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獣人王国ゲゥドーン
12. 獣人王国のリーファ
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「兄上が求婚したって」
「彼女こそ王太子妃に相応しい。お前だってそう思うだろう?」
兄上の言葉は正論だ。
とは言え、私も引き下がるつもりなどない!
「兄上にはリリアナ嬢がいるではありませんか」
「国益を考えての事だ。お前も王族ならば、そういう覚悟も判る筈だ」
一々正論。だけど、だけど!
「彼女は何と?」
「『即答は出来ない』と。それも正論だ。それに『銀の聖女』殿はまだ幼い。返事を迫るつもりはない」
確かに、彼女はまだ12歳だと言っていた。
通俗的に一人前と呼ばれるのは16歳からだし、狼族の成熟は20歳からだ。
「父上には」
「まだ話していない。事がある程度決まらなくては、只の戯言だ。発した言には責務が伴うからな」
今ならまだ戯言で済む。
なんだけど…。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
王太子殿下からの求婚は、戸惑っているものの普通に女性としては嬉しく思う。
翌朝、宿で朝食を摂りながら私は考えてた。
「結論は?」
「失礼の無い様、お断りします」
サラに問われて、そう応えた。
「やっぱり」
魅力ある玉の輿なのは間違いない。
でも…。
「サラなら?」
「悩むわ」
つまりサラも飛び付く話ではない、と。
1番の理由は系族。
獅子族と狼族。わかるよね。
キツネ族のサラもだけど、大系族が違うと子が出来難い。
私達獣人は、大きく分けて犬系、猫系、熊系、馬系、牛系、兎系、鼠系の7種族になる。確かに愛があれば、系族違うも苦にならないとは聞くけどね。かなり出来難いけど、全く出来ない訳じゃ無いし。
私の知り合いには狼族と兎族の夫婦もいる。
でも同系族に越した事は無いんだよね。
昨日の立食パーティでも、魅力的な猫系族の女性はいっぱいいたし。
特に虎族の素敵な美人リリアナさんや猫族のマーシャさん、ヒョウ族のメノアさん等交流を深めた方々。彼女達の方が王妃に相応しいと思えるから。
「それはさておき、今日の予定は」
「衛士団にお呼ばれしてる」
「あぁ、腕試し?だっけ」
「うん。私の実力が信じられないみたいだし」
「まぁ、見た目ちっこいしね」
「これから育つの!」
私だって17~8になれば大人っぽくなれる筈。
どっちにしろ、狼族の私は獣人の中でも筋力は強い方だ。例え子供であっても。無論、獣人で1番力があるのは大熊族なんだけど、神聖属性魔法の強化は伊達じゃないんだから。
てな訳で。
衛士団の鍛錬場で、私は大熊族の巨漢衛士の剣を砕き飛ばして、相手に尻餅をつかせた。
「まさか魔法が卑怯とか言わないよね」
「この体格差だ。剣を砕いたのは、その銀の短槍の威力だろうが、俺を下がらせたのはアンタの力だろ?へっ、完敗だよ。この嬢ちゃん強えぜ」
ニヤリと笑う大熊族の巨漢衛士。
この獣人が1番強かったんだろう。皆の私を見る目が明らかに変わった。
「流石だね、『銀の聖女』殿」
「リーファ、でいいですよ、殿下」
公務もあるからって言ってたし。クラフト王太子は色々と忙しそうで。それに私達を招待してくれたのはグラン王子。今日も衛士団への案内をかってくれています。
少し引いている様に見えるのは、昨日のクラフト王太子殿下の求婚のせい?
