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2人だけの秘密の約束

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『ああ。その後彼が亡くなったと聞いて、とてもショックだった。大切な友がこの世からいなくなるつらさを初めて知って思った。ご家族の悲しみはいかばかりかと』


『ありがとうございます。父を大切に思って下さって、すごく有難いです。私達家族のことまで察して頂いて…』


『彼も家族を残していくのは不安だっただろう。そう思うといてもたってもいられなくてね。とにかく私は自分の出来ることを何かしたかった。この命を助けてもらった恩返しをしたかったんだ。千隼を里桜ちゃんの家庭教師にして、その後も何かと妻と共に支援を申し出たんだ。でも…断られたよ。きっとお母さんは遠慮されたんだろうね』


『母は今でも感謝しています。千隼先生が私の家庭教師としてうちに来てくれたこと、私達家族みんな、心から嬉しかったんです。一緒にご飯を食べて、いっぱい話して、いっぱい笑って…あの時の私達には千隼先生は太陽みたいな存在でしたから。母にとってはそれが充分な恩返しだったんです…本当にありがとうございました』


『そうだったらいいんだけどね』


『私も兄も感謝してます。でも、父にそんなことがあったなんて全く知らなかったことでしたから、本当に驚きました』


『正義感の強い、立派な人だった。本当に感謝しかないよ』


『嬉しいです、お話が聞けて。ありがとうございました』


お父さん…


やっぱり優しい人だったんだ。


お父さんの娘で良かったって、誇りに思うよ。


『里桜ちゃんのお母様、晶子さんは本当に…あなたのお父様のことを大切に思ってらしたわ』


先生のお母様がしみじみと言った。


『…はい。それはたぶん今もそうです』


『彼が亡くなっても、君のお母さんは本当に一途に思い続けていたよ。最初は見ていてつらくなった。だけど、君たち兄妹がいたからあの人は強くなれた』


『本当ね…親にとって子どもは宝。それを1人で育てると決意した晶子さんは立派だわ』
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