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届かない想い~恭介side~

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『美穂先輩…』


俺を真っ直ぐ見つめる先輩。


『私のことどう思ってる?』


『…美穂先輩のことは…』


言葉に詰まる。


『どうなの?答えて』


詰め寄る先輩に対して失礼だとわかってたけど、俺は後ずさりしてしまった。


もう、言うしかないと思った。


『すみません、俺、里桜のことが好きなんです。美穂先輩の気持ち、嬉しいですけど…その想いに答えることは出来ないです』


『嫌よ、ねえ恭介君、私、こんなにあなたのことが好きなの』


美穂先輩が俺に抱きついた。


瞬間的にその体を遠ざけ、そして言った。


『美穂先輩のことは仲間としか思えないです。これから先も俺は里桜が好きだから』


『恭介君…恭介君は里桜ちゃんに騙されてるんだよ。里桜ちゃんにはあの御曹司がいるでしょ?あの2人怪しいよ。家庭教師だった人と出会って恋人になってるかも知れない』


心がチクチク痛む。


『…里桜が誰を好きでも、俺はあいつを想ってます。なんか里桜は、いつも誰かのために一生懸命なんですよ。里桜を見てるうちに、いつの間にか同期や仲間を通り越して1人の女性として好きになってました。すごく好きです、本気なんです』


『そんなこと…』


『本当にすみません、美穂先輩と俺が付き合うことは無いので…だから…職場でいろいろな噂を流すのは止めてもらいたいです』


『ひ、ひどいよ、私は明日誕生日なのよ。なのにフラレるとか…有り得ないんだけど。もう何もかも嫌になる』


投げやりなセリフと共にうなだれた姿を見たら、ちょっと言い過ぎたって反省した。


『美穂先輩の仕事に対する姿勢もですけど、ブーケも挙式の飾り付けの花選びもすごくセンスがありますよ。その才能をこれからも発揮して頑張って下さい。俺は頑張ってる美穂先輩を尊敬してます』


精一杯、言葉を並べた。


『…』


ギュッと目を閉じる美穂先輩。


俺にはどうすることも出来ないけど…


『明日は…バースデーケーキ差し入れします!一緒にはいられないけど、友達にパティシエがいるんで最高のケーキ作ってもらいますから』


『恭介君…』


『美穂先輩、ずっと笑ってて下さい。その方が素敵ですよ。またみんなで仲間として仲良くしてください』


『…ごめん、まだ気持ち整理出来ない』


『そうですよね。でも、俺なんかのこと想ってくれて本当に有難いです。美穂先輩には俺なんかより良い人が絶対現れますから。だから…幸せになって下さい』


俺も…


里桜にフラレたら…


こうやって思われるんだろうな。


自分で言ってて、ちょっとつらくなる。


美穂先輩の顔見てたら…数日後の自分を見てるような気がした。


晴月部長のこと、里桜は好きなのか?


好き…かも知れないな…


でも、やっぱり…


俺は誰よりも里桜が好きなんだ。


ほんの少しの望みかも知れないけど、里桜が俺を選んでくれるって…そう信じたい自分がいた。
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