騙し屋のゲーム

鷹栖 透

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第五章:暴かれた真実と怒りの炎

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後藤の調査は、驚くほど迅速かつ詳細だった。山下の悪行は、想像をはるかに超えていた。後藤が静かに語り始めたその内容は、まるで凍てつく刃物のように、僕の心に突き刺さってきた。

「山下は、巧妙な手口で高齢者を狙い、土地や財産を騙し取っていた。ターゲットの家族構成、経済状況、人間関係などを綿密に調査し、弱みにつけこむ。偽造書類や偽の証言を使うのはもちろん、時にはターゲットの家族や友人を装って近づき、信頼関係を築いた上で、騙すこともある」

後藤の言葉は、冷徹だった。まるで、人間の悪意を凝縮したような、重苦しい空気が部屋を支配していた。
「あなたのおじいさんも、山下のターゲットの一人だった。奴は、おじいさんが亡くなる数ヶ月前から、接触を始めていた。頻繁に家に訪れ、親身になって相談に乗っていたそうだ。葬儀に現れたのも、偶然ではない。全て計画的だったんだ」

計画的。

その言葉が、僕の心に突き刺さった。祖父は、生前、山下のことをよく話していた。信頼できる友人だと、何度も言っていた。

まさか、その友人に、最期の時間を利用されていたとは。

「山下は、おじいさんの死後、偽造した遺言状を使って土地を奪った。五百万という金額も、山下が勝手に決めたも
のだ。

実際には、その3倍以上の価値がある。奴は、お前の弱みにつけこみ、足元を見たんだ」
後藤が、山下が偽造した遺言状のコピーを見せてくれた。確かに、祖父のサインに似せた偽のサインがあった。だが、筆跡は微妙に異なっている。

よく見れば、偽物だとわかる。何故、あの時、気づかなかったのか。

騙されていた。まんまと騙されていた。

怒りがこみ上げてきた。

山下の笑顔、優しい言葉、全てが嘘だった。祖父の信頼を裏切り、大切な土地を奪った。許せない。絶対に許せない。怒りは、まるで炎のように、僕の心を焼き尽くそうとしていた。

「どうする? 加藤さん」

葛西が静かに尋ねてきた。その声は、静かだが、力強い。

「…復讐したい」

僕は絞り出すように言った。

「奴を破滅させたい。奪われた土地を取り戻したい。そして、祖父の無念を晴らしたい」

僕の言葉は、怒りで震えていた。

「いいでしょう」

葛西は頷いた。

「私も、悪を許すことはできない。協力しましょう。山下に、正当な報いを受けさせてやりましょう」

葛西の言葉は、静かだが、確固たる決意が感じられた。

後藤は、黙ってキーボードを叩き始めた。モニターには、山下の個人情報、資産状況、交友関係などが次々と表示されていく。

復讐の計画が、動き始めた。僕の心の中を燃え盛る怒りの炎は、山下の悪行を焼き尽くすまで、決して消えることはないだろう。
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