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獣人王国ゲゥドーン
16. また、会えたね
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「じゃあ、あの草合わせを読み解ってくれたんだ」
「あれ、流石って思っちゃったわ」
ロンとサラは、同じ野伏として通じるものがあるみたい。
人攫い達を衛士団に引き渡した後、私達は攫われた牛族の方々を郷まで送り届けて。
そして、同じ狼族として。
「『氷白狼』の性質?凄いわ」
「『銀魔狼』の方が珍しいだろ?」
お互い、只の狼族じゃないって事に驚いて。
何せ狼族の毛並みは灰色が殆ど。濃淡の差はあれど、あまり他の色の毛並みは見ない。
私の銀色は、それでも灰色の中では目立つと言う程でもないけど、彼の青白い毛並みはとことん目立つと言うか。
「北方の、それこそローデルシアでは氷白狼は珍しくもない魔物だ。でも銀魔狼は伝説上の魔物だろ?」
確かにそうだけど。
「いや、2人とも珍しいって」
いきなりラグが割り込んできて。
「貴方だって『妖狐族』は珍しくない?」
「そうでもないさ。まぁ、だとしても俺の毛並みは紅だからキツネ族としては一般的だし」
サラの金色にしてもキツネ族ならば珍しい訳じゃない。紅や金褐色が一般的だし。
この辺、獣人は種族で代表的な毛並みがある。
多色なのは、圧倒的に猫族、ついで犬族、馬族。
獅子族なら金銀だし、虎族はほぼ黄色に黒ラインが入る。牛族だと白黒斑らとか、白のみ黒のみも多いね。兎族も同じか。
その意味じゃ、緑や桃色もある人族の方がバリエーション多いと思うけどね。
「え?冒険者登録してないの?」
「そんなのいるんだ。冒険者、やってるつもりだったし、依頼も普通に受けてたよ」
獣人王国の法整備はまだまだだもんね。
割と慣例でやっちゃってるトコあるし。
「なら帝国で登録しない?西方諸国ですら手出し出来なくなるし」
サラの提案。
ロンもラグも、断る理由なんか無いから、このまま私達と一緒に帝国へ行く事にしたみたい。
よかった。
久々に会えた同族。
私達のテンション、とても上がってたんだ。
そして帝国へ帰ろうという日。
グラン王子は馬車を出すって言ってくれたけど、私達は旅がてら、依頼を熟しながら帰る事にした。
幸いにも帝国の商人で、ゲゥドーン王国と取引している者がいて、彼の荷駄隊の護衛としての依頼を受ける事になったんだ。
「『銀の聖女』が護衛を受けてくれるなんて、我々はとても運が良い」
大袈裟、私的にはそんな感じ。
だけど商人で荷駄隊の隊長も兼ねるブルワークさんが言うには「『銀の聖女』は、帝国教会より司教待遇と言われる程、神聖属性魔法に長けており、また瘴気竜を倒すの実績をも持つ凄腕の冒険者って」商人の間でも評判高いんだとか。
「そりゃすげーや。その年齢で竜殺しと認められてるなんて」
ロンやラグ、他国の冒険者であっても、『竜殺し』の称号は別格らしい。
「偶々、ついていたのよ。聖属性魔物で聖宝武具を持つ私は瘴気無効の特質を得てたし。コッチの攻撃は魔法もだけど短槍がね。煌めきさえも瘴気竜の身体を焼いたし」
「普通は瘴気が厄介なのにな。浴びると皮膚は爛れるし、吸った日にゃ喉が焼かれ肺が蝕まれる」
そう。
遠方からの魔法攻撃位しか対処方法が無いと言われる瘴気竜。でも、天敵とさえ呼ばれる程瘴気の対極な存在の私にとって、寧ろ戦い易い相手でしかなかった。
「瘴気無効とは、マジ羨ましい」
下手すれば命に関わるモノだ。それを私の身体は受け付けないのだから、珍しい特質に感謝だね。
帝国やローデルシア王国と比べると、確かにゲゥドーン王国は未開の小国なんだけど、それでも徒歩移動となれば、国境まではそこそこ距離がある訳で。
ブルワークさん率いる荷駄隊は、宿場町バリカルへ着いた。日暮れにはまだ間があるんだけど、この次の街までが結構あって、これ以上進むと絶対に野営。しかも、その辺りには夜行性の吸血コウモリがいるとの事。噛み付くだけの小動物に近い魔物だけど、噛み付かれた時、コイツが吸い取るのは血液もだけど生命力。つまり生命力低下を引き起こす冒険者の天敵とも言える存在なの。
素手ではたき落としても倒せる程の、マジで小動物なんだけどね。牙が掠ったら吸われるのだから会わないに越した事はない。何せ日中は全く活動しないし。
よっぽどお日様がキライなんだろうね。
街外れにある小さな小川。
バリカルに着く前に見た場所。
せっかくなので、水浴しにやって来た。
「あら?ロンもどお?」
バシャバシャ。ブルルルん。
冷たい水が心地良い。
「そうだね。オレも一緒でいいの?」
ザッバーン!
