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13. 脱出!
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『勅命!マーガレット様を連れ戻せ‼︎ 』
依頼を達成し、私達はケイヴンズバーグのギルド内酒場で軽食をとっていたんだけど、突然リサの飲むお茶の水面が煌めくと、物騒な文字が並んだのでした。
「コレって」
「勿論、王都のメイド長からの緊急通信だと」
「…勅命?」
「そりゃ『婚約破棄』が無効ならお嬢様はまだ」
そう。私は王太子殿下の婚約者のままだ。
国外へ出る処か冒険者稼業すら言語道断な身だ。
「多分国境に検問出来てると思いますよ」
「それを突破するとなると?」
「俺とリサは国家反逆罪っすね」
それは拙い。
しかも本人だけに適用される訳がない。カールやリサの親兄弟迄が対象とされてしまう大罪。
「此処迄来て、帰るしか無いの?」
「はぁ~、その、実はまだ手は有ります」
「それって『転移呪文』?でも発動には起点と終点が必要だったんじゃ?」
「そうですね。実はカナック王国の辺境、ダゲンボートに旧友がいまして、彼女の家に転移拠点が有ります。大峡谷迄行ければギリギリ転移範囲内です。ですが」
「こうなると大峡谷まで行くのも至難の業かもしれませんね」
無論、王都からの追手に追いつかれる事はないでしょうね。でも国境警備隊が大峡谷で待ち受けてる事はありそう。
そして、抵抗 = 反逆罪。
分が悪過ぎるわ。
「でも手は無いし、上手くいけば儲け物」
カールやリサに罪を負わす訳にはいかない。だから国境警備隊に遭った時点で断念する。
「方々に迷惑をかけてまで我を通すつもりはないから」
「わかりました」
「ま、やるだけやってみるさ」
ここで思い出し笑い。
私は必ずしも国外脱出を考えていた訳じゃない。
何せ、ウェルバーム王国は大陸の半分をも占める国土を持つ世界でも有数の大国。国内を回るだけでも充分冒険は出来る。
一度は破棄された婚約。多少、コッチの都合を言っても、そう罰当たりとは思えないから。
私達はひょんなことから大峡谷に生息するゴルマジカ狩猟の依頼を受ける事になった。
峡谷…の切り立った崖部分に巣を作るゴルマジカは魔物というより動物って言った方がいい程の相手。狩る事自体は然程難しいわけじゃない。けど、とにかく切り立った崖に巣を作る為、必然的にコッチも崖によじ登る形で狩猟しなくちゃならないから、一歩間違うと真っ逆様と言う中々スリリングなモノになる。
厳しいから、安全の為に遠距離魔法攻撃。
何とか数匹確保。
依頼主の、峡谷別荘地にある、とある酒場へ。
ゴルマジカは臭みの無いあっさり系の、やや赤身の強い肉。どんなソースにも合うので料理人の腕の奮いどころ。
せっかくなので、そのお肉の料理を頼んでみる。
美味しい!
魔物肉なんて中々食卓に上がらないから。
「失礼、マーガレット=バルター様で」
「そうだけど、貴方は?」
「お迎えにあがりました。私は王国近衛騎士団第4師団副長の騎士ザイデル=ブラッドであります」
遭ってしまった…。
こうなると、もう仕方ないか。
「わかりました。でも食事と多少の身支度の時間は戴けないでしょうか?」
「それは…、やむを得ませんな。では後程」
騎士ブラッドは酒場を出ていく。
「ここまでかぁ。残念だけど…」
「ザイデル卿には申し訳ないですが、マーガレット様、それにカール。私の手を握って下さい」
コッソリと唱え始めた呪文。
「よし、完全に外へ出たわね。行きます!『ワープ』」
リサは高ランクだけあって無詠唱に近い形でも魔法を発動出来る。普段はメイド服なのも相まって、おそらく私達を迎えに来た騎士には、私の護衛として騎士が1人と身の回りの世話メイド1名と言われてきたんだろうって。
どうしても発動時にフラッシュとも言える程輝く『転移呪文』。その光は酒場の窓から屋外にいても分かる程煌めいていた。
「な、しまった!魔導師もいたのか‼︎」
「な、おい!食い逃げ‼︎」
「お代は卓に置いてるから!」
リサ?貴女は⁉︎犯罪者になるかもしれないのに。
