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運命の開戦
9.
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「攻撃成功!空母レキシントンは轟沈」
晴嵐からの入電。特型潜水艦隊もだが、南雲機動部隊も充分沸き返った。
「源田君」
「ええ、長官。幸先のいい開始だ」
「だが1隻しかいなかったか。確か真珠湾にはレキシントンと」
「エンタープライズがいる筈です」
空襲の主目的は、まず空母だった。
「まぁ、真珠湾はコレで充分だろう。後は特型潜水艦に任せるとしよう」
「長官?」
「攻撃隊が帰還次第作戦を終了、帰投する」
これに対し、第二航空戦隊山口多聞司令から「再度攻撃の必要有り。当方第2次攻撃隊の発進準備が整いつつあり」と具申してきた。源田も同様に再攻撃の必要性を説いたのだが、南雲中将は「当初目的は達成された。2次攻撃は不用である」と認めなかった。
南雲機動部隊は、攻撃機を全機収容すると帰途に就いたのだった。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「で、太平洋艦隊の状況は?被害は?」
オレンジルームに飛び込んで来た、日本軍の真珠湾攻撃の報。詳細が分かるにつれ、オレンジルームには憔悴と苦悩の色が広がっていく。
「空母レキシントン撃沈。戦艦オクラホマ、アリゾナ轟沈、ウェストバージニア、カリフォルニア、ネヴァダ、ペンシルヴァニア、テネシー、メリーランド大破炎上」
「何という事だ。戦艦はほぼ壊滅か」
「巡洋艦ロウリー、ホノルル、ヘレナ被弾、駆逐艦ショー、ダウンズ大破、カッシン火災発生。駆逐艦母艦ドビン、水上機母艦カーティス破損」
「で、基地機能は」
「それが、攻撃機が去った後、例の潜水戦艦が現れ重油タンクや基地施設に砲撃を加えた為、基地機能は失われたと言っても過言ではなく」
「何故、エンタープライズは被害を受けなかった?此方にとっては数少ない朗報だが、彼等が見逃すとは思えないのだが」
ノックス海軍長官の疑問にフォレスタル作戦部長の主任参謀スコットが応える。
「エンタープライズはウェーク島へ戦闘機の輸送任務に就いていました。現在、帰投途中です」
「それは、不幸中の幸いだ」
「だが、まさか例の潜水艦と出会わないだろうか」
ニューヨークを砲撃した潜水艦が、人目に付かないまま2日後にハワイへ到着出来る訳がない。
つまり、最低でも2隻は存在すると言う事になる。
この時、オレンジルームの首脳陣は忘れていた。
フロートを付けた飛行機~晴嵐の存在を。
最初の偵察、及び空母レキシントンを雷撃したのは彼等である。
水上機という事は、この機体は空母から発艦したのではないのだ。
特型潜水艦は、航空機という長い槍と遠くまで見通せる眼をもっている。オレンジルームの首脳陣は、後々、その事を思い知らされる。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
真珠湾。黒煙と炎が渦巻く中、乗組員達は必死で消火や復旧作業に取り組んでいた。
アメリカ海軍艦船にはダメージコントロールチームがいる。日本海軍の応急処理班よりも優秀かつ機能的な彼等は少しでも損失を少なくしようと努力していた。
「この真珠湾は水深が浅い。上手くすればサルベージして修復出来る」
「だからだよ。どうやってこんな浅い海底で日本軍は魚雷を使ったんだ」
アメリカ海軍は不可能と判断した雷撃。
日本軍は、同じ様な湾である鹿児島湾で開発改良試験特訓を重ねて九一式航空魚雷を造り上げたのだ。
航空戦力が去り、しばらくは警戒していた。
その間にも火災は拡がり、誘爆も起こってはいたが、1次攻撃だけで終わる筈がないと一兵卒に至るまで思っていたのだから。
だが間を置かずの交代劇はなく、十数分経っても2次攻撃隊が来る気配が無かった。
「日本軍め!こんな事で我々が負けたと思い込むと思うならば大きな間違いだぜ」
そう笑い飛ばし、作業を進めようとした矢先。
突如、鼻先に巨大な潜水艦が浮上してきた。
「ま、まさか⁉︎あれは?」
少なくとも司令部の者は、ニューヨークを砲撃した化け物潜水艦の報を聞いていた。
上甲板を左右に開き安定翼兼フロートを形成すると、前後の主砲塔が転回してきた。
「に、逃げろ!」
ドドーン!