返事する前に衣服脱いで飛び込んだよ。
「ヒャア!冷て‼︎」
ブルルルルッ!
同じ様に、身体を震わせて水滴を飛ばす。
その仕草に、お互い顔を見合わせて笑う。
「少しホッとしたな。いや、根は一緒って思ったんだけどさ。その、グラン王子といる時とか、凄え礼儀正しいし、宮廷作法しっかりしてたし」
「それが分かるって事は、ロンも作法を知ってる?」
「あ、いや、その」
「ね、ロンってホントに獣人?」
「リーファが、それを言う?」
確証はない。
でも、私と同じ様な、その、何と言うか、獣人が習う事も無さげな事を知ってる?そんな違和感を感じるから。
「まぁ『銀の聖女』は作法習っててもおかしくないけど」
「そんなワケ無いよ」
否定して、その矛盾に気付いて慌てて。
「んじゃあー、実はお貴族様の生まれ変わり?」
「その発想?まさかロンも?」
「やば!」
図星だ。
本当に、私と同様なの?
「その、キミはリーファ…、リーファ=アディールなのか?」
自信無さげに見えて何か確証がある時、彼はその仕草をする…。
軽く鼻を擦る。
「まさか、ロラン?貴方なの?」
ロンは優しく微笑んで。
その表情は、間違いなく彼で。
「また、会えたね。リーファ」
「あれ、流石って思っちゃったわ」
ロンとサラは、同じ野伏として通じるものがあるみたい。
人攫い達を衛士団に引き渡した後、私達は攫われた牛族の方々を郷まで送り届けて。
そして、同じ狼族として。
「『氷白狼』の性質?凄いわ」
「『銀魔狼』の方が珍しいだろ?」
お互い、只の狼族じゃないって事に驚いて。
何せ狼族の毛並みは灰色が殆ど。濃淡の差はあれど、あまり他の色の毛並みは見ない。
私の銀色は、それでも灰色の中では目立つと言う程でもないけど、彼の青白い毛並みはとことん目立つと言うか。
「北方の、それこそローデルシアでは氷白狼は珍しくもない魔物だ。でも銀魔狼は伝説上の魔物だろ?」
確かにそうだけど。
「いや、2人とも珍しいって」
いきなりラグが割り込んできて。
「貴方だって『妖狐族』は珍しくない?」
「そうでもないさ。まぁ、だとしても俺の毛並みは紅だからキツネ族としては一般的だし」
サラの金色にしてもキツネ族ならば珍しい訳じゃない。紅や金褐色が一般的だし。
この辺、獣人は種族で代表的な毛並みがある。
多色なのは、圧倒的に猫族、ついで犬族、馬族。
獅子族なら金銀だし、虎族はほぼ黄色に黒ラインが入る。牛族だと白黒斑らとか、白のみ黒のみも多いね。兎族も同じか。
その意味じゃ、緑や桃色もある人族の方がバリエーション多いと思うけどね。
「え?冒険者登録してないの?」
「そんなのいるんだ。冒険者、やってるつもりだったし、依頼も普通に受けてたよ」
獣人王国の法整備はまだまだだもんね。
割と慣例でやっちゃってるトコあるし。
「なら帝国で登録しない?西方諸国ですら手出し出来なくなるし」
サラの提案。
ロンもラグも、断る理由なんか無いから、このまま私達と一緒に帝国へ行く事にしたみたい。
よかった。
久々に会えた同族。
私達のテンション、とても上がってたんだ。
そして帝国へ帰ろうという日。
グラン王子は馬車を出すって言ってくれたけど、私達は旅がてら、依頼を熟しながら帰る事にした。
幸いにも帝国の商人で、ゲゥドーン王国と取引している者がいて、彼の荷駄隊の護衛としての依頼を受ける事になったんだ。
「『銀の聖女』が護衛を受けてくれるなんて、我々はとても運が良い」
