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花を贈る人

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「いえいえ、人の命を守るお医者さんに比べたら私なんて……」


「愛莉ちゃんは立派だよ。そんな謙虚にならなくていいから」


「ありがとうございます。私はこの仕事を大切にしてるので、そんな風に言っていただけて嬉しいです。あっ、すみません。じゃあ、花束はどうされますか?」


「愛莉ちゃんに任せてもいいかな?   白いダリアを入れてもらって、あとは頼むよ」


「わかりました、お任せください。心を込めてお作りしますね」


「ありがとう。でも、本当に素敵なお店だね。こんなにたくさんの花に囲まれて、愛莉ちゃんは幸せだね」


坂井先生はにこやかな笑顔で言った。


「はい。子どもの頃から好きだったことが仕事になって、今は本当に感謝してます」


「それは良かった。僕も望んだ仕事に就けたから感謝してるんだ」


坂井先生も、瑞と同じようにお医者さんを目指していたんだ……


「そうだったんですね。お医者さんになりたいと思うなんて立派な志ですね。子どもの頃からそう思ってたんですか?」


「そうだね。うちは母子家庭でね。早くに父と母が離婚して、女手1つで僕を育ててくれたんだ。相当苦労したと思う。僕も学生の頃はいろいろバイトしたりで……結構、経済的に大変だったんだ」


「そうだったんですか……」


坂井先生の話に、思わず手が止まって聞き入ってしまった。
私は、慌てて手を動かした。


「だから、母をラクにさせてあげられる仕事をしたいと思って……医学生になった。学費は奨学金だから、今、必死に返してる。医者になれば儲かるかなって思ったけど、まだまだこれからかな。まあ、安易な考えだよ」


坂井先生は、裕福な家庭に育ったのかと勝手に思ってた。こんなに大変な思いをしてたなんて、全然知らなかった。


「安易だなんてとんでもないです。坂井先生はすごく優しいんですね。お母様の姿を見てお医者さんになろうなんて、本当に素敵ですよ。それでも普通は簡単にお医者さんにはなれないですから、先生は優秀なんですね」
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