ドドーン‼︎
艦船もだが、化け物潜水艦は陸上基地設備に砲撃を加えてきたのである。
「総員退避!急げ‼︎」
やがて潜水艦は重油タンクを砲撃する。
グワァーン!ズガガガーン‼︎
激しい焔と黒煙、衝撃波が基地を包み込んでいく。
「そ、そちらは病院?」
流石に潜水艦も砲撃を止めると向きを変え、再び砲撃を繰り返した。
窓ガラスは、衝撃波もあり割れた箇所もあるだろうが、それでも病院へ至近弾すら炸裂する事はなかった。
化け物潜水艦は悠々と真珠湾内を回遊し基地各所へ砲撃を加えていく。その後、損傷軽微と思われる艦船に対しても砲撃していった。
滑走路が爆撃された為発進出来なかった航空機は、どうせ出せないのならばとシェルターへ格納していたのだが、それすらも砲撃で潰れてしまい、中の航空機ごと壊滅してしまったのである。
「あれが、ニューヨークを砲撃した化け物潜水艦か」
初めて聞いた時には何の冗談かと思えた存在。
「冗談…、ははは、誰か冗談だと言ってくれ」
キンメルには灼熱地獄にしか見えなかった。
重油火災は、艦隊司令部を焼き尽くしたのである。
晴嵐からの入電。特型潜水艦隊もだが、南雲機動部隊も充分沸き返った。
「源田君」
「ええ、長官。幸先のいい開始だ」
「だが1隻しかいなかったか。確か真珠湾にはレキシントンと」
「エンタープライズがいる筈です」
空襲の主目的は、まず空母だった。
「まぁ、真珠湾はコレで充分だろう。後は特型潜水艦に任せるとしよう」
「長官?」
「攻撃隊が帰還次第作戦を終了、帰投する」
これに対し、第二航空戦隊山口多聞司令から「再度攻撃の必要有り。当方第2次攻撃隊の発進準備が整いつつあり」と具申してきた。源田も同様に再攻撃の必要性を説いたのだが、南雲中将は「当初目的は達成された。2次攻撃は不用である」と認めなかった。
南雲機動部隊は、攻撃機を全機収容すると帰途に就いたのだった。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「で、太平洋艦隊の状況は?被害は?」
オレンジルームに飛び込んで来た、日本軍の真珠湾攻撃の報。詳細が分かるにつれ、オレンジルームには憔悴と苦悩の色が広がっていく。
「空母レキシントン撃沈。戦艦オクラホマ、アリゾナ轟沈、ウェストバージニア、カリフォルニア、ネヴァダ、ペンシルヴァニア、テネシー、メリーランド大破炎上」
「何という事だ。戦艦はほぼ壊滅か」
「巡洋艦ロウリー、ホノルル、ヘレナ被弾、駆逐艦ショー、ダウンズ大破、カッシン火災発生。駆逐艦母艦ドビン、水上機母艦カーティス破損」
「で、基地機能は」
「それが、攻撃機が去った後、例の潜水戦艦が現れ重油タンクや基地施設に砲撃を加えた為、基地機能は失われたと言っても過言ではなく」
「何故、エンタープライズは被害を受けなかった?此方にとっては数少ない朗報だが、彼等が見逃すとは思えないのだが」
ノックス海軍長官の疑問にフォレスタル作戦部長の主任参謀スコットが応える。
「エンタープライズはウェーク島へ戦闘機の輸送任務に就いていました。現在、帰投途中です」
「それは、不幸中の幸いだ」
「だが、まさか例の潜水艦と出会わないだろうか」
ニューヨークを砲撃した潜水艦が、人目に付かないまま2日後にハワイへ到着出来る訳がない。
つまり、最低でも2隻は存在すると言う事になる。
この時、オレンジルームの首脳陣は忘れていた。
フロートを付けた飛行機~晴嵐の存在を。
最初の偵察、及び空母レキシントンを雷撃したのは彼等である。
水上機という事は、この機体は空母から発艦したのではないのだ。
特型潜水艦は、航空機という長い槍と遠くまで見通せる眼をもっている。オレンジルームの首脳陣は、後々、その事を思い知らされる。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
真珠湾。黒煙と炎が渦巻く中、乗組員達は必死で消火や復旧作業に取り組んでいた。
アメリカ海軍艦船にはダメージコントロールチームがいる。日本海軍の応急処理班よりも優秀かつ機能的な彼等は少しでも損失を少なくしようと努力していた。
「この真珠湾は水深が浅い。上手くすればサルベージして修復出来る」
「だからだよ。どうやってこんな浅い海底で日本軍は魚雷を使ったんだ」
アメリカ海軍は不可能と判断した雷撃。
日本軍は、同じ様な湾である鹿児島湾で開発改良試験特訓を重ねて九一式航空魚雷を造り上げたのだ。
航空戦力が去り、しばらくは警戒していた。
その間にも火災は拡がり、誘爆も起こってはいたが、1次攻撃だけで終わる筈がないと一兵卒に至るまで思っていたのだから。
だが間を置かずの交代劇はなく、十数分経っても2次攻撃隊が来る気配が無かった。
「日本軍め!こんな事で我々が負けたと思い込むと思うならば大きな間違いだぜ」
そう笑い飛ばし、作業を進めようとした矢先。
突如、鼻先に巨大な潜水艦が浮上してきた。
「ま、まさか⁉︎あれは?」
少なくとも司令部の者は、ニューヨークを砲撃した化け物潜水艦の報を聞いていた。
上甲板を左右に開き安定翼兼フロートを形成すると、前後の主砲塔が転回してきた。
「に、逃げろ!」
ドドーン!
ドドーン‼︎
艦船もだが、化け物潜水艦は陸上基地設備に砲撃を加えてきたのである。
「総員退避!急げ‼︎」
やがて潜水艦は重油タンクを砲撃する。
グワァーン!ズガガガーン‼︎
激しい焔と黒煙、衝撃波が基地を包み込んでいく。
「そ、そちらは病院?」
流石に潜水艦も砲撃を止めると向きを変え、再び砲撃を繰り返した。
窓ガラスは、衝撃波もあり割れた箇所もあるだろうが、それでも病院へ至近弾すら炸裂する事はなかった。
化け物潜水艦は悠々と真珠湾内を回遊し基地各所へ砲撃を加えていく。その後、損傷軽微と思われる艦船に対しても砲撃していった。
滑走路が爆撃された為発進出来なかった航空機は、どうせ出せないのならばとシェルターへ格納していたのだが、それすらも砲撃で潰れてしまい、中の航空機ごと壊滅してしまったのである。
「あれが、ニューヨークを砲撃した化け物潜水艦か」
初めて聞いた時には何の冗談かと思えた存在。
「冗談…、ははは、誰か冗談だと言ってくれ」
キンメルには灼熱地獄にしか見えなかった。
重油火災は、艦隊司令部を焼き尽くしたのである。
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