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近すぎる距離

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カシャカシャ、カシャ……

微かな物音に意識が浮上する。

(ん……なん、のおと?)





「はっ!何時?」

スマホを確認すると朝の6時半を過ぎたあたりで、ほっと胸を撫でおろすと同時にその音の正体に気づいた。


(サン、朝ごはん作ってる、ぽいよな……)

少し乱れた髪を整えながらリビングへ行くとおはようライ!と明るい声がする。

「あ、おはよう……サン早いね?」

『アハ!なんかバッチリ目が覚めちゃってさ!……あ、ミッションカードきてたよ!』

「え?そうなの?また取りに行かせてごめん。」

『あ!やった!ごめん、って言った!シール貼るよ!』

「!……え?あぁあ!だってさ!」

『決まりは決まり!』

嬉々として赤いシールを貼るサン。

(もう、最悪だ……。)




「ふぅ……。えっとミッションは?」

『俺が1人で朝ごはん作る、ってミッションと、もう1つはこれ。』

差し出されたカードを読む。

「リクエストミッション。この企画のSNSアカウントを作ったので2人で更新してくださ、い?」

その文字の下にはログインIDとパスワード、そしてハッシュタグが記されていた。

早速、リビングのタブレットでログインするとraion_taiyo公式アカウントが出来上がっていてフォロワーが200万人を越している。

「……すげえフォローしてくれてる、よ?」

『マジで?じゃあなにかあげなきゃ!……って俺まったくやったことないんだけど。友達のをちらっと見た事あるくらいでさ……。』

「何作ってくれたの?」

『へ?』

「……朝ごはん。」

『……あ、ほら。パンと卵あったから卵サンド作った。コーヒー飲める?』

「うん。入れて。」

『……?う、うん。…………はい。』

パシャ。

僕は撮ったその写真に加工アプリでキラキラのフレームをつけそのサンドイッチをアップした。

サンが作ったサンドイッチ。byライ
#新堂雷音
#raionsindo
#来栖太陽
#taiyokurusu
#雷音と太陽1ヶ月シェアハウスチャレンジ
#raion_taiyo_1monthsharehousechallenge

そうキャプションをつけて。





『なるほどー!こんなふうに載せるんだね!』

サンは僕の手の中にあるタブレットを覗き込み感激している。

「まぁ、フツーでしょ。あ、朝食ありがとう。いただきます。それにしても……っ!な、なに?ち、近すぎない?」

『?そう?……ねぇ夜に加工アプリ?教えてね!いただきます!』

「……あ、おいしい。」

『でしょでしょ?……コラ!ライ!キュウリ抜かない!』

「ええ~」

『昨日も野菜残してたでしょ?』

「嫌いなんだって~」

『バランスよく食べなきゃダメじゃんか。』

「……しらない。野菜食べなくても生きてるし。……ごちそうさま。洗い物はするよ。置いといて。」

『絶対ライに野菜食わしてみせるっ!これは俺の密かなるミッションだ!』

なにやら握りこぶしをふってそう意気込んでいるサンをしりめに僕はバスルームへと滑り込んだ。








「じゃあいってきます。あとでね。」

迎えにきたよしマネにラジオ収録の見学の話を聞いたサンは上機嫌で。

『いってらっしゃあい!先輩!後ほどよろしくお願いします!』

(やっぱりくそめんどくせえ……。)


{じゃあ太陽たいよう、あとでたくマネがくるからね。……あ、これ太陽たいようのミッションだよ。}

『お、カード!……はい、わかりました!』



僕はその陽気な声を背に
車に乗り込んだ。
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