13 / 21
獣人王国ゲゥドーン
13. 陰謀をぶっ潰せ!
しおりを挟む
獣人王国ゲゥドーンは、その国土が森と草原。
河や泉もある、私達獣人にとっては住みやすい環境。その分街を作り難く里が点在する形になってる。王都ですら、帝国では商都程の規模でしかなくて。
帝国程帳簿での戸籍管理はされてないけど、獣人の付き合いは深いの。犬系種族に至っては挨拶で匂いを嗅ぎ合うから、隣人は勿論同じ里の者で知らない人なんかいないって言える。
私達も帝国ではやらないけど、此処では普通に犬系族の嗅ぎ合いをしてたんだ。
「事故で行方不明がいっぱい?」
私達がゲゥドーン王国を訪れていた時に起こった山中の事故。確かに近くの山肌の崩落から地滑りが始まって、里にかなりの被害があったんだけど。
別に家屋が埋まった訳でもないし、何処か開けたトコへ避難したって事でもないのに。
私達が衛士団と現場に赴いた時には、もう高齢と言える方々の死屍累々だった。
「こ、これは?」
「何かおかしいわ。ちょい調べていい?」
サラは野伏兼盗賊。
凄腕の密偵とも言えるの。
「何て雑な細工。罠師としては落第点ね」
やっぱり、崩落した山肌には、そうなるべくの仕掛けがされてて。
「サラ殿、それでは」
「はい。ここの崩落から泉に土砂を流れ込ませて泥濘を作り里へ流れ込ませる。となると、あそこ!あの高台にとりあえず集まって泥が引くのを待つのが得策。その渦中で襲撃。此処、消したつもりなんでしょうけど」
サラが指す地面。何かを引き摺った後が。
「事故じゃなくて、離れ郷を狙った人攫いの仕業」
里の誰かが放った通信鳥。
慌てて、先ずは連絡が先決と「土砂崩れ発生 ガル郷」と殴り書きの手紙。字数が少ないのは、獣人の識字率の低さ。こんな離れ郷に、よくも手紙を書ける人材がいたと思う。
「人攫い…、奴隷商へ売り飛ばすって事か。此処が牛族の郷と狙ってきたか」
帝国ならば有り得ない。
でも他国なら、獣人は大概奴隷階級の労働力だ。
若い牛族の女性は乳母として高く売れる。赤子が丈夫に育つと言われる程、牛族の乳は栄養価が高い上に、従順で献身的な性格も乳母向きとされていて。これは男性も同じで。従順で力も強い牛族はキツい力仕事にもうってつけだと引くて数多。
役に立てない老人だけを置いてけぼり…いや、始末していったんだ。
「西方諸国ならば敵性国家だし、彼等は魔物呼ばわりしてるから拉致なんてしない。殲滅してくるから。この辺で…、そうか!確かローデルシア王国で大規模な奴隷市が来月開かれる筈」
北の大国ローデルシア王国は、獣人を亜人とは認めている。奴隷階級だけど、使い捨てのモノではなくて主人の高価な所有物という扱い。殺すのは勿論傷付ける事も罪に問われるから、ローデルシアでは、考える程酷い扱いにはならない。
だからといって、拉致同然に連れて行って市で売り飛ばす等許せる筈もない!
「通信鳥が来て大急ぎでガル郷へ来た。奴等の狙いはこの郷だけなのか、それとも」
「市な開催まで、まだ間があります。ならもう少し人材を確保する筈。この郷に100名近く居たら、此処で終わると思うけど」
「いや、その半分も居ない。此処は比較的新しい開拓地だから。それにしても、流石はランクCの冒険者ですね」
ゲゥドーン王国衛士は国防を担う力こそ求められるから。勿論捜査権力も有るだろうけど、頭使う事が不向きな人が多くてって感じて、つい、私はサラと顔を見合わせてしまった。
本来、年齢的にはもっと下のランクなんだろう。
こないだの瘴気竜討伐で『元気っ娘』のランクは上がったんだ
「ね、サラ」
「うん、気付いた。冒険者かな?若い犬系族の男性が此処に来てる」
私達が来るちょい前くらい。
多分、私達と同じ様にこの辺りを調べて、同じ結論に達して。そして何か、人攫い共の動きが分かる確証を見つけて動いた?或いは単に、他の手掛かりを探しに行った?
「同族かなぁ。コレ、私と同じ狼族だと思う」
発情期はまだまだ先の幼い身だけど、それでも私の身体は反応してる。コレは同族男性に対する女性特有のモノ。犬系族は特に嗅覚が優れる分、どうしてもこの手の匂いには敏感になってしまう。
「何か手掛かり、掴んだのかなぁ」
「多分ね。リーファ、あれ、見て」
サラが指差すトコ、草の葉を幾つか結んでるトコがある。
「コレって?」
「コレ、さ。『野伏』が使う草合わせって伝達方法。結びの一つ一つが意味ある言葉になってんだ。でね、『5~6人程の集団、北から西へ』って言ってる」
この事を衛士達に伝えると。
「此処から西となるとギルチャナの森か。なるほど、野盗の隠れ家としてもピッタリだ」
そればかりではなく、近くに郷が2つ程あるんだとか。益々彼等にとって都合の良い森だわ。
「早速向かいましょう」
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「全く、散々手を焼かせやがって」
「やっと捕まえたぜ、このガキ」
「黙れ!薄汚ねぇ人攫いが‼︎」
数名の男達に取り囲まれた獣人の男の子達。
やや青白地味た毛色はとても珍しい狼族の少年と燃えてる様な赤毛のキツネ族の少年~こちらが少し歳上?
