あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~

けいこ

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夏の雨と共に現れたあなた

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えっ…


一瞬、私の中の時間が止まった。


九条さんのその質問…


答えはYES。


でも…


本当のことを話してしまったら、私、どうなってしまうかわからない。


いっぱい悩んで、それでもようやく1人で雪都を育てる決心をした。


その決意が揺らいでしまいそうで怖い。


私は目をぎゅっと閉じて、ただ下を向くしか出来なかった。


もう、心臓のメーターが振り切れそう。


『彩葉、落ち着いて。俺を見て。大丈夫だから』


勝手にパニックになってる私の心の中に、九条さんの穏やかな声がスーッと入ってきた。


優しさで満たされたその言葉に、私はゆっくりと顔をあげた。


ただ九条さんを信じて、深く呼吸をしながら。


そしたら…


目の前に柔らかな笑みを浮かべるあなたがいて…


動揺、不安、迷い、そんな複雑な思いに覆われた心に、小さくて温かい明かりが、ポっと灯ったような気がした。


『…ごめんなさい』


『どうして謝る?彩葉は何も悪くない。君が謝ることは何もない』


『…私…どうしたらいいのか…今、何を答えたらいいのか…』


せっかく九条さんが話しやすい雰囲気にしてくれたのに、言葉に詰まって上手く言葉が出ない。


『そんなに涙を溜めて…俺は君をずっと苦しめていたんだな』


九条さんは、自分を責めるように言った。


こんな素敵な人の悲しむ顔を見るのはすごくつらい。


『そんな…苦しめるなんて、そんなことありません。決してそんなこと…ないんです。だって、私は…ずっと幸せでしたから』


その気持ちは嘘じゃない。


私は雪都といられて、毎日本当に「幸せ」だった。


『彩葉…でも、出産という大事な時に、俺に何も言えないままで、たくさんつらい思いもしただろう。なのに君は俺を責めるどころか、立派に子どもを産み、育て、守ってくれた』
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