煌めきが消え、私達は隣国の街ダゲンボートの住宅へと転移していた。
依頼を達成し、私達はケイヴンズバーグのギルド内酒場で軽食をとっていたんだけど、突然リサの飲むお茶の水面が煌めくと、物騒な文字が並んだのでした。
「コレって」
「勿論、王都のメイド長からの緊急通信だと」
「…勅命?」
「そりゃ『婚約破棄』が無効ならお嬢様はまだ」
そう。私は王太子殿下の婚約者のままだ。
国外へ出る処か冒険者稼業すら言語道断な身だ。
「多分国境に検問出来てると思いますよ」
「それを突破するとなると?」
「俺とリサは国家反逆罪っすね」
それは拙い。
しかも本人だけに適用される訳がない。カールやリサの親兄弟迄が対象とされてしまう大罪。
「此処迄来て、帰るしか無いの?」
「はぁ~、その、実はまだ手は有ります」
「それって『転移呪文』?でも発動には起点と終点が必要だったんじゃ?」
「そうですね。実はカナック王国の辺境、ダゲンボートに旧友がいまして、彼女の家に転移拠点が有ります。大峡谷迄行ければギリギリ転移範囲内です。ですが」
「こうなると大峡谷まで行くのも至難の業かもしれませんね」
無論、王都からの追手に追いつかれる事はないでしょうね。でも国境警備隊が大峡谷で待ち受けてる事はありそう。
そして、抵抗 = 反逆罪。
分が悪過ぎるわ。
「でも手は無いし、上手くいけば儲け物」
カールやリサに罪を負わす訳にはいかない。だから国境警備隊に遭った時点で断念する。
「方々に迷惑をかけてまで我を通すつもりはないから」
「わかりました」
「ま、やるだけやってみるさ」
ここで思い出し笑い。
私は必ずしも国外脱出を考えていた訳じゃない。
何せ、ウェルバーム王国は大陸の半分をも占める国土を持つ世界でも有数の大国。国内を回るだけでも充分冒険は出来る。
一度は破棄された婚約。多少、コッチの都合を言っても、そう罰当たりとは思えないから。
私達はひょんなことから大峡谷に生息するゴルマジカ狩猟の依頼を受ける事になった。
峡谷…の切り立った崖部分に巣を作るゴルマジカは魔物というより動物って言った方がいい程の相手。狩る事自体は然程難しいわけじゃない。けど、とにかく切り立った崖に巣を作る為、必然的にコッチも崖によじ登る形で狩猟しなくちゃならないから、一歩間違うと真っ逆様と言う中々スリリングなモノになる。
厳しいから、安全の為に遠距離魔法攻撃。
何とか数匹確保。
依頼主の、峡谷別荘地にある、とある酒場へ。
ゴルマジカは臭みの無いあっさり系の、やや赤身の強い肉。どんなソースにも合うので料理人の腕の奮いどころ。
せっかくなので、そのお肉の料理を頼んでみる。
美味しい!
魔物肉なんて中々食卓に上がらないから。
「失礼、マーガレット=バルター様で」
「そうだけど、貴方は?」
「お迎えにあがりました。私は王国近衛騎士団第4師団副長の騎士ザイデル=ブラッドであります」
遭ってしまった…。
こうなると、もう仕方ないか。
「わかりました。でも食事と多少の身支度の時間は戴けないでしょうか?」
「それは…、やむを得ませんな。では後程」
騎士ブラッドは酒場を出ていく。
「ここまでかぁ。残念だけど…」
「ザイデル卿には申し訳ないですが、マーガレット様、それにカール。私の手を握って下さい」
コッソリと唱え始めた呪文。
「よし、完全に外へ出たわね。行きます!『ワープ』」
リサは高ランクだけあって無詠唱に近い形でも魔法を発動出来る。普段はメイド服なのも相まって、おそらく私達を迎えに来た騎士には、私の護衛として騎士が1人と身の回りの世話メイド1名と言われてきたんだろうって。
どうしても発動時にフラッシュとも言える程輝く『転移呪文』。その光は酒場の窓から屋外にいても分かる程煌めいていた。
「な、しまった!魔導師もいたのか‼︎」
「な、おい!食い逃げ‼︎」
「お代は卓に置いてるから!」
リサ?貴女は⁉︎犯罪者になるかもしれないのに。
煌めきが消え、私達は隣国の街ダゲンボートの住宅へと転移していた。
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