銀の聖女と呼ばれた公爵令嬢が獣人に転生!今度も銀の聖女と呼ばれてしまいますが、私は只の冒険者です‼︎

ノデミチ

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獣人王国ゲゥドーン

15. オレの名はロン

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 確かに、オレ達はギルドから依頼を受けた訳じゃない。だけど目の前で人攫いの場に出くわせば、コレを阻止しようとするのは当たり前だろ?

 オレの名はロン。

 狼族の、何か『氷白狼フェンリル』の性質を持つ珍しい存在らしい。まぁ、青白い毛並みなんて他に会った事無いし。



「密猟追っかけてくりゃ、まさか人攫いまでやってたとはなぁ。オッさん達、もう終わりだよ」

 オレの横で悪態ついてるのはキツネ…、妖狐族のラグ。燃える様な真っ赤な毛並みは、実はキツネ族には珍しくない毛並みだけど、妖狐族は火水風土闇の5属性魔法を扱える、やっぱり珍しい存在。



 その代わり、人間並みって言える程の獣人としてはかなり非力。冒険者特性としても魔導師魔法使いだから、剣を持つのは足手纏いレベル。

「ガキが!テメェらを始末すりゃいいだけの話だ」

 人攫い達は5人?6名か?
 厄介なのは、多分リーダー格のオッさんが熟練の戦士っぽい。駆け出しのオレ達じゃちと厳しいかもしれねぇ。

「そう上手くいくもんか!こちとら只のガキじゃねえんだぜ‼︎」
「ほざけぇ!」

 何も考えず突っ込んでくる。

吹き荒れろ!氷の嵐ブリザード
 水属性上位攻撃魔法、って言えばカッコいいけど、実は氷属性しかオレは使えない。しかも魔力マナが少ないからそれ程何度も使えない。

 だが獣人のオレが魔法を使えるとは思ってなかったんだろう。2人がまともに喰らい倒れた。

「な、こ、このガキ!」
「魔法を使える獣人かよ。コイツもいい金になりそうだなぁ」

 オレに向かい、ジリジリと迫ってくる人間。

火玉よ、我が敵を撃てファイヤー ボール
 ラグの魔法が完成する。
 コチラも火属性広域攻撃魔法だ。

「うわぁ、ひいぃいいい」

 ドゴゴーン!

 炸裂し、奴等をやっつけた?

「危ねぇ、あぶねー。が、その程度の威力じゃ俺は倒せねーぞ」
 やっぱりリーダー格が残ってる。
「大人しくしやがれ!コイツ喰らって死にたくなけりゃなぁ‼︎」

 剣じゃない?馬鹿でかいBIGフレイルか?
 確かにあんなの喰らったらケガじゃ済まねえ。力負けはしなくても、オレの剣であれは受け止めきれない。剣を折られて…やられる?

「神の力よ!彼者の盾となりて護り給えディバイン シールド‼︎」

 オレ達の前に光り輝くシールドが形成され、奴のフレイルを弾き飛ばした。

「「何ぃ?」」

 奴もだが、オレも同じ言葉を…。

「逃がさないわよ!」

 飛び込んできたのは、キツネ族の女か?
 歳は、ラグと同じくらいか?そいつが捕獲用ネットをうまく拡げて、体勢を崩したリーダー格に被せ絡めて。
 オレの横に来たのは、狼族の女?のガキ?
「大丈夫?今、手当するね。神よ、彼に癒しをヒール
 彼女が薄ら銀色に輝いて。
 オレの頬や手足の、ちょっとした傷が治っていく。

「ば、馬鹿な?『銀の聖女』か?」

 帝国の『銀の聖女』?

「えー?悪党にも広まってるの?私、そんなに有名なんだ」
「さっすが『銀の聖女』様ね。ガラ悪いのに」
「ほっとけ」

 だけど、彼女の面影は…?
 何処で見た?何時?何処で会った?

 ズキッ。
 そうだ。今じゃない。これは昔の…、前世の記憶…。

「リーファ…」
「はい?何?」

 『銀の聖女』が応える。
 は?え?彼女もリーファって名前なのか?

「今、私の名前?」
「あら?『銀の聖女』は名も売れてる?」
「えー?それはちょい困る」

「あ、ゴメン。その、知り合いに似てて。その、ウィルザード帝国の『銀の聖女』様?」
「不本意だけど、そう認定されちゃってるの。でも、さっき名前呼んだよね?」
「え、じゃあ」
「リーファでいいよ。フフ、同族会うの、何年振りだろ?」

 銀色の毛並みが美しい狼族の少女。
 それに、金色の毛並みが輝いているキツネ族の美少女。

「私はサラ。よろしくね。私も同族…ってか妖狐族なんて初めて会うわ」

 ネットが絡まり、動けなくなったリーダー格の男をそのまま縛っていく。
「フレイルなのが残念、ってとこね。剣ならネットは意味ないから。衛士団に引き渡すからね」
「く、くそぅ」

 オレ等の魔法で倒れた者達に、縛った後で癒しヒールを掛けていくリーファ。

「そんな奴等に」
「性分。どんな悪党でも、やっぱり怪我人は見過ごせないの」

 成る程。まさしく『聖女』だ。

「ぐっ。こ、これは」
「手当はするけど、悪党のオッサンは官憲に渡すからね」
「ち、チクショー!何で『銀の聖女』がこんな何処に」
「何処にいようが私の勝手!文句あっか‼︎」

 成る程。ガラ悪いわ。

「で、貴方は?名前くらい教えてくれてもバチ当たんないと思うんだけど?」

 小首をかしげ、悪戯っぽく微笑む彼女リーファ。その仕草も…、まさか?

「あ、ゴメン。オレの名はロン。あっちがラグ」
「よろしく、『銀の聖女』様」
「リーファでいいよ。私はただの冒険者で聖職者じゃないし」
「ガラ悪いし」
「ほっとけー!」
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