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序
2.
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「潜水空母?ですか?」
「そうだ。戦略砲撃潜水艦もだが、水偵ではなく、雷撃爆撃はもとより、ある程度の空戦性能を持つ艦載機を数機搭載出来る潜水艦だ」
イギリスから買い付けた砲撃潜水艦を精査し、実戦的使用レベルへ持っていこうとしていた会議の途中、山本五十六は別の大型潜水艦の構想を語り出したのだ。
潜水艦に搭載機を。この事自体はそれ程珍しい話ではない。実際、水上偵察機を搭載する伊号潜水艦は何隻も実働稼働している。
これもイギリスをはじめドイツやフランス等西欧諸国でも取り組まれ、消滅した事案である。イタリアでは実働した艦もあったのだが、この1隻でたち消え、イギリスやドイツは実用前に計画が頓挫している。
唯一運用を実現した日本海軍も、この水偵搭載艦の運用~というより水偵の扱いにかなり苦労はしていた。潜水艦に格納する為、小型かつ分解組立式の水偵でなくてはならず、発艦は勿論帰還時格納にかなり手間取り、場合によっては諦めなければならない。機体はより精密となり整備にも気を使う代物であり、西欧諸国が実用を諦めるのも軍略上当然とさえ言えたのだ。
砲撃潜水艦でさえ、製作当事者のイギリス海軍が実用不可と断じた兵器であり、だからこそ山本の構想は荒唐無稽と言えた。
「そのような特型を造らなくとも。そもそも潜水艦は通商破壊戦が最適と現場の艦長はもとより作戦参謀達も口を揃えて…」
「無論それが主力だ。だから現時点での伊号や呂号型を通商破壊に回し、戦略決戦兵器としての潜水艦隊を創設するのだよ」
構想を聞かされた藤森康男潜水艦主務参謀は、実現可能かどうか、片山設計主任へ確認をとってみる。
「雷撃、または空爆可能な攻撃機を搭載して、4万海里航行できる大型潜水艦ですか?」
山本五十六の対アメリカ戦構想。
片山は潜水艦設計班長中村小四郎らと検討を重ね「実現可能」と返答した。
「可能?本当に?」
「その意味では、イギリスから買い受けた砲撃潜水艦の存在が助かります。アレを基礎として肉付けすればいいのですから」
あまりにも奇想天外な潜水艦。いや作戦か?
山本五十六は航空機には明るかったが、潜水艦については、その威力は理解していたものの、それ程詳しくはなく、ならばこそ荒唐無稽な作戦運用も発想出来たのではないか。
「私は黒島先任参謀の案だと思いますが」
「いや、私が報告した時に『実に面白い』と興味を示されていました。山本長官の発案に間違いないと思いますよ」
イギリスから砲撃潜水艦を買い受けたのは大正11年(1921)。その頃から山本の頭には特型潜水艦の構想があったのか。
とにかく、この時点で特殊戦略潜水艦隊の構想が始まる。
時に昭和10年(1935)、4月の事であった。
「そうだ。戦略砲撃潜水艦もだが、水偵ではなく、雷撃爆撃はもとより、ある程度の空戦性能を持つ艦載機を数機搭載出来る潜水艦だ」
イギリスから買い付けた砲撃潜水艦を精査し、実戦的使用レベルへ持っていこうとしていた会議の途中、山本五十六は別の大型潜水艦の構想を語り出したのだ。
潜水艦に搭載機を。この事自体はそれ程珍しい話ではない。実際、水上偵察機を搭載する伊号潜水艦は何隻も実働稼働している。
これもイギリスをはじめドイツやフランス等西欧諸国でも取り組まれ、消滅した事案である。イタリアでは実働した艦もあったのだが、この1隻でたち消え、イギリスやドイツは実用前に計画が頓挫している。
唯一運用を実現した日本海軍も、この水偵搭載艦の運用~というより水偵の扱いにかなり苦労はしていた。潜水艦に格納する為、小型かつ分解組立式の水偵でなくてはならず、発艦は勿論帰還時格納にかなり手間取り、場合によっては諦めなければならない。機体はより精密となり整備にも気を使う代物であり、西欧諸国が実用を諦めるのも軍略上当然とさえ言えたのだ。
砲撃潜水艦でさえ、製作当事者のイギリス海軍が実用不可と断じた兵器であり、だからこそ山本の構想は荒唐無稽と言えた。
「そのような特型を造らなくとも。そもそも潜水艦は通商破壊戦が最適と現場の艦長はもとより作戦参謀達も口を揃えて…」
「無論それが主力だ。だから現時点での伊号や呂号型を通商破壊に回し、戦略決戦兵器としての潜水艦隊を創設するのだよ」
構想を聞かされた藤森康男潜水艦主務参謀は、実現可能かどうか、片山設計主任へ確認をとってみる。
「雷撃、または空爆可能な攻撃機を搭載して、4万海里航行できる大型潜水艦ですか?」
山本五十六の対アメリカ戦構想。
片山は潜水艦設計班長中村小四郎らと検討を重ね「実現可能」と返答した。
「可能?本当に?」
「その意味では、イギリスから買い受けた砲撃潜水艦の存在が助かります。アレを基礎として肉付けすればいいのですから」
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イギリスから砲撃潜水艦を買い受けたのは大正11年(1921)。その頃から山本の頭には特型潜水艦の構想があったのか。
とにかく、この時点で特殊戦略潜水艦隊の構想が始まる。
時に昭和10年(1935)、4月の事であった。
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