「その、兄上とは」
「素敵な方ですね」
現況では、そうとしか応え様がない。
滞在中、後日、私は正式にお断りした。
「そうですか」
「私を妃と望まれた事、この身の光栄であり、とても嬉しく思います。ですが、私はウィルザード帝国の冒険者であり、また帝国に大恩ある者です。帝国から居を移す事、考えてはおりません。また系族を考えますと、万が一にも王統を途絶えさせる事になれば、この身は戦犯に堕ちてしまいます」
この理由ならば、グラン王子に対しても同じ事が言える。つまり、私はゲゥドーン王国に嫁ぐつもりはない、とハッキリと宣言した事になる。
「振られてしまいましたか」
クラフト王太子殿下は、そう快活に笑ってみせて。その心遣いに感謝。
それと、せっかくだからお買い物とか。
流石は獣人王国。
衣類の豊富さは帝国以上。
私達獣人は、ボトムにしろスカートにしろ、どうしても尻尾を考慮する必要がある。専用の衣類が必要なの。こればっかりは帝国でも品揃え豊富とはいかない。
狼族も尻尾はそこそこ大きいし、キツネ族のサラは成長するにつれて尻尾が増えていく。身体の成熟と冒険者レベルの度合いが、キツネ族は尻尾に現れてしまう。1本尾から始まって、伝説の妖狐族は9本尾なんだとか。
ちなみに、サラは今、実は2本尾。
尤も、2本目は、最初の尾の下に小さくあるから1本尾にしか見えないけど。サラの年齢を考えると、結構早熟なんだって。
そんなこんなで、私達も帰ろうと考えていた時、とある山中で事故が起こったと聞いた。
「私も行きます。連れて行って下さい」
「客人たる貴女方を」
「私が行けば、助けられる生命もあると思います」
獣人に魔法持ちは少ない。
ましてや神聖属性回復魔法なんて。
さりとて薬師や道具屋等の商人も多い訳じゃない。脳筋の多い獣人王国ならではの人材不足があるんだ。
戦闘力としての国力は申し分なくとも、版図を広げられないのは、そういう事だってクラフト殿下がぼやいていた。
「…お願いしてもよろしいでしょうか」
「勿論です。お役に立てると思います」
ゲゥドーン王国への滞在が延びた、1番大きな理由でした。
ただの事故じゃなかったんです。
「彼女こそ王太子妃に相応しい。お前だってそう思うだろう?」
兄上の言葉は正論だ。
とは言え、私も引き下がるつもりなどない!
「兄上にはリリアナ嬢がいるではありませんか」
「国益を考えての事だ。お前も王族ならば、そういう覚悟も判る筈だ」
一々正論。だけど、だけど!
「彼女は何と?」
「『即答は出来ない』と。それも正論だ。それに『銀の聖女』殿はまだ幼い。返事を迫るつもりはない」
確かに、彼女はまだ12歳だと言っていた。
通俗的に一人前と呼ばれるのは16歳からだし、狼族の成熟は20歳からだ。
「父上には」
「まだ話していない。事がある程度決まらなくては、只の戯言だ。発した言には責務が伴うからな」
今ならまだ戯言で済む。
なんだけど…。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
王太子殿下からの求婚は、戸惑っているものの普通に女性としては嬉しく思う。
翌朝、宿で朝食を摂りながら私は考えてた。
「結論は?」
「失礼の無い様、お断りします」
サラに問われて、そう応えた。
「やっぱり」
魅力ある玉の輿なのは間違いない。
でも…。
「サラなら?」
「悩むわ」
つまりサラも飛び付く話ではない、と。
1番の理由は系族。
獅子族と狼族。わかるよね。
キツネ族のサラもだけど、大系族が違うと子が出来難い。
私達獣人は、大きく分けて犬系、猫系、熊系、馬系、牛系、兎系、鼠系の7種族になる。確かに愛があれば、系族違うも苦にならないとは聞くけどね。かなり出来難いけど、全く出来ない訳じゃ無いし。
私の知り合いには狼族と兎族の夫婦もいる。
