13 / 30
13. 脱出!
しおりを挟む
『勅命!マーガレット様を連れ戻せ‼︎ 』
依頼を達成し、私達はケイヴンズバーグのギルド内酒場で軽食をとっていたんだけど、突然リサの飲むお茶の水面が煌めくと、物騒な文字が並んだのでした。
「コレって」
「勿論、王都のメイド長からの緊急通信だと」
「…勅命?」
「そりゃ『婚約破棄』が無効ならお嬢様はまだ」
そう。私は王太子殿下の婚約者のままだ。
国外へ出る処か冒険者稼業すら言語道断な身だ。
「多分国境に検問出来てると思いますよ」
「それを突破するとなると?」
「俺とリサは国家反逆罪っすね」
それは拙い。
しかも本人だけに適用される訳がない。カールやリサの親兄弟迄が対象とされてしまう大罪。
「此処迄来て、帰るしか無いの?」
「はぁ~、その、実はまだ手は有ります」
「それって『転移呪文』?でも発動には起点と終点が必要だったんじゃ?」
「そうですね。実はカナック王国の辺境、ダゲンボートに旧友がいまして、彼女の家に転移拠点が有ります。大峡谷迄行ければギリギリ転移範囲内です。ですが」
「こうなると大峡谷まで行くのも至難の業かもしれませんね」
無論、王都からの追手に追いつかれる事はないでしょうね。でも国境警備隊が大峡谷で待ち受けてる事はありそう。
そして、抵抗 = 反逆罪。
分が悪過ぎるわ。
「でも手は無いし、上手くいけば儲け物」
カールやリサに罪を負わす訳にはいかない。だから国境警備隊に遭った時点で断念する。
「方々に迷惑をかけてまで我を通すつもりはないから」
「わかりました」
「ま、やるだけやってみるさ」
ここで思い出し笑い。
私は必ずしも国外脱出を考えていた訳じゃない。
何せ、ウェルバーム王国は大陸の半分をも占める国土を持つ世界でも有数の大国。国内を回るだけでも充分冒険は出来る。
一度は破棄された婚約。多少、コッチの都合を言っても、そう罰当たりとは思えないから。
私達はひょんなことから大峡谷に生息するゴルマジカ狩猟の依頼を受ける事になった。
峡谷…の切り立った崖部分に巣を作るゴルマジカは魔物というより動物って言った方がいい程の相手。狩る事自体は然程難しいわけじゃない。けど、とにかく切り立った崖に巣を作る為、必然的にコッチも崖によじ登る形で狩猟しなくちゃならないから、一歩間違うと真っ逆様と言う中々スリリングなモノになる。
厳しいから、安全の為に遠距離魔法攻撃。
何とか数匹確保。
依頼主の、峡谷別荘地にある、とある酒場へ。
ゴルマジカは臭みの無いあっさり系の、やや赤身の強い肉。どんなソースにも合うので料理人の腕の奮いどころ。
せっかくなので、そのお肉の料理を頼んでみる。
美味しい!
魔物肉なんて中々食卓に上がらないから。
「失礼、マーガレット=バルター様で」
「そうだけど、貴方は?」
「お迎えにあがりました。私は王国近衛騎士団第4師団副長の騎士ザイデル=ブラッドであります」
遭ってしまった…。
こうなると、もう仕方ないか。
「わかりました。でも食事と多少の身支度の時間は戴けないでしょうか?」
「それは…、やむを得ませんな。では後程」
騎士ブラッドは酒場を出ていく。
「ここまでかぁ。残念だけど…」
「ザイデル卿には申し訳ないですが、マーガレット様、それにカール。私の手を握って下さい」
コッソリと唱え始めた呪文。
「よし、完全に外へ出たわね。行きます!『ワープ』」
リサは高ランクだけあって無詠唱に近い形でも魔法を発動出来る。普段はメイド服なのも相まって、おそらく私達を迎えに来た騎士には、私の護衛として騎士が1人と身の回りの世話メイド1名と言われてきたんだろうって。
どうしても発動時にフラッシュとも言える程輝く『転移呪文』。その光は酒場の窓から屋外にいても分かる程煌めいていた。
「な、しまった!魔導師もいたのか‼︎」
「な、おい!食い逃げ‼︎」
「お代は卓に置いてるから!」
リサ?貴女は⁉︎犯罪者になるかもしれないのに。
煌めきが消え、私達は隣国の街ダゲンボートの住宅へと転移していた。
