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自由奔放な少女達
8. エンデロブルに帰ってきました
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目眩く帝都での交友。
エンデロブルに帰ってきて、ホッとしたのはマヂです。一応、この街に…、自宅兼拠点があるんです。
「ご馳走三昧で太ったんじゃない?」
「めちゃくちゃ気を使うんだから、そんなワケないんだって」
軽口交わしながら、私達3人は冒険者ギルドへと。
「ね、マリーダ!何かいい依頼ない?」
「あら、お帰り。そうね、コレなんかどお?」
手に持ってる依頼書をそのまま私達の前に。
「ガリザの森で薬草採取?」
「面倒くさそう。でも、コレは」
「私がいないと厳しいかも」
パラプルカは高級ポーションに欠かせない薬草。回復効力もだが、劇的と呼べる程の薬効増幅剤としての役割を持つ。独特の香りを持つが、匂いそのものがかなり薄く、その匂いを覚えてるイヌ系族獣人がいないと探し出す事は極めて困難なんだ。
何せ見た目が雑草とまるで一緒。でもコッチには匂いが無い。
この匂いの差が、勿論他の獣人も他種族と比べると遥かに嗅覚は鋭いけど、イヌ系族獣人じゃないと区別出来るモノじゃないの。
何故匂いを覚えてるかと言えば、神聖属性魔法の使い手たる回復師として、製薬調合という薬師の基本位は出来る様になってる。
これは元『銀の聖女』としての技術の名残。記憶もだけど、あの時習得したワザは、そのまま使えるから。
「あれ?リーファは?」
「薬師程上手くは作れないけどね。一応製薬調合技法知ってるよ」
「『銀の聖女』って何でもあり?」
「ンなワケあるか⁉︎」
とりあえず説得力のある言い訳。
「獣人のガキが生き抜く為の知恵を必死に付けた。コレでも苦労してんの」
「マリーダ。コレ、アタシらがうってつけだと思うから受けるわ」
薬草もだけど、ガリザの森もまた難所なワケで。
此処は古のエルフの森だったらしく。今はいないけどね。でもエルフは、里たる森に他種族が入る事を極端に嫌う。だから森自体に『幻惑』がかかってる場合が多い。それが、既に退去した森であったとしても『幻惑』が解ける事はなくて。
どう対処するか。
事は単純。エルフがいればいい。
ハーフダークエルフだろうと、エルフの血を引く者に『幻惑』は作用しない。だからカノンには、普通の森でしかないんだ。
その辺もあって、サラは「アタシらがうってつけ」と言ってる。
マリーダも熟練受付嬢(歳はいってないよ、若いんだよ)だから、そういうのは熟知していて。
「じゃあ、よろしくね」
ガリザの森は、エンデロブルからだと北になるけど、ベリュー沼地帯よりは遥かに近い。徒歩でも半日歩けば辿り着く。
街道から半日分の距離を外れるワケだけど。
獣人とダークエルフだと、子供でも舗装された石畳街道より獣道の方が歩きやすかったりする。
私達は、苦もなく森へ着いた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
一方その頃。
帝国皇宮を特使が訪れていた。
獣人王国ゲゥドーン特使、第2王子グラン。
ゲゥドーンは獅子族獣人の英雄リーオー=ダイタスが王祖として打ち立てた東方の王国。ウィルザード帝国やローデルシア王国と比べれば小国でしかない。が、この2大国はゲゥドーンの建国を公認し、帝国は国交すら樹立している。ローデルシアも民間レベルでは交易している。
だが西方諸国は、獣人を魔物とし奴隷階級ですら認めていない。そして「魔物の国家の存在を認めず」と、ゲゥドーンに対し『聖戦』の名の下に幾度となく攻め込んでいた。
この件に関し、帝国もローデルシアも無干渉であり、どちらにも支援はしていない。
