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「あぁ、銀獅子。私は攻略しに来たのではないよ。ククク、そう、只力を渡しに来ただけ…。へ、へへへへ。さぁ、迷宮核晶石ダンジョン・コアよ!我が血肉、魔力を得て力を増大在らしめよ‼︎そして、この地を!この地に連なる憎き2国を‼︎ベルン王国とグランザイア帝国に災いを為すが良い。…あの人を…、母とも思えたあの人を殺した報いを受けろぉ‼︎そしてこの腕の、不遇となった脚の…我身の恨みをはらせ!」

 シルバーレオの前に立つ愚かな男。
 己が生命を迷宮核晶石ダンジョン・コアへ注ぎ込むとは?
 今更彼奴如きの魔力で我が力が上がる事もないのだがな。

 まぁ、良い。
 人が何をしようと我の預かり知らぬ事だ。

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 ベルン王国側国境付近。交易街フランダルト。   

 元ミリシア王国とグランザイア帝国との国境線にある中規模の街は、数少ない帝国交易の拠点として栄える商人の街…だとか。

 元のミリシア王国はベルンと帝国に2分割された。国境線も新しくなった訳だが、この地は元々帝国との国境だったらしい。

「何処の世界でも商人ってのは逞しいワケだ」

 確かにミリシアとグランザイア帝国には国交があった。ベルン王国ですら帝国と儀礼的やり取りは行っており、商人レベルでは交易も禁止はされていない。許可制の上、かなり高い税が課せられてはいるらしいが。

「最近、交戦状態だったとは思えんな」
「戦争も交易も、ある意味経済活動よ。王や大臣官僚が近視眼的価値観じゃ無いって喜ばしい事だわ」
「確かにのう。しかもこの街は特例免税措置がとられておる様じゃ」
「特例?」
「ミリシア時代は国交有りでの交易じゃ。ベルンに編入されたからでいきなり関税かけられては商人達の一揆が起こるわい」
「らしいな。が2年後にゃ税がかかる事が通知されている。ハンス殿下もだが、王国為政者は真っ当、かつ現実的な政策統治を行ってるよ。ハハッ、ゲーム中では、その国の内情政治なんて気にもしなかったんだけどねー」

 国境線近くの街にしては、街防護壁も対人用というよりは魔物防御寄りの様だ。つまり、この街はグランザイア帝国からの侵攻を考えなくて良い存在だったんだ。
 だからか。此処には商人の街特有の活気が、威勢の良い呼び込みの声が繁華街に飛び交っている。昼間でもコレなら、夕刻から夜半へはまた違う呼び込みが鳴り響きそうだな。

「マーズ?」
「帝国側冒険者と会うのは明日、現地でだ。今夜は此処で英気を養ってもバチは当たらんよ」
「ソイツはいいや。確か此処にはカジノもあったなぁ」
「ハメを外し過ぎるなよ、マーキュリー」
「俺はハメる方の人間だよ」
「なら、私は教会で一稼ぎしようかな」
「稼ぐ程か?あれ、小銭稼ぎにもならないやろ」
「趣味と実益兼ねてんのよ」
「儂は古書店でも覗いてみようかの」
「で、プルートは?」
「盾を手入れして寝る」
「そう言うマーズは?」
「此処の領主に会う必要があってね。コレでも王太子殿下からの依頼で来てるんだからな、俺達」
「よろ~」

 このままバラける。
 ま、せっかくの繁華街だ。この辺の屋台でいい匂いさせてる串焼を摘んでも…。どれ、オバちゃんのおススメを頬張ってみるか。

 うん、美味い。

 魔物暴走スタンピードから守らねばな。
 この街の活気、民の活力。
 失う等有ってはならない。

 それを護る力を、俺達は持っているのだから。

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 帝国側国境付近。
 クルタイ平原が拡がる中継地にして宿場街のドリステアード。

 モルド辺境伯の領都ヒルズバーグから、それ程離れていない宿場街は、クルタイ平原及びドリガナ迷宮冒険の拠点として成り立ってる。

 ココで、オレ達はヒルズバーグに拠点を置く異世界人エトランゼの冒険者、ハヤトさんとヒカリさん~『光速』と合流した。

「ご無沙汰です、ヒカリさん!ハヤトさん」
「ホント。あ、もう伯爵様よね。ご尊顔を…」
「分かっててやってるよね、それ。ヒカリさん、実は性格悪い⁉︎」
「ちょ…、ね、ハヤトも頷かない!」

 爆笑の再会。
 で、初対面の『地上の刄』と自己紹介。

「お噂はかねがね。俺達はハヤトとヒカリ。元『光速』」
「元?」
「召喚時にケンタを失ったので」
「あぁ」

 転生を選んだケンタさんは、魔物のいる森に赤子で転生し、即喰われたって聞いた。

 少年ガキの姿で、尚且つ魔物と戦える力や道具を持った形で転生したオレと違って…。
 カミーユん時もだけど、あの女神の加護をもらえたオレ達だけが真っ当な異世界転生出来た。

 召喚ならば問題無し。
 でも転生だと…。

 あの男性神は召喚という形でしか、このゲーム世界レムルに地球から送り込めないんだろう。ならば何故転生の形もとれる様になってたんだ?神でなくても、この結果は簡単に想像出来る。
 多分、女神は、女神だけが生命の重さ、在り方をわかっていたんだと思う。

 納得はした。
 絶対に許せない!

 男性神アイツがオレ達に何をやらせたいのか?確かめる術はもう無いかもしれないけど。

 いつか、ぶん殴って聞き出してやる‼︎

「ロディ」
「…あ、うん。何?アリス」

 肩に留まっているハイ・ピクシーアリスが不安気にオレを見ている。やべ。思い詰めてたか?

「怖い顔、してる」
「ごめん。ちょい考え事。でもいいや」
「銀獅子は格上の強敵。でも私達はロディと共にいる」
「あぁ。大丈夫さ。アリス達と一緒のオレは無敵だよ」

 せっかく得た従魔。
 特にアリスは、カミーユとは違う意味で生涯の相棒パートナーって思えるし。


「明日、迷宮前で、現地で『地上の星』と合流する事になってるから」

 ヒカリさんと打ち合わせ。

 いよいよ、再会…。
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