依頼を達成し、私達はケイヴンズバーグのギルド内酒場で軽食をとっていたんだけど、突然リサの飲むお茶の水面が煌めくと、物騒な文字が並んだのでした。
「コレって」
「勿論、王都のメイド長からの緊急通信だと」
「…勅命?」
「そりゃ『婚約破棄』が無効ならお嬢様はまだ」
そう。私は王太子殿下の婚約者のままだ。
国外へ出る処か冒険者稼業すら言語道断な身だ。
「多分国境に検問出来てると思いますよ」
「それを突破するとなると?」
「俺とリサは国家反逆罪っすね」
それは拙い。
しかも本人だけに適用される訳がない。カールやリサの親兄弟迄が対象とされてしまう大罪。
「此処迄来て、帰るしか無いの?」
「はぁ~、その、実はまだ手は有ります」
「それって『転移呪文』?でも発動には起点と終点が必要だったんじゃ?」
「そうですね。実はカナック王国の辺境、ダゲンボートに旧友がいまして、彼女の家に転移拠点が有ります。大峡谷迄行ければギリギリ転移範囲内です。ですが」
「こうなると大峡谷まで行くのも至難の業かもしれませんね」
無論、王都からの追手に追いつかれる事はないでしょうね。でも国境警備隊が大峡谷で待ち受けてる事はありそう。
そして、抵抗 = 反逆罪。
分が悪過ぎるわ。
「でも手は無いし、上手くいけば儲け物」
カールやリサに罪を負わす訳にはいかない。だから国境警備隊に遭った時点で断念する。
「方々に迷惑をかけてまで我を通すつもりはないから」
「わかりました」
「ま、やるだけやってみるさ」
ここで思い出し笑い。
私は必ずしも国外脱出を考えていた訳じゃない。
何せ、ウェルバーム王国は大陸の半分をも占める国土を持つ世界でも有数の大国。国内を回るだけでも充分冒険は出来る。
一度は破棄された婚約。多少、コッチの都合を言っても、そう罰当たりとは思えないから。
私達はひょんなことから大峡谷に生息するゴルマジカ狩猟の依頼を受ける事になった。
峡谷…の切り立った崖部分に巣を作るゴルマジカは魔物というより動物って言った方がいい程の相手。狩る事自体は然程難しいわけじゃない。けど、とにかく切り立った崖に巣を作る為、必然的にコッチも崖によじ登る形で狩猟しなくちゃならないから、一歩間違うと真っ逆様と言う中々スリリングなモノになる。
厳しいから、安全の為に遠距離魔法攻撃。
何とか数匹確保。
依頼主の、峡谷別荘地にある、とある酒場へ。
ゴルマジカは臭みの無いあっさり系の、やや赤身の強い肉。どんなソースにも合うので料理人の腕の奮いどころ。
せっかくなので、そのお肉の料理を頼んでみる。
美味しい!
魔物肉なんて中々食卓に上がらないから。
「失礼、マーガレット=バルター様で」
「そうだけど、貴方は?」
「お迎えにあがりました。私は王国近衛騎士団第4師団副長の騎士ザイデル=ブラッドであります」
遭ってしまった…。
こうなると、もう仕方ないか。
「わかりました。でも食事と多少の身支度の時間は戴けないでしょうか?」
「それは…、やむを得ませんな。では後程」
騎士ブラッドは酒場を出ていく。
「ここまでかぁ。残念だけど…」
「ザイデル卿には申し訳ないですが、マーガレット様、それにカール。私の手を握って下さい」
コッソリと唱え始めた呪文。
「よし、完全に外へ出たわね。行きます!『ワープ』」
リサは高ランクだけあって無詠唱に近い形でも魔法を発動出来る。普段はメイド服なのも相まって、おそらく私達を迎えに来た騎士には、私の護衛として騎士が1人と身の回りの世話メイド1名と言われてきたんだろうって。
どうしても発動時にフラッシュとも言える程輝く『転移呪文』。その光は酒場の窓から屋外にいても分かる程煌めいていた。
「な、しまった!魔導師もいたのか‼︎」
「な、おい!食い逃げ‼︎」
「お代は卓に置いてるから!」
リサ?貴女は⁉︎犯罪者になるかもしれないのに。
煌めきが消え、私達は隣国の街ダゲンボートの住宅へと転移していた。
1
お気に入りに追加
263
あなたにおすすめの小説
正直な悪役令嬢は婚約破棄を応援しています~殿下、ヒロインさんを見てあげてください!私を溺愛している場合じゃありません!