この戦争がダラダラ長引いているのは、「魔物国家殲滅」を謳い文句とする西方諸国の執念深さと、ある意味魔物とさえ言われる程の獣人達の個々の能力の高さの為に、西方諸国が攻め倦んでいたからである。
そして、第何次か分からぬ聖戦が起ころうとしており、ゲゥドーン特使が国交のある帝国に協力を要請していたのである。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「殿下に対応頂けるとは思いもよりませんでした」
私の前に、ゲゥドーン特使グラン王子がいる。
「小国と言え貴殿も王子だ。それに、助力の要請が『銀の聖女』の事であれば、私も無関心ではいられない」
そう。
ゲゥドーンの助力要請は、『銀の聖女』の支援を得たい、という事に他ならない。
ベリュー沼地帯の活躍で、彼女の存在感は一気に他国へも広まった。神聖属性魔法の使い手としても、帝国最高教会が司教並と認め、名誉職ではあるが相応の地位を宣言した程の実力がある。
更に、短槍使いとしても近衛騎士に匹敵する戦闘力がある。
場合によっては、彼女1人で1軍にも匹敵し得るのだ。
勿論、彼女は、その戦闘力を誇示する事はない。仲間を、誰かを守るためにのみ発揮していて、その対象に自分を入れない程の天然さを持つ、見てる方がヤキモキする少女だ。
この話。
帝国の要請が無くとも、聞けば彼女は戦地に赴くだろう。
西方の同胞は苦難を強いられている。
彼女はかなり気にしていた。
そして、また無茶をする。
瘴気竜を倒し、沼地を浄化した後倒れ込んだ彼女の、微笑んだ寝顔とは言え蒼く顔色は優れなかった。しかもあの後3日寝込んでいた。
あの顔色は忘れられない。
それ以上に、抱き上げた時の彼女の軽さに愕然としたのだ。
あれ程幼く、小さな身体の何処にあれだけの力を秘めているのか?
「帝国が『銀の聖女』を貸したくない事は重々承知しています。それでも、伏してお願い申し上げる」
頭をテーブルに擦り付ける程下げるグラン王子。
その日、私は返答を保留した…。
エンデロブルに帰ってきて、ホッとしたのはマヂです。一応、この街に…、自宅兼拠点があるんです。
「ご馳走三昧で太ったんじゃない?」
「めちゃくちゃ気を使うんだから、そんなワケないんだって」
軽口交わしながら、私達3人は冒険者ギルドへと。
「ね、マリーダ!何かいい依頼ない?」
「あら、お帰り。そうね、コレなんかどお?」
手に持ってる依頼書をそのまま私達の前に。
「ガリザの森で薬草採取?」
「面倒くさそう。でも、コレは」
「私がいないと厳しいかも」
パラプルカは高級ポーションに欠かせない薬草。回復効力もだが、劇的と呼べる程の薬効増幅剤としての役割を持つ。独特の香りを持つが、匂いそのものがかなり薄く、その匂いを覚えてるイヌ系族獣人がいないと探し出す事は極めて困難なんだ。
何せ見た目が雑草とまるで一緒。でもコッチには匂いが無い。
この匂いの差が、勿論他の獣人も他種族と比べると遥かに嗅覚は鋭いけど、イヌ系族獣人じゃないと区別出来るモノじゃないの。
何故匂いを覚えてるかと言えば、神聖属性魔法の使い手たる回復師として、製薬調合という薬師の基本位は出来る様になってる。
これは元『銀の聖女』としての技術の名残。記憶もだけど、あの時習得したワザは、そのまま使えるから。
「あれ?リーファは?」
「薬師程上手くは作れないけどね。一応製薬調合技法知ってるよ」
「『銀の聖女』って何でもあり?」
「ンなワケあるか⁉︎」
とりあえず説得力のある言い訳。
「獣人のガキが生き抜く為の知恵を必死に付けた。コレでも苦労してんの」
「マリーダ。コレ、アタシらがうってつけだと思うから受けるわ」
薬草もだけど、ガリザの森もまた難所なワケで。
