上 下
7 / 98

理解不能な気持ちとアザ

しおりを挟む
またLINEがきた。

溜息をつき画面を見る。

アキ、とやらからではなく
母親だった。


<【アンタ倒れたんだって?
大丈夫なの?】>

(遅っ…どいつもこいつも胸くそ悪い。)


またLINEだ。


【【この景色、覚えていない?】】


そして写真が送られてきた。

(見覚えが…ある。)

それはどこかの雪山の展望台から
見た景色だった。

体がビクン、と跳ね
その場所で誰かときつく
抱き合った光景が一瞬だけ頭をよぎる。

(ハァハアハァハア…なんなんだ!)


【【見覚え、あったでしょ?】】


【なにをしたんだ?
宗教の催眠術かなんか?
なんなんだよ!】


【【そんなんじゃない。
ボク達は前世でそこに一緒に
行ってるんだ。その場所の写真だよ。
だからキミは見覚えがあって
当然なんだ。】】


【わけわからないこと言うな!】


【【そのうちわかるときがくる。
ボクがヒントを送るよ。
だからこのLINE消さないでね。】】


【おい!さっさと種明かしをしろよ!
催眠術なんだろ?】


しかしヒントを送る、とのLINEから
既読にはならずに
俊詩としふみはまたスマホを投げた。







いつしか眠りに入った俊詩としふみ
夢を見ていた。

大きな木の下で
ただ微睡んでいる自分。

あたたかい。

誰かが腰に抱きついてくる。

自然と微笑む。

「…○○……愛してる。」

名前を呼んでいるようだが
肝心なところがわからない。

こんな夢、今まで見たことないのに…

いや。果たしてそうだろうか。
覚えていないだけで
よく見ているような気もした。
いつになく穏やかな目覚めの朝。



「…。」

不思議な気分で起き上がり
ふとスマホに目をやった。

点滅している…

開けてみるとLINEだった。

アキ、からだ。


【【この写真はどう?】】


添付されていたのは大きな木の写真。

(さっき夢に出てきた…
間違いない、この木だ。)

妙に胸が高鳴る。
なんなんだろう、この高揚感は…


【【この木はね…。
2人が1番幸せだった時にいた
場所の木だよ。
ここでよく2人で抱き合って
昼寝をしていた。
キミはボクにいつも愛してる、と
言ってくれたんだ。】】


無意識に俊詩としふみは涙を流していた。
あたたかい涙。なぜだろう。

切なくて幸せな感覚。



【話を、もっと聞かせてくれないか。】


気づけばそうLINEをしていた。


【【会おうか。】】


この言葉を見て急に俊詩としふみは躊躇した。

返信できずにずっと
そのスマホの画面のその字を見ていた。


【いや。もっと教えて。】


そう送った。


【【わかった。無理は言わないよ。
でも近いうちにきっと会うよ。】】


【【ボク達は前世でも同性同士でね。
今よりも、もっともっと
偏見と差別がすごくて。
結局最後は一緒に死んだんだ。
あの雪山でわざと遭難した。
山のどこかにボク達の遺体は
抱き合った状態で残っているはず。】】


【なんで前世、なんてわかるんだ?】


【【ボク、中学の終わりに
交通事故にあってね。
その時、1ヶ月ぐらい意識不明で。
その間、ずっと前世を体感してた。

目覚めてからいろいろ調べて調べて。
それが事実だったと確認した。

でも顔がはっきりわからなくてね。
それでよく似た男性を探し続けてた。
やっと、見つけたんだよ。キミを。】】


【じゃあ、まだ俺じゃない可能性も
あるんじゃないの?】


【【いや、間違いなくキミだ。
会った瞬間にわかったんだ。】】


【他には?】


【【キミ、左腕の裏側に
アザがない?
少し星の形に似たアザ。】】


確かに俊詩としふみの左腕の裏には
アザがあった。

星に似た形…そう言われれば
そう見えなくもない。

でもそんなの親以外に知らない…
いや、親も知らないんじゃないか…。


【ある】


【【そうだろう。やっぱりキミは
あの人の生まれ変わりだ。
あの人にもアザがあったから。】】


【信じられない。】


【【そうだね…急にそんなこと
言われても、だよね。また話そう。】】


スマホを見つめ茫然とする俊詩は

(なにがおこっているのだろう…)

そう思いながら愕然とする他はなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

尻で卵育てて産む

高久 千(たかひさ せん)
BL
異世界転移、前立腺フルボッコ。 スパダリが快楽に負けるお。♡、濁点、汚喘ぎ。

諦めようとした話。

みつば
BL
もう限界だった。僕がどうしても君に与えられない幸せに目を背けているのは。 どうか幸せになって 溺愛攻め(微執着)×ネガティブ受け(めんどくさい)

嫌がる繊細くんを連続絶頂させる話

てけてとん
BL
同じクラスの人気者な繊細くんの弱みにつけこんで何度も絶頂させる話です。結構鬼畜です。長すぎたので2話に分割しています。

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?

こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。 自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。 ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?

壁穴奴隷No.19 麻袋の男

猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。 麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は? シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。 前編・後編+後日談の全3話 SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。 ※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。 ※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。

【R18】孕まぬΩは皆の玩具【完結】

海林檎
BL
子宮はあるのに卵巣が存在しない。 発情期はあるのに妊娠ができない。 番を作ることさえ叶わない。 そんなΩとして生まれた少年の生活は 荒んだものでした。 親には疎まれ味方なんて居ない。 「子供できないとか発散にはちょうどいいじゃん」 少年達はそう言って玩具にしました。 誰も救えない 誰も救ってくれない いっそ消えてしまった方が楽だ。 旧校舎の屋上に行った時に出会ったのは 「噂の玩具君だろ?」 陽キャの三年生でした。

ひとりぼっちの180日

あこ
BL
付き合いだしたのは高校の時。 何かと不便な場所にあった、全寮制男子高校時代だ。 篠原茜は、その学園の想像を遥かに超えた風習に驚いたものの、順調な滑り出しで学園生活を始めた。 二年目からは学園生活を楽しみ始め、その矢先、田村ツトムから猛アピールを受け始める。 いつの間にか絆されて、二年次夏休みを前に二人は付き合い始めた。 ▷ よくある?王道全寮制男子校を卒業したキャラクターばっかり。 ▷ 綺麗系な受けは学園時代保健室の天使なんて言われてた。 ▷ 攻めはスポーツマン。 ▶︎ タグがネタバレ状態かもしれません。 ▶︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。

処理中です...