。
嫌な予感を頭から排除して
今日のことを考える。
(…お昼に生徒会長の
公約の放送を頼まれている。
神田くんにも、会いたい…。)
ベッドから体を引き剥がし
学校へと向かった。
バタバタと昼になり、放送室で
公約をしゃべった彩明。
終わったその足で俊詩の
クラスへと行ってみることにした。
教室が遠くに見えるところまで
来るとちょうど俊詩が
教室から出てきた。
手にはカバンを持っている。
「…あ!神田く…」
彩明の声は届かずに
俊詩は足早にあっという間に
行ってしまった。
(帰った?のかな…しかたない。
夜にLINEしてみようかな…)
そう思い彩明は
教室を後にした。
夜になり彩明は
校内放送聞いてくれた?と
LINEを送る。
返ってきた返事は
昼寝してた、っていうもので…
上手く話せたならよかったじゃん、と
言われ、おやすみが言えて
それだけで彩明は満足だった。
強い眠気が来てまたベッドに倒れ込む。
翌朝強い倦怠感の中目覚める彩明。
何かが違う…。直感的にそう感じた。
(もしかしてこれは…
いや、でも。夢精もしていないし…。)
そこまで考えて、ハッとする。
(香りが違…う?
家のボディーソープはフローラル系だ。
でも今、自分からは…
シトラス系の、香りが…)
「ど、どうして!!」
ガバリ、と起き上がり
自分の体をマジマジと見つめる。
よく見るとキスマークのような
あざが数箇所。
彩明はガクガクと震えた。
(そ、んな…そんなはず、ない!
僕は…僕は!)
「家で眠っていた…はず。」
頭を抱えうずくまる彩明。
(病院、行ってみようか…
でもこんなこと、話せそうにない。
とりあえず薬を変えてもらおう…。
この強い倦怠感をなんとかしないと
どうにもならない。)
彩明は高校生になって
初めて学校を休んだ。
変えてもらった薬は
体に合ったらしく
睡眠もきっちりと取れ
彩明の体調は回復していった。
それから数日、テスト期間に入り
バタバタと忙しく日々は過ぎていく。
彩明の成績は当然下がっていて
10位にも入っていなかったが
それ以上に驚いたのは
俊詩の結果が圏外まで
落ちていた事だった。
彩明は心配になって
LINEを送ってみる。
大丈夫?との問いに
【神宮寺会える?】と
返ってきて彩明は
心臓が跳ね上がった。
(このあと病院に行って…それからになるから…)
ドキドキしながら夜になら会える、と
返し彩明は震える手で
スマホをしまった。
久しぶりに会った俊詩は
見てすぐわかるぐらいに
げっそりとやつれていた。
彩明は青ざめて思わず
ちゃんとごはん食べてるの?
すごい痩せてない?と
大声を出してしまう。
そう?と力なく返す俊詩。
焦ってなんか買ってこようか?と
言ってみるがいらない、と
突っぱねられた。
(なにが…なにがあったのだろう………。
まさか病気とか!)
彩明は前世の記憶と妙に重なって
声にならない悲鳴をあげる。
お前は元気そうだな?と言われて
このところ寝起きがよくて、と
返すものの心配でそれどころではない。
ふいに、俺もうダメかもと
俊詩が呟いた。
「なにがあったの?」と
声を絞り出す。
俊詩は何も答えなかった。
動悸が激しい。病気では?と
聞くのが怖い。
彩明は「恋煩いとか?」と
見当外れなことを
口にしたつもりだった。
しかしそれに対する俊詩の反応は
それが正解、とわかって…。
「え?あってるの?」と
それはそれでまた複雑な気持ちが
湧き上がってくる。
病気ではなかった、という
安堵の気持ちと
俊詩に恋人がいると
わかって落胆する気持ちが
ないまぜになり声が出なかった。
恋愛経験ないから
アドバイスできないな、との僕の答えに
なぜかほっとしたような顔の
俊詩がぽつりと語ったのは
LINEでの連絡が1週間ほど
こないということだった。
彩明は俊詩の恋人が
女性だと思い込んで
彼女にも事情があるかもだから
もう少し待っててあげたら?と言い
どんな女の子だろう?と
つい口に出して言う。
長い沈黙があった。
彩明はなにか
まずいことを言ったかと焦る。
「オトコだ、って言ったら
どうする?」
衝撃的な言葉に彩明は
え?と聞き返すしかできない。
忘れて。そう言って俊詩は
振り返らずに走っていってしまった。
残された彩明は茫然自失の状態で
長い間ブランコに座る。
(彼の恋愛対象は………男性?
なら自分にも入る余地はある、の?