でも同系族に越した事は無いんだよね。
昨日の立食パーティでも、魅力的な猫系族の女性はいっぱいいたし。
特に虎族の素敵な美人リリアナさんや猫族のマーシャさん、ヒョウ族のメノアさん等交流を深めた方々。彼女達の方が王妃に相応しいと思えるから。
「それはさておき、今日の予定は」
「衛士団にお呼ばれしてる」
「あぁ、腕試し?だっけ」
「うん。私の実力が信じられないみたいだし」
「まぁ、見た目ちっこいしね」
「これから育つの!」
私だって17~8になれば大人っぽくなれる筈。
どっちにしろ、狼族の私は獣人の中でも筋力は強い方だ。例え子供であっても。無論、獣人で1番力があるのは大熊族なんだけど、神聖属性魔法の強化は伊達じゃないんだから。
てな訳で。
衛士団の鍛錬場で、私は大熊族の巨漢衛士の剣を砕き飛ばして、相手に尻餅をつかせた。
「まさか魔法が卑怯とか言わないよね」
「この体格差だ。剣を砕いたのは、その銀の短槍の威力だろうが、俺を下がらせたのはアンタの力だろ?へっ、完敗だよ。この嬢ちゃん強えぜ」
ニヤリと笑う大熊族の巨漢衛士。
この獣人が1番強かったんだろう。皆の私を見る目が明らかに変わった。
「流石だね、『銀の聖女』殿」
「リーファ、でいいですよ、殿下」
公務もあるからって言ってたし。クラフト王太子は色々と忙しそうで。それに私達を招待してくれたのはグラン王子。今日も衛士団への案内をかってくれています。
少し引いている様に見えるのは、昨日のクラフト王太子殿下の求婚のせい?
「その、兄上とは」
「素敵な方ですね」
現況では、そうとしか応え様がない。
滞在中、後日、私は正式にお断りした。
「そうですか」
「私を妃と望まれた事、この身の光栄であり、とても嬉しく思います。ですが、私はウィルザード帝国の冒険者であり、また帝国に大恩ある者です。帝国から居を移す事、考えてはおりません。また系族を考えますと、万が一にも王統を途絶えさせる事になれば、この身は戦犯に堕ちてしまいます」
この理由ならば、グラン王子に対しても同じ事が言える。つまり、私はゲゥドーン王国に嫁ぐつもりはない、とハッキリと宣言した事になる。
「振られてしまいましたか」
クラフト王太子殿下は、そう快活に笑ってみせて。その心遣いに感謝。
それと、せっかくだからお買い物とか。
流石は獣人王国。
衣類の豊富さは帝国以上。
私達獣人は、ボトムにしろスカートにしろ、どうしても尻尾を考慮する必要がある。専用の衣類が必要なの。こればっかりは帝国でも品揃え豊富とはいかない。
狼族も尻尾はそこそこ大きいし、キツネ族のサラは成長するにつれて尻尾が増えていく。身体の成熟と冒険者レベルの度合いが、キツネ族は尻尾に現れてしまう。1本尾から始まって、伝説の妖狐族は9本尾なんだとか。
ちなみに、サラは今、実は2本尾。
尤も、2本目は、最初の尾の下に小さくあるから1本尾にしか見えないけど。サラの年齢を考えると、結構早熟なんだって。
そんなこんなで、私達も帰ろうと考えていた時、とある山中で事故が起こったと聞いた。
「私も行きます。連れて行って下さい」
「客人たる貴女方を」
「私が行けば、助けられる生命もあると思います」
獣人に魔法持ちは少ない。
ましてや神聖属性回復魔法なんて。
さりとて薬師や道具屋等の商人も多い訳じゃない。脳筋の多い獣人王国ならではの人材不足があるんだ。
戦闘力としての国力は申し分なくとも、版図を広げられないのは、そういう事だってクラフト殿下がぼやいていた。
「…お願いしてもよろしいでしょうか」
「勿論です。お役に立てると思います」
ゲゥドーン王国への滞在が延びた、1番大きな理由でした。
ただの事故じゃなかったんです。
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