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新しいパーティ
19. 俺達『獣牙団』って、ダサっ!
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「ジルドレー王国とメルバレイ王国が離反した?」
「はい。この2国は、というより2国の教会が『獣人は魔物に非ずという帝国最高教会の宣言を受け入れる』と宣した事により分裂したと」
帝国皇宮の一室。
部屋の主は皇太子ロラン11世=レン・ウィルザード。つまり私の執務室だ。居室ではない。
そこに私の教育係をも兼ねるライラ=カント魔導師が面白い話を持って来たのだ。
リーファが「早耳過ぎませんか?」と驚く理由である彼女の情報網は、かなり高度な魔法の産物らしい。ダスカー等は「ちんぷんかんぷんだ」と理解を放棄した様だ。
「メルバレイは西方諸国の中でも大きな国土と発言力を持っていた筈だ。それが離反したとなると」
「もはや西方同盟は瓦解したと見るべきかと」
「導師は、その理由をどう読む?」
「やはり獣人の『銀の聖女』の存在は、彼等の『獣人は魔物』という主張に相反すると納得せざるを得ないのでは」
今回、ロラン10世が発した「遺憾の意」の影響は大きく、また帝国最高教会大司教チャールズ=ヴェルダート侯爵が「獣人は魔物に非ず」と宣言したのは、『銀の聖女』を聖女と認め、司教待遇とする事が理由に他ならない。
そしてリーファが聖女なのは、彼女の持つ聖宝武具が何よりの証なのだ。
資格なき者は持つ事すら適わぬ聖宝武具。
これこそ、主神ヴァイランシアがお認めになった疑い様も無い理由なのだから。
「そう言えば、その『銀の聖女』殿がゲゥドーン王国から帰って来たとの事。それも男連れで」
「は?い、今、何て言った⁉︎」
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
ザクサントアは西の商都。交易で栄えた街で、結構護衛依頼も多いんだ。
ブルワークさんの荷駄隊の目的地は、此処ザクサントア。私達は、ここのギルドで依頼達成の手続きを行なった。
と、そこへ。
「サラ、リーファ!」
「カノン?どうしたの」
私達『元気っ娘』の一員、ハーフダークエルフのカノンがいた。
「よかった。ギルドに伝言頼もうかと思ってた処」
「それじゃ?」
「うん、森帰らないといけなくなった」
エルフは排他的だ。かなり同族意識が強い。
それはダークエルフも同じ。人族の血が混じるハーフは、結構同族と認められず森を出される事もあるみたいだけど、ダークエルフはエルフより血の繋がりを重視してる。ハーフどころかクォーターをも同族と見る事すらあるんだ。
確かにハーフのカノンは、少し居心地悪かったらしいけど、それでも森を出る時には里の祝福を受けて「外での修行」として出て来たんだとか。
何か、兎に角森で厄介な決め事があるらしい。
同族全員の意を汲む必要がある為、外に出ている同森族にも招集がかかったんだとか。
ひょっとして、此処で再会出来る?
当てにはしてなくても、可能性が0じゃないからって、カノンはこの西の玄関口まで来たんだとか。
何故なら精霊魔法を使っての帰省。どこの森からでも帰れる。そして森はもう妖魔界に近い存在。多分、行って過ごしてるウチに、コチラでは数年経ってるんだとか。
「だから、私、一旦『元気っ娘』抜けるわ」
「…わかった。そんな理由じゃ仕方ないわ」
「元気でね、サラ」
「貴女達もね。いずれまた」
「「またね」」
私達の約束。別れる事になっても「サヨナラ」は言わない。「またね」で別れよう、そう決めてた。
その間、ロンとラグは帝国での冒険者登録をやってた。所属は私達と同じエンテロブルで。でも此処ザクサントアで登録出来る。
帝国のギルドタグは帝国共通だ。ギルドカードは個々のギルドが発行する形にはなるが、冒険者No.のみが刻印されたギルドタグは何処のギルドでも発行出来る。魔導具の1つであるタグは偽造不可能な代物で、刻印された冒険者No.が流れ者な私達の唯一の身分証明となってる。
冒険者登録の為のテスト。
冒険者としてやっていけるか?最低限、これは熟せないとという戦闘能力と読み書きの試験がある。だからどんな無学の荒くれに見えても、帝国の冒険者は読み書き出来るんだ。
ラグは魔導師だし、ロンは前世が言うまでもなく。読み書きも危なげなくクリアし、無登録であっても結構依頼を熟していた2人の冒険者としての経験や資質は、帝国ギルドの基準を難なくクリアした。
最終的にはエンテロブルギルドでの登録となるけど、私達4人はパーティ登録して。
「俺達、『獣牙団』で」
ロンが言い出したパーティ名。
私達3人は直ぐ反対した。
「え?何で?」
「「「ダサい!」」」
思い出した。
ロンは…、前世ロランはメチャクチャ名付けセンスが悪かった。
『皇家裏話』でもロラン2世の「私は危うく『ドンヌラー』と言う名にされそうだった」って皇妃フィオナ様に感謝する一文がある。ロランの名を代々名乗る事になったのは、ある意味苦肉の策だったとか。
2代皇帝のフルネームは、ロラン2世=ドマヌ・ウィルザードだ。フィオナ皇妃の頑張りも、結局それ程でしかなかったワケ。
ロラン1世が名君なのは誰もが口を揃えて言う事なんだけど、この名付けセンスの悪さと、その名に固執する意固地さが唯一の欠点なんだって。
「いいじゃん!俺達を示す一目瞭然の名だろ‼︎ホラ、名は体を表すって言うし」
紛糾したけど、でも、その…。
私達は、ロンが固執する名に代わるモノを提示出来なかった…。ってか、ロンが頑な過ぎたの!
