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きみは晶一朗、ぼくは維。③(誠と健一)
しおりを挟む「維!合格おめでとう!やったな!」
『うん!あぁ…ほっ、としたぁ…!
晶一朗もおめでとう!』
これで一緒に高校も通えるな…と
熱い息で囁く晶一朗と
中学校に報告に行こうと
僕達は手を繋いで歩いていた。
向こうから来る何人かの女子が
僕達を見て何かを話している。
不安な目を晶一朗にむけると
手を強く握り返して笑ってくれた。
「大丈夫だ。」
『う、うん………。』
その女子たちはあまり好意的な目ではなく
眉をひそめこそこそと何かをしきりに話す。
「行こうか。」
『…………。』
晶一朗は僕の肩を抱いて
堂々と女子たちの前を歩いた。
結局何も言われずに僕達は
そこを通り過ぎたけれど
僕はだんだんと震え始めていた。
「維?震えて、る?
大丈夫か?熱でもあ……」
『…なんでもない。これから………
高校生活はまた1からの人間関係だよね…。
なんか僕怖くなっちゃって………。』
「怖がる必要なんてないさ。
俺たち何も悪いことしていない。
俺が維を守るから…。
絶対に守る。堂々と生きていくんだ。
あの時みたいに隠して隠して
コソコソして自分を偽るのは
もう嫌だ。健一。」
『誠…。あの時は…。
ごめんね…僕…………。君を………。
先に君を裏切ったのは…。』
「いいんだ。気にするな。
俺は幸せだった。お前と出会えて
あの時会えて。健一が
来てくれただけで本当に嬉しかった。」
『…………ごめんね……ごめんね………。』
戦後の混乱期の中で僕達は
仕事仲間として出会い
すぐ恋に落ちたけれど
その頃の偏見はそれは凄いものだった。
だから…。
僕は自分自身を偽り
親から言われた女性と結婚した。
それを知って誠も別の女性と…。
その2年後、誠が
病に伏したことを知り
僕は何度も入院している病院の前まで
行ったけれもどうしても入って行けずに
毎日その病院の前で佇んでいた。
ある日、最上階の病室の窓から
誠が顔を出し僕に手を振った。
気づいていたのだ。僕がいることを。
アイコンタクトをして
しばらく見つめあったあと
そっと閉じられた窓を見つめ
明日はお見舞いに行こう、と
決心して家に戻った。
そして次の日病院に行くと
朝に亡くなった、と聞かされた。
僕は後悔した。
なぜすぐに会いに行かなかったのだろう。
なぜ自分を偽ったのだろう。
『ごめんね…。誠…。
僕が悪かった…。』
「健一…。謝らなくていいよ…。
………………そのぶん。そのぶん今世は
一緒にいてもらうからな。」
『うん。…僕、君を離さないよ。』
そう言って不安に震えていた体を
シャキッと直して再び手を差し出す。
『晶一朗。行こう。ずっと、共に。』
「ああ。維…。」
僕達は堂々と手を繋いだ。
『うん!あぁ…ほっ、としたぁ…!
晶一朗もおめでとう!』
これで一緒に高校も通えるな…と
熱い息で囁く晶一朗と
中学校に報告に行こうと
僕達は手を繋いで歩いていた。
向こうから来る何人かの女子が
僕達を見て何かを話している。
不安な目を晶一朗にむけると
手を強く握り返して笑ってくれた。
「大丈夫だ。」
『う、うん………。』
その女子たちはあまり好意的な目ではなく
眉をひそめこそこそと何かをしきりに話す。
「行こうか。」
『…………。』
晶一朗は僕の肩を抱いて
堂々と女子たちの前を歩いた。
結局何も言われずに僕達は
そこを通り過ぎたけれど
僕はだんだんと震え始めていた。
「維?震えて、る?
大丈夫か?熱でもあ……」
『…なんでもない。これから………
高校生活はまた1からの人間関係だよね…。
なんか僕怖くなっちゃって………。』
「怖がる必要なんてないさ。
俺たち何も悪いことしていない。
俺が維を守るから…。
絶対に守る。堂々と生きていくんだ。
あの時みたいに隠して隠して
コソコソして自分を偽るのは
もう嫌だ。健一。」
『誠…。あの時は…。
ごめんね…僕…………。君を………。
先に君を裏切ったのは…。』
「いいんだ。気にするな。
俺は幸せだった。お前と出会えて
あの時会えて。健一が
来てくれただけで本当に嬉しかった。」
『…………ごめんね……ごめんね………。』
戦後の混乱期の中で僕達は
仕事仲間として出会い
すぐ恋に落ちたけれど
その頃の偏見はそれは凄いものだった。
だから…。
僕は自分自身を偽り
親から言われた女性と結婚した。
それを知って誠も別の女性と…。
その2年後、誠が
病に伏したことを知り
僕は何度も入院している病院の前まで
行ったけれもどうしても入って行けずに
毎日その病院の前で佇んでいた。
ある日、最上階の病室の窓から
誠が顔を出し僕に手を振った。
気づいていたのだ。僕がいることを。
アイコンタクトをして
しばらく見つめあったあと
そっと閉じられた窓を見つめ
明日はお見舞いに行こう、と
決心して家に戻った。
そして次の日病院に行くと
朝に亡くなった、と聞かされた。
僕は後悔した。
なぜすぐに会いに行かなかったのだろう。
なぜ自分を偽ったのだろう。
『ごめんね…。誠…。
僕が悪かった…。』
「健一…。謝らなくていいよ…。
………………そのぶん。そのぶん今世は
一緒にいてもらうからな。」
『うん。…僕、君を離さないよ。』
そう言って不安に震えていた体を
シャキッと直して再び手を差し出す。
『晶一朗。行こう。ずっと、共に。』
「ああ。維…。」
僕達は堂々と手を繋いだ。
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