大袈裟、私的にはそんな感じ。
だけど商人で荷駄隊の隊長も兼ねるブルワークさんが言うには「『銀の聖女』は、帝国教会より司教待遇と言われる程、神聖属性魔法に長けており、また瘴気竜を倒すの実績をも持つ凄腕の冒険者って」商人の間でも評判高いんだとか。
「そりゃすげーや。その年齢で竜殺しと認められてるなんて」
ロンやラグ、他国の冒険者であっても、『竜殺し』の称号は別格らしい。
「偶々、ついていたのよ。聖属性魔物で聖宝武具を持つ私は瘴気無効の特質を得てたし。コッチの攻撃は魔法もだけど短槍がね。煌めきさえも瘴気竜の身体を焼いたし」
「普通は瘴気が厄介なのにな。浴びると皮膚は爛れるし、吸った日にゃ喉が焼かれ肺が蝕まれる」
そう。
遠方からの魔法攻撃位しか対処方法が無いと言われる瘴気竜。でも、天敵とさえ呼ばれる程瘴気の対極な存在の私にとって、寧ろ戦い易い相手でしかなかった。
「瘴気無効とは、マジ羨ましい」
下手すれば命に関わるモノだ。それを私の身体は受け付けないのだから、珍しい特質に感謝だね。
帝国やローデルシア王国と比べると、確かにゲゥドーン王国は未開の小国なんだけど、それでも徒歩移動となれば、国境まではそこそこ距離がある訳で。
ブルワークさん率いる荷駄隊は、宿場町バリカルへ着いた。日暮れにはまだ間があるんだけど、この次の街までが結構あって、これ以上進むと絶対に野営。しかも、その辺りには夜行性の吸血コウモリがいるとの事。噛み付くだけの小動物に近い魔物だけど、噛み付かれた時、コイツが吸い取るのは血液もだけど生命力。つまり生命力低下を引き起こす冒険者の天敵とも言える存在なの。
素手ではたき落としても倒せる程の、マジで小動物なんだけどね。牙が掠ったら吸われるのだから会わないに越した事はない。何せ日中は全く活動しないし。
よっぽどお日様がキライなんだろうね。
街外れにある小さな小川。
バリカルに着く前に見た場所。
せっかくなので、水浴しにやって来た。
「あら?ロンもどお?」
バシャバシャ。ブルルルん。
冷たい水が心地良い。
「そうだね。オレも一緒でいいの?」
ザッバーン!
返事する前に衣服脱いで飛び込んだよ。
「ヒャア!冷て‼︎」
ブルルルルッ!
同じ様に、身体を震わせて水滴を飛ばす。
その仕草に、お互い顔を見合わせて笑う。
「少しホッとしたな。いや、根は一緒って思ったんだけどさ。その、グラン王子といる時とか、凄え礼儀正しいし、宮廷作法しっかりしてたし」
「それが分かるって事は、ロンも作法を知ってる?」
「あ、いや、その」
「ね、ロンってホントに獣人?」
「リーファが、それを言う?」
確証はない。
でも、私と同じ様な、その、何と言うか、獣人が習う事も無さげな事を知ってる?そんな違和感を感じるから。
「まぁ『銀の聖女』は作法習っててもおかしくないけど」
「そんなワケ無いよ」
否定して、その矛盾に気付いて慌てて。
「んじゃあー、実はお貴族様の生まれ変わり?」
「その発想?まさかロンも?」
「やば!」
図星だ。
本当に、私と同様なの?
「その、キミはリーファ…、リーファ=アディールなのか?」
自信無さげに見えて何か確証がある時、彼はその仕草をする…。
軽く鼻を擦る。
「まさか、ロラン?貴方なの?」
ロンは優しく微笑んで。
その表情は、間違いなく彼で。
「また、会えたね。リーファ」
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