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8. 初依頼!初冒険‼︎

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「出奔…。王都を出るだけなのか、王国からも出て行くのか。兎に角動向を探れ」


 奇しくも、2箇所で同じ命令が出されたそうです。勿論、探られる当事者たるマーガレットが知る由もありませんが。

 一方は某男爵家。
 一方は何処ぞの次期国王アホ坊

 大事なので、もう一度言います。
 私はこの時は勿論、後日に至っても知る由はありません。探られている事等思いもよらないまま、私達は一路辺境の街ケイヴンズバーグを目指します。

「依頼の後、大峡谷グランドキャニオン方面でいいんだよな」
「そのつもりよ。でもケースバイケースね。場合によってはカナックへ足を伸ばすのも有りだと思うし」
「はい?何でまた」
「カナック王国に何か用が?」
「全然。でも国外って言うよりこの大陸の玄関口ですもの。海を渡るのも一興でしょ」
「マジかよ」

 それ位、当ての無い、な~んも考えてない旅立ちだったのです。カールとリサには傍迷惑な話で本当に申し訳ないのだけど。

「お館様、泣くかもよ」
「まぁ、手紙位出すわよ」
「それ、事後報告ですよね」
「当然」

 許可取ろうものなら、大騒ぎで迎えに来て、連れ戻されるでしょうから。あのお父様ならやりかねません。

「やれやれ」
「ふふ、ここまできたら一連托生。冒険者が素敵な仕事だと言っている事、やっと正しいって証明できるわね」

 ホント、リサには冒険者の楽しい日常、色々聞かされたなぁ。いよいよ実感出来るんだ。

「で、マーガレットに伝えるけど」

 私達は今、王都ギルドの酒場で軽く食事中。
 リサが飲んでるお茶のカップ、水面に映る文字が…。

『婚約破棄同意を、国王陛下が認めず』

「当事者の私と殿下が同意して、私の両親公爵家も同意したのに?」
「陛下はマーガレットを手離したくないみたい」
「これは…グズグズしてらんないわ」

 食事を早々に切り上げると、お使いの品を受け取る為に、商店街の外れにある問屋へ。

「コイツだけど、よろしくお願いします」
「確かに承りました。リサ」
「はい、では『格納』」
 空間属性格納魔法ストレージボックスに収納してもらう。使用魔力は大した事ないのだけど、空間属性魔法の使い手は意外に少ないんだ。

「なるべく早くお願いします」
「わかりました」

 出稼ぎに来ている娘さんが、初給金で親へ贈り物をする。何て素敵。
 指定の期日まで、普通に徒歩でも問題ない。そんな低ランクの依頼。

 ココから、私の冒険者稼業が始まるんだ。


 3日目までは何のトラブルもなかった。

 でも4日目。
 私達は足止めをくっている。

「お手上げだなぁ」
 先日、ここバクール地方では広域に流れるバクール川が上流部の大雨の為、水嵩がとてつもなく増した。
 結果、街道にかかる橋が流されてしまった。

 現状水嵩が高く流れも早い。
 橋を掛ける工事など自然を知らぬ無知だと言われそうな状況。

 この地の領主はゾンバルト子爵で、代官として騎士ブライスが街道筋や近隣の村をみているみたいだけど、子爵も代官も、これ程の流れの川で工事を督促する様な愚者では流石になくて。

「水が引くのは、まだ数日かかりそうです」
「これは間に合わない可能性が出て来ましたね」
「困ったわね」 
「やむを得ないですね」

 多少目立つのは仕方ない。

 私達はリサの空間属性移動呪文テレポートを使い川を渡った。

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

『件の冒険者はバクール川を渡った』

「王都は離れたって事ね。それと、…未確定乍ら国外…大陸をも離れる可能性有り?まさか」

 あの女マーガレットは此方の動きを予測してるって言うの?
 国王陛下が認めない以上、婚約破棄が通るとは限らない。となると、あの女がなくならない限り私の存在は認められないという事。

「何処までも目の上のコブね」

 私は王妃に、国母になるのだから…。

 
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