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あなたの魅力に気づく月の夜

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『あっ、白川先生もハンバーガー食べて下さい』


ずいぶん冷めてしまっただろう。


『その白川先生ってやめてくれ』


『えっ?どうしてですか?』


『俺には「蒼真」っていう名前がある。白川より蒼真の方が好きなんだ。だから蒼真でいい』


『そ、そ、そんなこと!呼べるわけないじゃないですか、何を言い出すんですか』


私はベンチの端のギリギリまで寄りながら言った。


『別に普通だろ。俺は「藍花」って呼ぶ。だからお前は俺を「蒼真」って呼ぶ。ただそれだけのことだ』


『それだけって…でも他の看護師はみんな白川先生って呼んでますよね』


もしかして私が知らないだけで、プライベートではみんな蒼真って呼んでるの!?


全然、白川先生の意図がわからない。


『俺が呼び捨てするのは藍花だけだ。だからお前も必ず蒼真と呼ぶこと。2人きりの時だけでいい。それくらい出来るだろ?』


『ちょっと…強引過ぎませんか?私…白川先生の家族でも彼女でもないんですよ。だいたい私なんかに「蒼真」なんて呼ばれて嬉しいわけないですよね?』


そう言ったら、なぜか先生はニヤリと笑った。


『やっと言った。それでいい。これから先、必ず蒼真と呼ぶんだ。業務命令だから取り消せない』


『ぎょ、業務命令って…先生、意地悪です』


『そうか?なら、もっと意地悪しようか?』


『嫌です!』


『だろ?なら素直に呼べばいい』


白川先生は、ようやくハンバーガーを食べ始めた。


先生のこの発言の意味、これ以上は怖くて聞けない。


だって嘘をついてるだけで、本当は彼女がいるかも知れないし、からかってるのかも知れないし、どう考えても白川先生が私に好意を持ってるとは思えないから。


あんなに注意ばっかりされてたのに何なんだろ?って思うけど、でも…


これからは「蒼真」って呼ぶしかないのかな。


意地悪されたら…嫌だし。
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