森の中で、彼等が絶体絶命のピンチになろうとしていました。
河や泉もある、私達獣人にとっては住みやすい環境。その分街を作り難く里が点在する形になってる。王都ですら、帝国では商都程の規模でしかなくて。
帝国程帳簿での戸籍管理はされてないけど、獣人の付き合いは深いの。犬系種族に至っては挨拶で匂いを嗅ぎ合うから、隣人は勿論同じ里の者で知らない人なんかいないって言える。
私達も帝国ではやらないけど、此処では普通に犬系族の嗅ぎ合いをしてたんだ。
「事故で行方不明がいっぱい?」
私達がゲゥドーン王国を訪れていた時に起こった山中の事故。確かに近くの山肌の崩落から地滑りが始まって、里にかなりの被害があったんだけど。
別に家屋が埋まった訳でもないし、何処か開けたトコへ避難したって事でもないのに。
私達が衛士団と現場に赴いた時には、もう高齢と言える方々の死屍累々だった。
「こ、これは?」
「何かおかしいわ。ちょい調べていい?」
サラは野伏兼盗賊。
凄腕の密偵とも言えるの。
「何て雑な細工。罠師としては落第点ね」
やっぱり、崩落した山肌には、そうなるべくの仕掛けがされてて。
「サラ殿、それでは」
「はい。ここの崩落から泉に土砂を流れ込ませて泥濘を作り里へ流れ込ませる。となると、あそこ!あの高台にとりあえず集まって泥が引くのを待つのが得策。その渦中で襲撃。此処、消したつもりなんでしょうけど」
サラが指す地面。何かを引き摺った後が。
「事故じゃなくて、離れ郷を狙った人攫いの仕業」
里の誰かが放った通信鳥。
慌てて、先ずは連絡が先決と「土砂崩れ発生 ガル郷」と殴り書きの手紙。字数が少ないのは、獣人の識字率の低さ。こんな離れ郷に、よくも手紙を書ける人材がいたと思う。
「人攫い…、奴隷商へ売り飛ばすって事か。此処が牛族の郷と狙ってきたか」
帝国ならば有り得ない。
でも他国なら、獣人は大概奴隷階級の労働力だ。
若い牛族の女性は乳母として高く売れる。赤子が丈夫に育つと言われる程、牛族の乳は栄養価が高い上に、従順で献身的な性格も乳母向きとされていて。これは男性も同じで。従順で力も強い牛族はキツい力仕事にもうってつけだと引くて数多。
役に立てない老人だけを置いてけぼり…いや、始末していったんだ。
「西方諸国ならば敵性国家だし、彼等は魔物呼ばわりしてるから拉致なんてしない。殲滅してくるから。この辺で…、そうか!確かローデルシア王国で大規模な奴隷市が来月開かれる筈」
北の大国ローデルシア王国は、獣人を亜人とは認めている。奴隷階級だけど、使い捨てのモノではなくて主人の高価な所有物という扱い。殺すのは勿論傷付ける事も罪に問われるから、ローデルシアでは、考える程酷い扱いにはならない。
だからといって、拉致同然に連れて行って市で売り飛ばす等許せる筈もない!
「通信鳥が来て大急ぎでガル郷へ来た。奴等の狙いはこの郷だけなのか、それとも」
「市な開催まで、まだ間があります。ならもう少し人材を確保する筈。この郷に100名近く居たら、此処で終わると思うけど」
「いや、その半分も居ない。此処は比較的新しい開拓地だから。それにしても、流石はランクCの冒険者ですね」
ゲゥドーン王国衛士は国防を担う力こそ求められるから。勿論捜査権力も有るだろうけど、頭使う事が不向きな人が多くてって感じて、つい、私はサラと顔を見合わせてしまった。
本来、年齢的にはもっと下のランクなんだろう。
こないだの瘴気竜討伐で『元気っ娘』のランクは上がったんだ
「ね、サラ」
「うん、気付いた。冒険者かな?若い犬系族の男性が此処に来てる」
私達が来るちょい前くらい。
多分、私達と同じ様にこの辺りを調べて、同じ結論に達して。そして何か、人攫い共の動きが分かる確証を見つけて動いた?或いは単に、他の手掛かりを探しに行った?
「同族かなぁ。コレ、私と同じ狼族だと思う」
発情期はまだまだ先の幼い身だけど、それでも私の身体は反応してる。コレは同族男性に対する女性特有のモノ。犬系族は特に嗅覚が優れる分、どうしてもこの手の匂いには敏感になってしまう。
「何か手掛かり、掴んだのかなぁ」
「多分ね。リーファ、あれ、見て」
サラが指差すトコ、草の葉を幾つか結んでるトコがある。
「コレって?」
「コレ、さ。『野伏』が使う草合わせって伝達方法。結びの一つ一つが意味ある言葉になってんだ。でね、『5~6人程の集団、北から西へ』って言ってる」
この事を衛士達に伝えると。
「此処から西となるとギルチャナの森か。なるほど、野盗の隠れ家としてもピッタリだ」
そればかりではなく、近くに郷が2つ程あるんだとか。益々彼等にとって都合の良い森だわ。
「早速向かいましょう」
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「全く、散々手を焼かせやがって」
「やっと捕まえたぜ、このガキ」
「黙れ!薄汚ねぇ人攫いが‼︎」
数名の男達に取り囲まれた獣人の男の子達。
やや青白地味た毛色はとても珍しい狼族の少年と燃えてる様な赤毛のキツネ族の少年~こちらが少し歳上?
森の中で、彼等が絶体絶命のピンチになろうとしていました。
15
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる