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遥か遠い国で

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『あ、すみません。ちょっと考え事をしてました』


『別に構わない。オレンジティー入れたから』


美味しそうな透き通った紅茶。


黄金色がとても綺麗だ。


マンションに2人でいる時は、なるべく笑顔でいるように心がけてるのに、今は…


ちょっと暗い顔してたかな?


『ありがとうございます。いただきます』


爽やかでスッキリとした味わい。


『美味しいです、オレンジの良い香りがして。本当にありがとうございます』


こんな風にいつも変わらない優しさをくれる絢斗。


ホテルにいる時は、お客様のために一生懸命になって、そのお客様から頂く笑顔にずいぶん支えられてる。


でもやっぱり、1人なるといろいろ考えちゃってる自分がいて、頭がぐちゃぐちゃになってしまうんだ。


そんな時に側で絢斗が癒してくれるから、だから、私は何とか踏ん張れてる。


きっと1人暮らしのままだったら、もうとっくに折れてしまってた。


そう思うと急に感謝が溢れた。


絢斗…ありがとう。


『一花。来月、ゴールデンウィークが明けたらすぐ2人でフランスに行こう。滞在は2、3日しか無理だろうけど』


突然の誘いに驚いた。


『フランス…ですか?』


『ああ。パリにあるグレースホテルに。あそこのフランス料理は絶品だし、ホテルから望む景色もとても素晴らしい』


『それはとても嬉しいお誘いですが、でも仕事は…』


『もう決めたんだ。一花と行きたい。ゴールデンウィーク明けは業務も少し落ち着く。社長にも話した。君のことは母さんから聞いてて、とても喜んでくれてる』


そんな…社長にまで知られてるんだ。


でも、そうだよね、お母様にお会いしたら社長も知ることになるよね。
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