出撃!特殊戦略潜水艦隊

ノデミチ

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激闘!潜水戦隊

26.

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「敵潜、アクティブソナー打ちました」
「スクリュー音を確認出来ないだろうからな。だが、この艦は我々と戦う気ヤル気満々って事だな」

 深度100。安全深度一杯。
 実際は1.3程の余裕のある設計なので、130までは大丈夫の筈。とは言え、カタログデータを信じてバカを見るのが常の実戦だ。

「このまま逃げてくれれば、と思っていたのだが」
「どうでしょうね。我々は予想以上にアメリカさんの恨みを買っているのかもしれませんよ」
 前原が他人事の様に言う。
「何が何でも、ですか?先任」
「此処迄奴等アメリカが庭先と思っていた太平洋で好き勝手に暴れているんだ。大統領あたりが、『絶対に沈めろ』って位は言っているさ」
「そうだな。ならば改修・補給直後の我々はツイているという訳だ」
 南田艦長の軽口?皆が振り返って艦長を見る。
「とうとう私に感化されましたね」
 白い歯を見せる前原に、南田もニヤリと返す。

 戦闘直後の、しかも深度100という、ともすれば危険な場所で。イ- 400には余裕があった。

「しかし、問題は敵潜が直ぐに2隻になった事です。これはもしかするとライン諸島の」
「そうだな、矢上航海長。アメリカ軍基地の潜水隊だろう。近くにいたのが2隻ならはいいが」
「3隻目がいるかもしれないですね」

 そう前原が言うか否かだった。

「洋上航行している船舶があります」
「駆逐艦か」
「にしては小さいと思われます。駆潜艇かもしれません」

 流石に潜水艦が洋上航行してくるとは思わない。

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

「洋上航行の艦船あり。スクリュー音紋確認。旗艦タンボアです」

 フランクス艦長はブチ切れてしまう。
 
「下に日本軍潜水艦モビーディックがいるんだぞ?何を考えているんだ。ええい、先の敵潜の位置へ魚雷攻撃!急げ、射角左18°、調程深度最大」
「ですが、あの位置へは」
「上もそれで気付く。威嚇でいい。とにかく敵潜を動かして、あわよくば追う形に出来れば」
「旗艦タンボアより艦隊無線電話TBCです」
「『敵潜有り』と言え!魚雷は?」
「準備OKです」
「撃てっ」

 バシュッ…ゴボゴボ…。

「魚雷、目標失探ロスト、迷走している模様」
 深度100までは、どうしてもいける筈が無い。

「速力6ノット、針路160、取り舵!此方も深度100まで潜る‼︎ 敵潜は?」
失探ロストしました。不明です」
「旗艦タンボアより艦隊無線電話TBC、『敵潜の位置を知らせ』」
 何を呑気な。だが…。
「この、これは…、スクリュー音?でも、小さい」
 聴音員が首を捻っている。
「どうした?」
 レアード副長が聴音員の側までいく。
「何やら別のスクリュー音らしき音響が…、でも」
「魚雷ではないのか」
「魚雷にある燃焼ガス発泡音が無いのです」

 日本軍が誇る95式酸素魚雷は雷跡を出さない。
 高純度酸素は水に溶け込んでしまうからだ。

 だが通常、魚雷は空気を燃焼させて馳走する為に、その発泡が雷跡となって海上からも分かりやすくなってしまう。スクリュー音と共に発泡音も聴音出来るのである。

「そのスクリュー音は何処へ」
「上へ向かって…、まさか?」

 ズガガガーン!ドドーン!

 2発の爆発音が響く。やがて小さな衝撃が艦に伝わって来た。

「旗艦タンボア、雷撃されました!」
何てこったOh my god!」

 バーブ同様、タンボアもゆっくりと沈降し圧壊、爆発した。

「敵潜は」
「スクリュー音確認。どうやら離れていきます。左240°方向」
「雷撃音に紛れてモーターを始動したのか。それにしても、いつ浮上した」
「無音状態のまま、ベント弁を開いてでしょうね。細心なのか大胆なのか」
「此方とほぼ同時に魚雷を発射した、か。くっそ、日本潜水艦ヤツには外が見えているのか?TBCを探知出来る訳が無いのに」
「洋上航行です。スクリュー音も機関音も有りますから」
 旗艦の、ランサー司令やホワイト艦長の油断が招いた撃沈。だとしても、だ。
「流石は秘密兵器を任された艦長だと言う事か」

 イ- 400艦長の手並み、凄腕をまざまざと思い知らされたフランクス艦長は、念の為に、この後も30分は静止状態のまま聴音を続け、明らかにイ- 400が去ったと確信してからパルミラ島へ帰投したのだった。

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 アメリカ太平洋艦隊の暗号文を受信したトラック環礁の第4艦隊司令部は、第61潜水隊の2隻が撃沈された事を知った。

「これは、イ- 400か?」
「丁度、改修を終えて此方に向かっている筈です」
「南田君の手腕は素晴らしいのだがな」
「ああも頑固でなければ、と言う事ですか?」

 古湊少将にしても非常に使い辛い部下であり、また特殊戦略潜水戦隊が山本五十六長官直属の秘匿艦隊である事が、命令系統を少し面倒な事にしていた。

「これを機に、あのライン諸島の攻略を上申してみるか」

 アメリカ・イギリスの生命線と言える通商路。
 太平洋艦隊が大人しくしている今がチャンス。

 思いは、山本五十六も同じだった。
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