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思い込んでいた

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ミッションカードが3枚届いて、そのうちの1枚、通常ミッションの2人で朝食作り、を終えて、また向かい合わせに座る。今朝は僕がベーコンエッグを焼き、サンがコーヒーを入れパンを焼いて。



『実は今日はスープを作ったんだよ!ライのために!』



そう明るく言って持ってきたのは金色で透きとおったキラキラ光る液体だった。

「……いつの間に?」

『夜中、目が覚めて思い立ったの!仕込みしてすぐ寝たよ?』

「…!……そんなことしないでいいから!もう!」

いや、俺の密かなるミッションだからさ!と笑ってスープのカップを差し出してくる。



『簡単に作ったけど野菜のおだしがいっぱい出てるからね!あ、それ、たくさん作ったから冷凍庫に小分けしていっぱい入れるようにするからしばらくいけるよ!』

僕は二の句が繋げなくなって押し黙った。







そっとスープに口をつけてみるとなんとも優しいお日様の味がする。

「…………おいしいよ。サン。ありがとう…。」

うんうん!と笑顔で頷いてサンは今日よろしくお願いします、と言った。

「うん。………そうだよね。サンにとっては初めての仕事らしい仕事だもんね。」


『ライと一緒で心強いよ。
………あ、忘れてた!あと2つのミッション!』

【仕事に出る前にお互いをコーディネートしてください。】

「ああ…そうだった。そういうの好き?サンはおしゃれだよね。」

『仕事に行く時の服をお互いにコーディネートなんて、ワクワクする!自分の服はなんとなく選んでるだけだけどライとなると迷うなぁ!』

「……。楽しそうだね。もう1つは一緒に自撮りだね。コーディネート終わってからにしようか。」

『うん!』

「じゃあ僕洗い物しておくからシャワーしてきて。」

ライありがとう、と走っていく背に笑いをもらした自分にモヤっとした気分になりながらも片付け終えて部屋へと着替えとタオルを取りに行く。







入れ替わりでシャワーをして
2人してウォークインクローゼットに来た。自分たちが持ってきたもの他にもいろいろと洋服がかけてある。


『これ髪はどうしとくのが正解?』

「まぁ、適当に…?行ったらヘアメイクさんがしてくれるし。」

『わかった。』


服を選び時々おたがいに体にあてて確認し合ったりして候補を何着か持って一緒にドレッシングルームへと入っていくとふいにサンは真剣な顔になり座り込んだ。


「え?なに?ど、どうしたの?」

『…………ライ。俺…。』

「うん。…?」

『…すごい緊張してて。ここ、カメラない、よね?』

「ああ。ないよ。…ちょっとの間、息抜きしていいよ。………そう、だよね。僕は仕事に出たらカメラからは逃れられるけどサンは家にいて、ずっと、だもんね…。気、抜けなかったよね…。気づいてあげられなくてごめん。」

『…………。いや。こんなに息が詰まるものだと思ってなくて…ライにもなかなか言えなくて…。まだ4日なのに音をあげたらいけない、って思って…。でも…。』






(サンは明るいから、大丈夫だ、って、僕は思い込んでいたのかもしれない…。)







「サン。僕のリラックス法が効くかどうかわからないけど。
………あのね。目を瞑って。サンはどこにいる時が落ち着く?」


『………うみ。』

「じゃあ海にいる自分を想像して…。どうしてる?」

『……………つり。…つれた。あじがつれた。……らいにたべさせたい…。』

目を閉じたままどこか恍惚とした表情でサンは答える。

「…ふふ。こんなときまで僕は出さなくていいんだよ。」

『………ううん。ずっともうそうしてた。』

「ふふ…。どういうこと?」

『だから…。ずっと…。す…きで…。』

「え?」


『おねがい…。いっしゅんでいいから、…だきしめさせてくれない?』





「は?」






僕はすっぽりとサンに包まれていた。
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