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3-1 火星
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3-1 火星
赤と黒の世界。
メインの大通りを、大型ダンプトラックがひっきりなしに、砂埃をあげて行き交う。
街路樹もなく、街路灯が一キロ毎にポツンポツンと灯り、延々と続く大通り。
歩く人影もなく、かなり侘しい風景である。
路肩に下草はなく苔が密生して、地平線を見遣れば、カタクリによく似たチシマジャコウソウが、所々に群落地を作っている。
俺は窓から呆然と外を眺めていた。
昨年までは自分が火星に来るなんて考えてもいなかった。
パプアニューギニアにある軌道エレベータに乗り、軌道上の宇宙ステーションに出た後、物資補給船に便乗して火星までやってきた。客船ではないのでクルーの補助要員として働かなければならず、かと言って専門クルーでもないので、雑用を一手に引き受ける羽目になったけれどもね。
そうまでしてやっとたどり着いたここは、考古学研究所。
さっきまで、研究紀要の概要を規定の文字数に合わせようと単語をこねくり回していたが、パズルのようで目が疲れ、手を休めて窓の外を見ていたのだ。
-----
遂に火星に到達した人類は、2035年、入植地東カナル市北東35キロの地点で、古代宇宙文明の残滓といえる宇宙船の残骸を発見した。その宇宙船の中から古代の神話、歴史、物語とも判断がつかない断簡を発掘し、それを平易に翻訳したのがサラマンダーである。サラマンダーと名付けられた由縁は、断簡を納めていた金属ケースに、羽根を持ち、火を吐く赤い竜が描かれていたことによる。
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赤と黒の世界。
メインの大通りを、大型ダンプトラックがひっきりなしに、砂埃をあげて行き交う。
街路樹もなく、街路灯が一キロ毎にポツンポツンと灯り、延々と続く大通り。
歩く人影もなく、かなり侘しい風景である。
路肩に下草はなく苔が密生して、地平線を見遣れば、カタクリによく似たチシマジャコウソウが、所々に群落地を作っている。
俺は窓から呆然と外を眺めていた。
昨年までは自分が火星に来るなんて考えてもいなかった。
パプアニューギニアにある軌道エレベータに乗り、軌道上の宇宙ステーションに出た後、物資補給船に便乗して火星までやってきた。客船ではないのでクルーの補助要員として働かなければならず、かと言って専門クルーでもないので、雑用を一手に引き受ける羽目になったけれどもね。
そうまでしてやっとたどり着いたここは、考古学研究所。
さっきまで、研究紀要の概要を規定の文字数に合わせようと単語をこねくり回していたが、パズルのようで目が疲れ、手を休めて窓の外を見ていたのだ。
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遂に火星に到達した人類は、2035年、入植地東カナル市北東35キロの地点で、古代宇宙文明の残滓といえる宇宙船の残骸を発見した。その宇宙船の中から古代の神話、歴史、物語とも判断がつかない断簡を発掘し、それを平易に翻訳したのがサラマンダーである。サラマンダーと名付けられた由縁は、断簡を納めていた金属ケースに、羽根を持ち、火を吐く赤い竜が描かれていたことによる。
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