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あなたの本当の名前

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キリッとした目と整えられた眉。


鼻筋が綺麗に通った高い鼻、少し薄めの唇がセクシーで少しクールな印象も与えてる。


もちろん、好みの問題だけど、あの人をイケメンじゃないと言う人がいたら、理由を聞いてみたい。


絶対に…いないと確信する。


それくらいのとんでもないイケメンぶりだ。


『お店入ります』


私は私服にエプロンを着け、あんこさんにそう言った。


『あの人に声かけてみたら?雫ちゃん、1度も話してないでしょ?』


『無理ですよ。何を話せばいいかわからないですから。レジの対応だけで精一杯です』


『みんな話したがってるのに、雫ちゃんは謙虚ね。それとも、タイプじゃないのかしら?』


あんこさんが、ちょっと意地悪そうに笑った。


『タイプとかって言う問題じゃないですよ。あんな素敵な人が私なんかを相手にするわけないですから』


そうだよ。


こんな私なんか…


恋愛対象として、誰からも相手にされてない。


あんなイケメンならなおさらだ。


話しかけて、無視されるか迷惑がられるに決まってる。


だったら最初から何もしない方がマシ…だよね。


ほんと、こんなだから、いつまで経っても全然恋愛出来ないんだよね、私は…


頑張らないとって気持ちはあるのに、前に進めない。


情けないよ…


とにかく、私は仕事を始めた。


あんこさんが変なこと言うから、意識しちゃうじゃない。


本当にもう…


あ…


確かにいる。


だいたいランチが一段落した2時~3時の間に来て、30分くらいで帰る。


1番奥の、いつもの席が空いてればそこに座る。


その席からは少し遠いけど、レジが見えて…


「頼むからこっちを見ないで」


なぜか、そんなことを願ってる自分がいた。


『あ…』


思わず、小さな声が出た。


スーツの人が、立ち上がってこっちに向かって来た。


食べた料金を払うだけの、当たり前の行動。


なのに「来ないでー」と、また願う。


『お願いします』
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