此処は古のエルフの森だったらしく。今はいないけどね。でもエルフは、里たる森に他種族が入る事を極端に嫌う。だから森自体に『幻惑』がかかってる場合が多い。それが、既に退去した森であったとしても『幻惑』が解ける事はなくて。
どう対処するか。
事は単純。エルフがいればいい。
ハーフダークエルフだろうと、エルフの血を引く者に『幻惑』は作用しない。だからカノンには、普通の森でしかないんだ。
その辺もあって、サラは「アタシらがうってつけ」と言ってる。
マリーダも熟練受付嬢(歳はいってないよ、若いんだよ)だから、そういうのは熟知していて。
「じゃあ、よろしくね」
ガリザの森は、エンデロブルからだと北になるけど、ベリュー沼地帯よりは遥かに近い。徒歩でも半日歩けば辿り着く。
街道から半日分の距離を外れるワケだけど。
獣人とダークエルフだと、子供でも舗装された石畳街道より獣道の方が歩きやすかったりする。
私達は、苦もなく森へ着いた。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
一方その頃。
帝国皇宮を特使が訪れていた。
獣人王国ゲゥドーン特使、第2王子グラン。
ゲゥドーンは獅子族獣人の英雄リーオー=ダイタスが王祖として打ち立てた東方の王国。ウィルザード帝国やローデルシア王国と比べれば小国でしかない。が、この2大国はゲゥドーンの建国を公認し、帝国は国交すら樹立している。ローデルシアも民間レベルでは交易している。
だが西方諸国は、獣人を魔物とし奴隷階級ですら認めていない。そして「魔物の国家の存在を認めず」と、ゲゥドーンに対し『聖戦』の名の下に幾度となく攻め込んでいた。
この件に関し、帝国もローデルシアも無干渉であり、どちらにも支援はしていない。
この戦争がダラダラ長引いているのは、「魔物国家殲滅」を謳い文句とする西方諸国の執念深さと、ある意味魔物とさえ言われる程の獣人達の個々の能力の高さの為に、西方諸国が攻め倦んでいたからである。
そして、第何次か分からぬ聖戦が起ころうとしており、ゲゥドーン特使が国交のある帝国に協力を要請していたのである。
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「殿下に対応頂けるとは思いもよりませんでした」
私の前に、ゲゥドーン特使グラン王子がいる。
「小国と言え貴殿も王子だ。それに、助力の要請が『銀の聖女』の事であれば、私も無関心ではいられない」
そう。
ゲゥドーンの助力要請は、『銀の聖女』の支援を得たい、という事に他ならない。
ベリュー沼地帯の活躍で、彼女の存在感は一気に他国へも広まった。神聖属性魔法の使い手としても、帝国最高教会が司教並と認め、名誉職ではあるが相応の地位を宣言した程の実力がある。
更に、短槍使いとしても近衛騎士に匹敵する戦闘力がある。
場合によっては、彼女1人で1軍にも匹敵し得るのだ。
勿論、彼女は、その戦闘力を誇示する事はない。仲間を、誰かを守るためにのみ発揮していて、その対象に自分を入れない程の天然さを持つ、見てる方がヤキモキする少女だ。
この話。
帝国の要請が無くとも、聞けば彼女は戦地に赴くだろう。
西方の同胞は苦難を強いられている。
彼女はかなり気にしていた。
そして、また無茶をする。
瘴気竜を倒し、沼地を浄化した後倒れ込んだ彼女の、微笑んだ寝顔とは言え蒼く顔色は優れなかった。しかもあの後3日寝込んでいた。
あの顔色は忘れられない。
それ以上に、抱き上げた時の彼女の軽さに愕然としたのだ。
あれ程幼く、小さな身体の何処にあれだけの力を秘めているのか?
「帝国が『銀の聖女』を貸したくない事は重々承知しています。それでも、伏してお願い申し上げる」
頭をテーブルに擦り付ける程下げるグラン王子。
その日、私は返答を保留した…。
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