パーティ名は、このダサいのに決まった。
「はい。この2国は、というより2国の教会が『獣人は魔物に非ずという帝国最高教会の宣言を受け入れる』と宣した事により分裂したと」
帝国皇宮の一室。
部屋の主は皇太子ロラン11世=レン・ウィルザード。つまり私の執務室だ。居室ではない。
そこに私の教育係をも兼ねるライラ=カント魔導師が面白い話を持って来たのだ。
リーファが「早耳過ぎませんか?」と驚く理由である彼女の情報網は、かなり高度な魔法の産物らしい。ダスカー等は「ちんぷんかんぷんだ」と理解を放棄した様だ。
「メルバレイは西方諸国の中でも大きな国土と発言力を持っていた筈だ。それが離反したとなると」
「もはや西方同盟は瓦解したと見るべきかと」
「導師は、その理由をどう読む?」
「やはり獣人の『銀の聖女』の存在は、彼等の『獣人は魔物』という主張に相反すると納得せざるを得ないのでは」
今回、ロラン10世が発した「遺憾の意」の影響は大きく、また帝国最高教会大司教チャールズ=ヴェルダート侯爵が「獣人は魔物に非ず」と宣言したのは、『銀の聖女』を聖女と認め、司教待遇とする事が理由に他ならない。
そしてリーファが聖女なのは、彼女の持つ聖宝武具が何よりの証なのだ。
資格なき者は持つ事すら適わぬ聖宝武具。
これこそ、主神ヴァイランシアがお認めになった疑い様も無い理由なのだから。
「そう言えば、その『銀の聖女』殿がゲゥドーン王国から帰って来たとの事。それも男連れで」
「は?い、今、何て言った⁉︎」
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ザクサントアは西の商都。交易で栄えた街で、結構護衛依頼も多いんだ。
ブルワークさんの荷駄隊の目的地は、此処ザクサントア。私達は、ここのギルドで依頼達成の手続きを行なった。
と、そこへ。
「サラ、リーファ!」
「カノン?どうしたの」
私達『元気っ娘』の一員、ハーフダークエルフのカノンがいた。
「よかった。ギルドに伝言頼もうかと思ってた処」
「それじゃ?」
「うん、森帰らないといけなくなった」
エルフは排他的だ。かなり同族意識が強い。
それはダークエルフも同じ。人族の血が混じるハーフは、結構同族と認められず森を出される事もあるみたいだけど、ダークエルフはエルフより血の繋がりを重視してる。ハーフどころかクォーターをも同族と見る事すらあるんだ。
確かにハーフのカノンは、少し居心地悪かったらしいけど、それでも森を出る時には里の祝福を受けて「外での修行」として出て来たんだとか。
何か、兎に角森で厄介な決め事があるらしい。
同族全員の意を汲む必要がある為、外に出ている同森族にも招集がかかったんだとか。
ひょっとして、此処で再会出来る?
当てにはしてなくても、可能性が0じゃないからって、カノンはこの西の玄関口まで来たんだとか。
何故なら精霊魔法を使っての帰省。どこの森からでも帰れる。そして森はもう妖魔界に近い存在。多分、行って過ごしてるウチに、コチラでは数年経ってるんだとか。
「だから、私、一旦『元気っ娘』抜けるわ」
「…わかった。そんな理由じゃ仕方ないわ」
「元気でね、サラ」
「貴女達もね。いずれまた」
「「またね」」
私達の約束。別れる事になっても「サヨナラ」は言わない。「またね」で別れよう、そう決めてた。
その間、ロンとラグは帝国での冒険者登録をやってた。所属は私達と同じエンテロブルで。でも此処ザクサントアで登録出来る。
帝国のギルドタグは帝国共通だ。ギルドカードは個々のギルドが発行する形にはなるが、冒険者No.のみが刻印されたギルドタグは何処のギルドでも発行出来る。魔導具の1つであるタグは偽造不可能な代物で、刻印された冒険者No.が流れ者な私達の唯一の身分証明となってる。
冒険者登録の為のテスト。
冒険者としてやっていけるか?最低限、これは熟せないとという戦闘能力と読み書きの試験がある。だからどんな無学の荒くれに見えても、帝国の冒険者は読み書き出来るんだ。
ラグは魔導師だし、ロンは前世が言うまでもなく。読み書きも危なげなくクリアし、無登録であっても結構依頼を熟していた2人の冒険者としての経験や資質は、帝国ギルドの基準を難なくクリアした。
最終的にはエンテロブルギルドでの登録となるけど、私達4人はパーティ登録して。
「俺達、『獣牙団』で」
ロンが言い出したパーティ名。
私達3人は直ぐ反対した。
「え?何で?」
「「「ダサい!」」」
思い出した。
ロンは…、前世ロランはメチャクチャ名付けセンスが悪かった。
『皇家裏話』でもロラン2世の「私は危うく『ドンヌラー』と言う名にされそうだった」って皇妃フィオナ様に感謝する一文がある。ロランの名を代々名乗る事になったのは、ある意味苦肉の策だったとか。
2代皇帝のフルネームは、ロラン2世=ドマヌ・ウィルザードだ。フィオナ皇妃の頑張りも、結局それ程でしかなかったワケ。
ロラン1世が名君なのは誰もが口を揃えて言う事なんだけど、この名付けセンスの悪さと、その名に固執する意固地さが唯一の欠点なんだって。
「いいじゃん!俺達を示す一目瞭然の名だろ‼︎ホラ、名は体を表すって言うし」
紛糾したけど、でも、その…。
私達は、ロンが固執する名に代わるモノを提示出来なかった…。ってか、ロンが頑な過ぎたの!
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