ミルキィにおまかせ！

王女襲来！

36. このケンカ買うよー！

「ぐぁはっ、ば、馬鹿な。そんな馬鹿な！」

　私ミルキィの放った風の刄ウィンズエッジを避け切れず、魔将ダームの身体に傷が増えていく。

　どお？
　アンタが放ったヤツより威力増し増しの切れ味。

「…悪魔の鏡デモンズミラー…」
「あらー、知ってたんだー」
「馬鹿な。解析消去マテリアルキャンセルも悪魔の鏡デモンズミラーも、大魔王様のお力の筈？何故、魔人族如きの…」

　ズバッ！
「ぐげ…ガッ…」
　もう、避けられる状態じゃないみたいねー。
「何故だぁ！」

「その大魔王レベッカが使ってるの、見た事あるのー？彼女特有の力だと知ってるみたいだけど」
「悪魔の鏡デモンズミラーはな。大魔王様は我等の魔法を上回るモノで返され、我等を駆逐なされた。故に、そのお力で我等を従えたのだ」

　そうか。
　ソーンの魔法と魔力を奪ったのはこの為。
　彼女は知らない魔法、使えない魔法なんかなかったし。全ての魔法を使える様にして、上回る魔力で返せば。

　でも、解析消去マテリアルキャンセルはほぼ私固有って言える才スキル。どうしようもないみたい。

「何故だ…。貴様は何者だ」
「この2つを扱える者は、この世界に1人しかいないんじゃない？」
「ば、馬鹿な」
「絶望を胸に死んでもらうわ。でもレベッカに倒されるのならば本望じゃない？」
「そ、そんな…」

　あーあ。
　さっきまでの威勢のいい傍若さは何処へ行ったのやらねー。

「し、死にたくないぃー」
　何の魔法？そんなヤケに撃ったって。

　パチン！

「何種類あっても一緒よ。全てを無に出来るし、全てを返せるの」

　魔将ダームがヤケクソで放った魔法の全てを返す。私の前に各種攻撃魔法の生成魔法陣が錬成され、一気にダームへと放たれた。

「ギャアアアア」
　全てが、威力増し増しで。
「終わり！」

　大鎌の刃を胸に撃ち込む！
「えーい！」

　パリン。
　魔核コアの爆ける音が響き、魔将ダームは灰と化して消える。勿論、風の刄ウィンズエッジで落とした角を証拠として拾い上げるのも忘れずに。

「で、貴方はみてるだけ？」
「やはり、私にも気付いておられましたか」
「魔将ライガス…」

　大魔王ベルドの副官とも言える魔将。
　幼き日の私とも交流があった。

　もう数100年も前の事。

「まさか魔人族になられておいでとは」
「予想外とでも言うのー？私の言動、貴方もよく知る筈」
「確かに。レベッカ様は常に人族擁護を謳われていた」
　笑みを浮かべて頷くライガス。
　ある意味、その仕草が懐かしい。

「今の大魔王にも伝えて。私は『このケンカ、買うよー』って」
「それは、残念です。また、こうなると大魔王様の中身も知りたくなる。尤も、あのお方が大魔王を名乗るに相応しい魔法魔力の持ち主なのは揺るぎませんがね」
「ソーンの仇もね。私は絶対に許さないから」
「それは初耳。あの偏屈隠居を大魔王様が伐った？ほう、それであれだけの魔法魔力か。成る程。これは面白いかもしれませんね」

　ライガスは確かに大魔王パパの副官だったけど、どちらかと言えば『無関心派』に近い思想だった。
　大魔王レベッカと名乗る魔族への興味。
　それで付き従っていると言うの？

「いずれにせよ、また相見える事もありましょう。それまで」

　掻き消す形で、目の前から去るライガス。

　これで魔族魔界に私の正体がバレた。
　その分、ケンカを買うと宣言した。

　創世女神サンディアに貰った『錬金術師』の才。
　この+プラスされた才をアンタらは知らない。しかも発展途上！

　次に会う時には、まだ強くなってるからー！

　で、背後を振り返る。
　うん、まだ結界は張られてる。

　だから見えてない、聞こえてない。よね？

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「それにしても、レベッカが魔人族になっていたとはね。すると、今の大魔王様は？フフ、これは中々楽しい報告になりそうですね」

　クックックッ。
　フ、フハハハハハ！