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27. 勝負の行末

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 勝負の方法を聞いて、マーガレットは流石に反対した。

 勿論、1対1タイマンは論外なんだけど。文官然としているアルフォート殿下に対して、文武両道優れるジュスラン殿下とでは最早勝負になんてならない。
 もう「弱い者イジメ」としか思えないから。
 前世の祐介がスポーツ万能なら、また話も違ったかもしれないけど、高校入学直後から発症し寝たきり生活を送っていた彼が動ける筈も無い。発症前にしてもマンガ好きのインドア派で、アウトドア大好きな幼馴染の真里に連れ出されて泣きベソかいてる姿を思い出してしまう。

 ジュスラン殿下の提案は、国境近くの、モーガン辺境伯領内にある''と呼ばれる森での魔物討伐。貴族の道楽としての狩を楽しめる場所なので、確かに低ランクの魔物しか居ない森。まぁ魔法結界のお陰もあるけど。
 だから身の危険は無いと思う。

 だがしかし!

 討伐勝負は、どう考えてもアルフォート殿下に分が悪過ぎる。かと言って、あまりにもハンデが大きいと、天下万民に両殿下の格差を知らしめさせるだけの結果になる。
 カナック王国とウィルバーム王国では国力差が有り過ぎるけど、その意趣返しとさえ思える程のハンデに成りかねず。

 どっちに転んでも、ジュスラン殿下の株は上がる。カナック国民は歓喜に咽び、祝杯をあげるでしょうね。そしてアルフォート殿下は隣国王太子に惨めに敗北した、ウィルバーム王国を辱めた王族として国史に名を刻む。

 反対はした。
 でも当事者…、賞品とも呼べる立場の私は強く勝負の内容に口出し出来ない。アルフォート殿下もプライド、そして次期国王と言う立場から隣国王太子との勝負から逃げる訳にもいかず。

「あぁ。それでいい。絶対にマーガレットは渡さない」

 アルフォート殿下の強味は、王妃譲りの莫大な魔力と魔法レベル。確かに高位魔導師並の攻撃魔法をも行使出来る。
 でも、多分研究・学習の範囲でしか魔法を使った事無い筈。魔物に当てられるか、と言うより向かって来る魔物に落ち着いて対処出来るか?この根本的な部分に疑いの眼差を向けざるを得ない。

「あくまでも討伐数ですね?討伐魔物のランクではなくて」

 確認。
 コレ、とても重要。

 誰が見ても角兎ホーンラビット100羽より炎熊フレアベア1頭の方が凄いと思うし。尤も、此処迄差が付く程の魔物が生息してはいないんだ、この森。多く棲むのは兎種と狐種、それに小鳥種。

「そうです、マーガレット嬢。その方が、事は単純でしょう」

 確かに単純な話になる。
 魔法攻撃主力のアルフォート殿下に分の良い話に。

 益々、私は口を出せなくなる。

「分かりました。では一定時間に於いての討伐数を競う、それが勝負判定基準。それで宜しいですね?アルフォート殿下、ジュスラン殿下」

 両殿下が頷く。

「では、明後日。10の刻を持って勝負開始。期間を1時間とします。それで宜しいですね」

 今夜は、我が国を訪問された隣国王太子ジュスラン殿下の歓迎式典が、モルガン辺境領都ガナンシティで行われ、そのまま夜会となる。明日は二日酔いでしょうから。

「大丈夫かしら、アルフォート殿下」
「マーガレット様は、やはり婚約者たるお方の身を案じられますか」
「リサ?」
「申し訳ありません、お嬢様。少し野次馬が強うございました」

 笑みを隠しきれてないわ?リサ⁉︎

 でも、この心配は的中してしまう。

 結論から言う。
 アルフォート殿下は、悠長に呪文を唱えようとして鳥種魔物の速攻に怯え、後退りしたものの顔や腕に引っ掻き傷を負ってしまう。
 治癒呪文も必要無い程の擦り傷。
 でも、初めて魔物に襲われた殿下の心は簡単に折れてしまって…。


 また、この森には魔物だけではなく、さる令嬢の放った影が私を亡き者にしようと暗躍していた。
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