…いや、そんなのないに
決まってるじゃん…
何考えてんだ…。
僕…僕は友達でもなんでもいい。
神田くんが
幸せなら僕はいいんだ。
それで。それだけで。僕は…。)
涙が頬を流れる。
しばらく泣いて彩明は
俊詩にLINEを入れることにした。
異性だって同性だっていいと思う。
そんなにまでなるほど
愛する人がいるのがうらやましい。
自分の健康を大切にして。
思いの丈を短い文章に込める。
ありがとう、との返答に
おやすみ、で返した彩明は
声を出して泣いた。
無理やりに見開いた。
眠くて眠くて眠っているはずなのに
眠り足りない。
睡眠不足感で体は疲れていた。
嫌な予感を頭から排除して
今日のことを考える。
(…お昼に生徒会長の
公約の放送を頼まれている。
神田くんにも、会いたい…。)
ベッドから体を引き剥がし
学校へと向かった。
バタバタと昼になり、放送室で
公約をしゃべった彩明。
終わったその足で俊詩の
クラスへと行ってみることにした。
教室が遠くに見えるところまで
来るとちょうど俊詩が
教室から出てきた。
手にはカバンを持っている。
「…あ!神田く…」
彩明の声は届かずに
俊詩は足早にあっという間に
行ってしまった。
(帰った?のかな…しかたない。
夜にLINEしてみようかな…)
そう思い彩明は
教室を後にした。
夜になり彩明は
校内放送聞いてくれた?と
LINEを送る。
返ってきた返事は
昼寝してた、っていうもので…
上手く話せたならよかったじゃん、と
言われ、おやすみが言えて
それだけで彩明は満足だった。
強い眠気が来てまたベッドに倒れ込む。
翌朝強い倦怠感の中目覚める彩明。
何かが違う…。直感的にそう感じた。
(もしかしてこれは…
いや、でも。夢精もしていないし…。)
そこまで考えて、ハッとする。
(香りが違…う?
家のボディーソープはフローラル系だ。
でも今、自分からは…
シトラス系の、香りが…)
「ど、どうして!!」
ガバリ、と起き上がり
自分の体をマジマジと見つめる。
よく見るとキスマークのような
あざが数箇所。
彩明はガクガクと震えた。
(そ、んな…そんなはず、ない!
僕は…僕は!)
「家で眠っていた…はず。」
頭を抱えうずくまる彩明。
(病院、行ってみようか…
でもこんなこと、話せそうにない。
とりあえず薬を変えてもらおう…。
この強い倦怠感をなんとかしないと
どうにもならない。)
彩明は高校生になって
初めて学校を休んだ。
変えてもらった薬は
体に合ったらしく
睡眠もきっちりと取れ
彩明の体調は回復していった。
それから数日、テスト期間に入り
バタバタと忙しく日々は過ぎていく。
彩明の成績は当然下がっていて
10位にも入っていなかったが
それ以上に驚いたのは
俊詩の結果が圏外まで
落ちていた事だった。
彩明は心配になって
LINEを送ってみる。
大丈夫?との問いに
【神宮寺会える?】と
返ってきて彩明は
心臓が跳ね上がった。
(このあと病院に行って…それからになるから…)
ドキドキしながら夜になら会える、と
返し彩明は震える手で
スマホをしまった。
久しぶりに会った俊詩は
見てすぐわかるぐらいに
げっそりとやつれていた。
彩明は青ざめて思わず
ちゃんとごはん食べてるの?
すごい痩せてない?と
大声を出してしまう。
そう?と力なく返す俊詩。
焦ってなんか買ってこようか?と
言ってみるがいらない、と
突っぱねられた。
(なにが…なにがあったのだろう………。
まさか病気とか!)
彩明は前世の記憶と妙に重なって
声にならない悲鳴をあげる。
お前は元気そうだな?と言われて
このところ寝起きがよくて、と
返すものの心配でそれどころではない。
ふいに、俺もうダメかもと
俊詩が呟いた。
「なにがあったの?」と
声を絞り出す。
俊詩は何も答えなかった。
動悸が激しい。病気では?と
聞くのが怖い。
彩明は「恋煩いとか?」と
見当外れなことを
口にしたつもりだった。
しかしそれに対する俊詩の反応は
それが正解、とわかって…。
「え?あってるの?」と
それはそれでまた複雑な気持ちが
湧き上がってくる。
病気ではなかった、という
安堵の気持ちと
俊詩に恋人がいると
わかって落胆する気持ちが
ないまぜになり声が出なかった。
恋愛経験ないから
アドバイスできないな、との僕の答えに
なぜかほっとしたような顔の
俊詩がぽつりと語ったのは
LINEでの連絡が1週間ほど
こないということだった。
彩明は俊詩の恋人が
女性だと思い込んで
彼女にも事情があるかもだから
もう少し待っててあげたら?と言い
どんな女の子だろう?と
つい口に出して言う。
長い沈黙があった。
彩明はなにか
まずいことを言ったかと焦る。
「オトコだ、って言ったら
どうする?」
衝撃的な言葉に彩明は
え?と聞き返すしかできない。
忘れて。そう言って俊詩は
振り返らずに走っていってしまった。
残された彩明は茫然自失の状態で
長い間ブランコに座る。
(彼の恋愛対象は………男性?
なら自分にも入る余地はある、の?
…いや、そんなのないに
決まってるじゃん…
何考えてんだ…。
僕…僕は友達でもなんでもいい。
神田くんが
幸せなら僕はいいんだ。
それで。それだけで。僕は…。)
涙が頬を流れる。
しばらく泣いて彩明は
俊詩にLINEを入れることにした。
異性だって同性だっていいと思う。
そんなにまでなるほど
愛する人がいるのがうらやましい。
自分の健康を大切にして。
思いの丈を短い文章に込める。
ありがとう、との返答に
おやすみ、で返した彩明は
声を出して泣いた。
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