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君の優しさと君の夢

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『不思議…です』


『ん?』


『母がシングルマザーだってこと、今まで誰にも話したことなかったんです。なのに藍花さんには何でも話してしまうっていうか…話したくなります』


歩夢君…


『話してくれてありがとう。私なんかに話して良かったのかな…でも、話を聞いて、歩夢君の真っ直ぐで優しい気持ちが必ずお母さんに伝わってるって、すごく思ったよ。本当に素敵な親子関係だよね』


歩夢君がニコッと微笑んだ。


『あの…良かったらまた…話を聞いてもらえませんか?藍花さんにもっと悩みを相談させて下さい。先輩としてのアドバイスが欲しいです』


どうしてまだまだ未熟な私に?


他にも立派な先輩がたくさんいるのに…


『仕事のアドバイスなんて大袈裟なことは出来ないよ。キチンとしたアドバイスなら中川師長や他の先輩達にも聞いてね。だけど、もちろんお互いに励まし合おうね』


『はい、ありがとうございます。僕、藍花さんには仕事以外のことも相談したいです。だから…』


私を見つめながら言いかけたその時、男性看護師が歩夢君を呼びにきた。


『すみません…じゃあ行きます。いろいろ聞いてくれてありがとうございました』


歩夢君は私に頭を下げて、走って病棟に戻った。


何か言いたそうだったけど、悩みがあるのかも知れないな…


伯母さんである中川師長やお母さんには出来ない相談なのかも。


私は、歩夢君の「患者さんに心から寄り添える看護師」っていう言葉がすごく印象に残った。


心から…って、簡単なようで難しいと思う。


でも、歩夢君はまだ新人1年目なのに、それがもう出来てる気がする。


私は白川先生に注意されるくらいなのに、歩夢君は…本当に優しい笑顔で患者さんを癒してる。


すごいよ。


先輩としては情けないけど、本当にちゃんと見習わなきゃね。


私は秋空を見上げながら、自分に気合いを入れ、その場所から歩き出した。
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