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大切な人に~絢斗side~

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『俺は一花を信じている。そして、彼女を1人の女性として見てる。まだ告白はしていないが、ちゃんとしたいと思ってる』


『そんな…まただ。また私の好きな人が一花を選んだ。あの女がそうやっていつも邪魔をする!』


髪を両手でぐちゃぐちゃにしながら島田さんが叫んだ。


まるで憎しみに取り憑かれているようだった。


一花が何をしたって言うんだ。


『一花を好きになったのは、俺が一目惚れしたからだ。彼女から誘われたわけじゃない。君には、一花のこと悪く言って欲しくないし、これ以上、彼女を泣かせるようなことをしたら、本当に人として許さない。ホテルマンとしての進退も考えさせてもらう。厳しいようだが、グレースホテル東京にはそんな心の汚い人間は必要ない』


『ひどい!ホテルを辞めさせるなんて…これも一花のせいだ!一花なんて、一花なんて、本当に大嫌い!』


島田さんは頭を抱えてしゃがみ込んだ。


かなり心が乱れているようだった。


『島田さん、落ち着いて聞いて欲しい』


俺は膝をついて、島田さんに向かってゆっくりと話した。


『君がホテルマンを志した時のまっさらで素直な気持ち。希望に満ち溢れて、ワクワクしていた気持ち。実際、ホテルマンになって、お客様に喜んでもらえた時のたまらなく嬉しい気持ち。そんな気持ちを君は全部忘れてしまったのか?』


島田さんは、俺の言葉に少しずつ顔を上げた。


『君にはわかってるはずだ。悪いのは一花じゃないって。本当はちゃんとわかってるのに、どうしようもない敗北感が君を覆い尽くしたんだ。一花を憎むことへの感情を増幅させて、君はいつしかホテルマンとしてのプライドを捨ててしまった。もうそんな馬鹿な憎しみは捨ててしまうべきだ。君には、本来の君らしく、立派なホテルマンになってもらいたい』


俺は今の精一杯の思いをぶつけた。
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