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14. カナック王国での邂逅
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「公爵令嬢は騎士団の追求から逃れたそうです。足取りは不明」
出国の可能性有り、か。
真に残念だが、先に婚約破棄を言い出したのが王太子なれば是非も無い。
「陛下。バルター公爵家への勅命違反は、内密の命でもあったという事で」
「そうさの。罰金で良かろう」
「御意。金5万程で」
「む、ちと安いが、まぁ、良かろう」
「御意」
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「いきなり過ぎよ、驚いたじゃない!リサ」
私達は、リサの旧友で、カナック王国のみならず、我が国にも名が伝わる賢者、シェリーの家へ転移していた。
「本当にごめんなさい。色々あってね」
「当たり前よ。何事もなく訪問されたらたまらないわ。フム、其方は?確かリサはバルター公爵家に仕えたと聞いてはいたけど」
口調は兎も角、物静かな佇まいで笑みを浮かべている彼女は、賢者らしくほぼ推測出来ているみたいで。
「突然の無礼なる訪問を、先ずは謝罪致します。私はマーガレット=バルター。その、事情があって国外へ移動中王国の追手があり…」
「転移で逃げた、と。貴女はウェルバーム王国王太子の元婚約者だったわね。うん、元が微妙なのか」
歳はリサとそれ程変わらない様なのに。
美しい金髪は、誰もが惜しいと思う程に肩口でバッサリと揃えられていて。それでもサラッと煌めくのが見えて。
蒼い眼も素敵…、アレ?彼女、右眼は蒼なのに左眼は黒?
でも、たおやかな笑みが私達を包んでくれるみたいで。
「全てをご存知なのですね」
「まさか。でも、まぁ、聞こえては来るのよ。固辞はしてるけど、王国は私を宮廷魔導師としている様だし」
「ちょっと、シェリー?あ、マーガレット様、紹介します。私の姉弟子でもあり、この大陸でも有数の賢者のシェリーです」
姉弟子?成る程。
それに、カナック王国宮廷魔導師なのね。
「ようこそ、この様な辺鄙な場へ。此処はカナック王国辺境の街ダゲンボート。我が国への訪問を歓迎致しますわ、バルター公爵令嬢殿。それにしても、今日は珍しいお客様がいっぱいね」
「シェリー?どういう事?」
「もう1人、珍しい、やんごとなきお方が来てるの。まぁ、今、ちょっと裏の滝で修行中だけど。そうだわ。其処の方、令嬢護衛の騎士よね。少し手伝って貰えないかしら」
カールがコチラを見る。
断れそうもないわ。私は頷く。
「分かりました。で、何をすれば」
「付いて来て」
彼女の家は河の辺りにあって、やや遠くから水の騒めきが聞こえてくる。
裏の滝…。
そう言えば、裏手には山が聳えて…、それ程高く、急な崖と言う程では無いにしても…。
それ程落差は無い。
その滝を相手に剣を振るう、私とそれ程変わらない位の少年がいた。
…上半身裸。下も腿の辺りまで水に浸かっているし、動く為、腰までびしょ濡れ。黒い衣類だから透けてはいないけど…。
眼のやり場に困る。
「申し訳ありません、殿下。今し方、別の来客が有りまして」
は?殿下?
今、殿下って言った?
まさか?
「あぁ、済まない。私は不意な、予定外の客だろうから、其方を優先してくれ、シェリー」
茶髪黒目の、少しヤンチャ風。
でも、とても鍛えられた身体は見惚れる程美しいって思った。
カナック王国王太子ジュスラン=カナック。
ゲームの裏のルート、闇堕聖女編では隣国からの救援として闇堕聖女に立ち塞がる強敵。そして悪役令嬢マーガレットの最後の味方…。
こんな形で出会うなんて…。
出国の可能性有り、か。
真に残念だが、先に婚約破棄を言い出したのが王太子なれば是非も無い。
「陛下。バルター公爵家への勅命違反は、内密の命でもあったという事で」
「そうさの。罰金で良かろう」
「御意。金5万程で」
「む、ちと安いが、まぁ、良かろう」
「御意」
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「いきなり過ぎよ、驚いたじゃない!リサ」
私達は、リサの旧友で、カナック王国のみならず、我が国にも名が伝わる賢者、シェリーの家へ転移していた。
「本当にごめんなさい。色々あってね」
「当たり前よ。何事もなく訪問されたらたまらないわ。フム、其方は?確かリサはバルター公爵家に仕えたと聞いてはいたけど」
口調は兎も角、物静かな佇まいで笑みを浮かべている彼女は、賢者らしくほぼ推測出来ているみたいで。
「突然の無礼なる訪問を、先ずは謝罪致します。私はマーガレット=バルター。その、事情があって国外へ移動中王国の追手があり…」
「転移で逃げた、と。貴女はウェルバーム王国王太子の元婚約者だったわね。うん、元が微妙なのか」
歳はリサとそれ程変わらない様なのに。
美しい金髪は、誰もが惜しいと思う程に肩口でバッサリと揃えられていて。それでもサラッと煌めくのが見えて。
蒼い眼も素敵…、アレ?彼女、右眼は蒼なのに左眼は黒?
でも、たおやかな笑みが私達を包んでくれるみたいで。
「全てをご存知なのですね」
「まさか。でも、まぁ、聞こえては来るのよ。固辞はしてるけど、王国は私を宮廷魔導師としている様だし」
「ちょっと、シェリー?あ、マーガレット様、紹介します。私の姉弟子でもあり、この大陸でも有数の賢者のシェリーです」
姉弟子?成る程。
それに、カナック王国宮廷魔導師なのね。
「ようこそ、この様な辺鄙な場へ。此処はカナック王国辺境の街ダゲンボート。我が国への訪問を歓迎致しますわ、バルター公爵令嬢殿。それにしても、今日は珍しいお客様がいっぱいね」
「シェリー?どういう事?」
「もう1人、珍しい、やんごとなきお方が来てるの。まぁ、今、ちょっと裏の滝で修行中だけど。そうだわ。其処の方、令嬢護衛の騎士よね。少し手伝って貰えないかしら」
カールがコチラを見る。
断れそうもないわ。私は頷く。
「分かりました。で、何をすれば」
「付いて来て」
彼女の家は河の辺りにあって、やや遠くから水の騒めきが聞こえてくる。
裏の滝…。
そう言えば、裏手には山が聳えて…、それ程高く、急な崖と言う程では無いにしても…。
それ程落差は無い。
その滝を相手に剣を振るう、私とそれ程変わらない位の少年がいた。
…上半身裸。下も腿の辺りまで水に浸かっているし、動く為、腰までびしょ濡れ。黒い衣類だから透けてはいないけど…。
眼のやり場に困る。
「申し訳ありません、殿下。今し方、別の来客が有りまして」
は?殿下?
今、殿下って言った?
まさか?
「あぁ、済まない。私は不意な、予定外の客だろうから、其方を優先してくれ、シェリー」
茶髪黒目の、少しヤンチャ風。
でも、とても鍛えられた身体は見惚れる程美しいって思った。
カナック王国王太子ジュスラン=カナック。
ゲームの裏のルート、闇堕聖女編では隣国からの救援として闇堕聖女に立ち塞がる強敵。そして悪役令嬢マーガレットの最後の味方…。
こんな形で出会うなんて…。
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