伊賀海栗
恋愛
ある日、自分が転生者であり、ここが前世の愛読書であるロマンス小説「壁キス」の世界であると気づいたエメリナ。
エメリナとは「壁キス」において王太子アーサーの婚約者であり、彼と恋仲になったヒロインを苛め、追放される役どころ。いわゆる悪役令嬢である。
「というわけでアーサー様。私は今朝、前世の記憶が蘇りました」
前世では教職に就き、正直は美徳であると教えていた彼女は即座に殿下に告白する。
「一体、何の話をしているのか……」
さすが前世の推しであり、記憶を取り戻す前から大好きだった殿下である。困惑していても顔がいい。
「なんやかんやあって追放されるのですが、国外追放ではなく国内の修道院を所望します」
そう言ってヒロインとアーサー殿下が学内で出会うのを見ていたエメリナであったが。
――あれ、原作通りに二人が惹かれあっていきませんよ?
――ヒロインを虐めているはずなのに懐かれていきますよ?
――アーサー様が私にぐいぐい迫ってくるんですけど!?
原作と乖離していく恋愛模様に困惑するエメリナ。だが、原作のストーリーである反王家デモは勢いを増していき……。
★小説家になろうにも掲載しています
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
悪役令嬢より取り巻き令嬢の方が問題あると思います
蓮
恋愛
両親と死別し、孤児院暮らしの平民だったシャーリーはクリフォード男爵家の養女として引き取られた。丁度その頃市井では男爵家など貴族に引き取られた少女が王子や公爵令息など、高貴な身分の男性と恋に落ちて幸せになる小説が流行っていた。シャーリーは自分もそうなるのではないかとつい夢見てしまう。しかし、夜会でコンプトン侯爵令嬢ベアトリスと出会う。シャーリーはベアトリスにマナーや所作など色々と注意されてしまう。シャーリーは彼女を小説に出て来る悪役令嬢みたいだと思った。しかし、それが違うということにシャーリーはすぐに気付く。ベアトリスはシャーリーが嘲笑の的にならないようマナーや所作を教えてくれていたのだ。
(あれ? ベアトリス様って実はもしかして良い人?)
シャーリーはそう思い、ベアトリスと交流を深めることにしてみた。
しかしそんな中、シャーリーはあるベアトリスの取り巻きであるチェスター伯爵令嬢カレンからネチネチと嫌味を言われるようになる。カレンは平民だったシャーリーを気に入らないらしい。更に、他の令嬢への嫌がらせの罪をベアトリスに着せて彼女を社交界から追放しようともしていた。彼女はベアトリスも気に入らないらしい。それに気付いたシャーリーは怒り狂う。
「私に色々良くしてくださったベアトリス様に冤罪をかけようとするなんて許せない!」
シャーリーは仲良くなったテヴァルー子爵令息ヴィンセント、ベアトリスの婚約者であるモールバラ公爵令息アイザック、ベアトリスの弟であるキースと共に、ベアトリスを救う計画を立て始めた。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
ジャンルは恋愛メインではありませんが、アルファポリスでは当てはまるジャンルが恋愛しかありませんでした。
【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。
yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~)
パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。
この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。
しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。
もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。
「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。
「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」
そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。
竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。
後半、シリアス風味のハピエン。
3章からルート分岐します。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。
https://waifulabs.com/
【完結済】悪役になりきれなかったので、そろそろ引退したいと思います。
木嶋うめ香
恋愛
私、突然思い出しました。
前世は日本という国に住む高校生だったのです。
現在の私、乙女ゲームの世界に転生し、お先真っ暗な人生しかないなんて。
いっそ、悪役として散ってみましょうか?
悲劇のヒロイン気分な主人公を目指して書いております。
以前他サイトに掲載していたものに加筆しました。
サクッと読んでいただける内容です。
マリア→マリアーナに変更しました。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。
転生悪役令嬢は婚約破棄で逆ハーに?!
アイリス
恋愛
公爵令嬢ブリジットは、ある日突然王太子に婚約破棄を言い渡された。
その瞬間、ここが前世でプレイした乙女ゲームの世界で、自分が火あぶりになる運命の悪役令嬢だと気付く。
絶対火あぶりは回避します!
そのためには地味に田舎に引きこもって……って、どうして攻略対象が次々に求婚しに来るの?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる