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事後、そして…
63.
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「リリアちゃんは大人気受付嬢なんだよね。このエラム・ギルドのレベル?ランク?帝国内でもTOPクラスなんだよ、元々。『裁きの刄』とか異世界人だけが高ランクじゃないんだ。今期の若手、D昇格判定もらったのが5人いたんだぜ。まぁ、1人実はA詐欺レベルってのが混ざってたがなぁ」
ホント。最近、若いのは有望株がウヨウヨだ。
俺もギルドで教官らしき事やって10数年なんだけどよ。笑いが止まんねー程の大豊作なんだぜ。
その中でも、半年弱でAになった規格外。まぁ、生まれも育ちも規格外なんだけどさ。最弱職って常識を破壊しまくった上にお貴族様だって言うんだから。
戦争でも大活躍で陞爵し、とうとう伯爵様だと。
で、ミリシアやベルン王国の恨み買いまくりらしいし、帝国貴族の中には目障りに思っている輩もいるみたいで。
彼奴はクロノ公爵家一族だ。
法皇キティアラ様も弟分呼ばわりだから、面と向かって処か陰からでも害そうなんて企む奴はいない。
だから、彼奴の親族で平民のリリア嬢達に手を出す馬鹿がいるかもしれネェってギルマスが言い出した時には、実はまさかと思ったんだがなぁ。
居たよ。
明らかなチンピラ数人と、変装の下手な執事崩れ。のした後で語るなんて、我ながら馬鹿な事やっちまったよ。
さて、ギルド職員に手を出す事が、どんな事態を引き起こすか?お貴族様とは言え、ちと身に染みていただかねぇとな。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「い、言いがかりですぞ!いくら辺境伯と言え、お言葉が…」
「過ぎるというのか?もう一度言う。『私を怒らせるな』。我が領都のギルド職員に手を出すとはな。其方がその気なら、私はいつでもこの喧嘩を買おうではないか」
アンバー辺境伯は本来温厚な人物なのだがな。
ただならぬ雰囲気で枢密院にやって来た辺境伯は、顧問の腰巾着、カーチス男爵を糾弾した。
私の立場では、止めに入らざるを得ぬ。
「伯よ、確かな証がある訳でもあるまい。その辺にしてはどうかな」
「確証ですか?宰相閣下、これは貴族の私闘ではありませんぞ。領都公職に手を出したのです。此方に報復の権利がある筈」
「分からんでもないが、この件、私に預けて欲しいのだ、辺境伯」
「…御意」
アンバー辺境伯は出て行き、張り詰めた空気が和らぐ。
流石は国境警備を担う辺境伯。
どれほど温厚に見えていたとしても、事あらば武断に傾く、か。
「さ、さ、宰相閣下!あの様な野蛮な所業をお許しになるのですか?」
「預かる、と言っただけだ、カーチス男爵。ならばこそ今の私はどちらにも加担せぬ」
「そ、そんな…」
出された調書を読まねば何とも言えないが、アンバー辺境伯が何の確証もなく乗り込んで来るとは思えない。
それにしても、いくらクロノ男爵に手を出せないとは言え、こうも短絡的な手段を取るとは?
「そもそもロディマス・パイル=クロノの身内に手を出そうとはな。彼の怒りを買ってどうする。卿等は帝国を滅ぼしたいのか?彼の魔法や従魔の力が、我等や帝国に向かわないと何故言い切れる」
「な、さ、宰相閣下?」
「そして、彼の怒りに立ち向かう術を我々は持ち合わせておらぬ。帝都が灰燼に帰しても、それを食い止める方法等無きに等しいのだ。彼の機嫌をとる以外にな。枢密院諸侯に伝える。帝国が男爵を優遇するは、法皇一族が故と言う事のみに有らず。彼にその気は無かろうと、機嫌を良くしておくに越した事はないのだ。場合によっては、疑惑有りと断じた時点で生贄に処す事もある。これが帝国の意向である。左様心得られよ!」
宰相として、皇族として。敢えて言葉にした。
「何、大袈裟にしてるんですか?オレ、そんな魔王じゃないですよ!只の冒険者のガキです‼︎」
後日、そんな抗議をしてきた少年がいたらしい。法皇様が笑い飛ばしていたな。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「また大袈裟にして。多分、あの子なら怒り狂って暴れるより、帝国から出て行く事を選びそうだわ」
「その方が最悪だよ。切札を失ってしまう」
「全くですね、法皇様。それにしても宰相閣下も、彼の機嫌をとる事が『帝国の意向』とはまた思い切りましたね」
「笑い事ではないよ、リスティア。宰相も、今少し内々に出来なかったのですか?」
皇太子殿下の私室。
皇族3兄妹と私のみ。護衛騎士も副官もいない状況は、最近では珍しいと言えるわ。
「内々にって…、無茶言わないで下さいませ、皇太子殿下」
「宰相閣下、ホンネダダ漏れですわ。アンバー辺境伯へは、私からも宥めておきます。一応、伯は私の閥ですから」
「頼むよ。枢密院は何とか抑えるから。とは言え、殿下」
「ええ。私からもサバリッシュ侯爵へ一言囁いておきますよ」
「とうとう伯爵かぁ、法衣貴族だとしても、もう簡単にどうこう出来る存在じゃなくなってきたわね、あの子も」
「法皇様は常々願っていましたからね。勿論陞爵祝いは」
「我が本宅で盛大に行いますわ。殿下以下皆様方も是非」
「それは断るのも非礼だ。喜んで」
ごめんね、ロディ。カミーユ。
貴方達、ささやかな祝賀を望んでいたと思うけど。
帝国史に残る宴にさせてもらうからね。
ホント。最近、若いのは有望株がウヨウヨだ。
俺もギルドで教官らしき事やって10数年なんだけどよ。笑いが止まんねー程の大豊作なんだぜ。
その中でも、半年弱でAになった規格外。まぁ、生まれも育ちも規格外なんだけどさ。最弱職って常識を破壊しまくった上にお貴族様だって言うんだから。
戦争でも大活躍で陞爵し、とうとう伯爵様だと。
で、ミリシアやベルン王国の恨み買いまくりらしいし、帝国貴族の中には目障りに思っている輩もいるみたいで。
彼奴はクロノ公爵家一族だ。
法皇キティアラ様も弟分呼ばわりだから、面と向かって処か陰からでも害そうなんて企む奴はいない。
だから、彼奴の親族で平民のリリア嬢達に手を出す馬鹿がいるかもしれネェってギルマスが言い出した時には、実はまさかと思ったんだがなぁ。
居たよ。
明らかなチンピラ数人と、変装の下手な執事崩れ。のした後で語るなんて、我ながら馬鹿な事やっちまったよ。
さて、ギルド職員に手を出す事が、どんな事態を引き起こすか?お貴族様とは言え、ちと身に染みていただかねぇとな。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「い、言いがかりですぞ!いくら辺境伯と言え、お言葉が…」
「過ぎるというのか?もう一度言う。『私を怒らせるな』。我が領都のギルド職員に手を出すとはな。其方がその気なら、私はいつでもこの喧嘩を買おうではないか」
アンバー辺境伯は本来温厚な人物なのだがな。
ただならぬ雰囲気で枢密院にやって来た辺境伯は、顧問の腰巾着、カーチス男爵を糾弾した。
私の立場では、止めに入らざるを得ぬ。
「伯よ、確かな証がある訳でもあるまい。その辺にしてはどうかな」
「確証ですか?宰相閣下、これは貴族の私闘ではありませんぞ。領都公職に手を出したのです。此方に報復の権利がある筈」
「分からんでもないが、この件、私に預けて欲しいのだ、辺境伯」
「…御意」
アンバー辺境伯は出て行き、張り詰めた空気が和らぐ。
流石は国境警備を担う辺境伯。
どれほど温厚に見えていたとしても、事あらば武断に傾く、か。
「さ、さ、宰相閣下!あの様な野蛮な所業をお許しになるのですか?」
「預かる、と言っただけだ、カーチス男爵。ならばこそ今の私はどちらにも加担せぬ」
「そ、そんな…」
出された調書を読まねば何とも言えないが、アンバー辺境伯が何の確証もなく乗り込んで来るとは思えない。
それにしても、いくらクロノ男爵に手を出せないとは言え、こうも短絡的な手段を取るとは?
「そもそもロディマス・パイル=クロノの身内に手を出そうとはな。彼の怒りを買ってどうする。卿等は帝国を滅ぼしたいのか?彼の魔法や従魔の力が、我等や帝国に向かわないと何故言い切れる」
「な、さ、宰相閣下?」
「そして、彼の怒りに立ち向かう術を我々は持ち合わせておらぬ。帝都が灰燼に帰しても、それを食い止める方法等無きに等しいのだ。彼の機嫌をとる以外にな。枢密院諸侯に伝える。帝国が男爵を優遇するは、法皇一族が故と言う事のみに有らず。彼にその気は無かろうと、機嫌を良くしておくに越した事はないのだ。場合によっては、疑惑有りと断じた時点で生贄に処す事もある。これが帝国の意向である。左様心得られよ!」
宰相として、皇族として。敢えて言葉にした。
「何、大袈裟にしてるんですか?オレ、そんな魔王じゃないですよ!只の冒険者のガキです‼︎」
後日、そんな抗議をしてきた少年がいたらしい。法皇様が笑い飛ばしていたな。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「また大袈裟にして。多分、あの子なら怒り狂って暴れるより、帝国から出て行く事を選びそうだわ」
「その方が最悪だよ。切札を失ってしまう」
「全くですね、法皇様。それにしても宰相閣下も、彼の機嫌をとる事が『帝国の意向』とはまた思い切りましたね」
「笑い事ではないよ、リスティア。宰相も、今少し内々に出来なかったのですか?」
皇太子殿下の私室。
皇族3兄妹と私のみ。護衛騎士も副官もいない状況は、最近では珍しいと言えるわ。
「内々にって…、無茶言わないで下さいませ、皇太子殿下」
「宰相閣下、ホンネダダ漏れですわ。アンバー辺境伯へは、私からも宥めておきます。一応、伯は私の閥ですから」
「頼むよ。枢密院は何とか抑えるから。とは言え、殿下」
「ええ。私からもサバリッシュ侯爵へ一言囁いておきますよ」
「とうとう伯爵かぁ、法衣貴族だとしても、もう簡単にどうこう出来る存在じゃなくなってきたわね、あの子も」
「法皇様は常々願っていましたからね。勿論陞爵祝いは」
「我が本宅で盛大に行いますわ。殿下以下皆様方も是非」
「それは断るのも非礼だ。喜んで」
ごめんね、ロディ。カミーユ。
貴方達、ささやかな祝賀を望んでいたと思うけど。
帝国史に残る宴にさせてもらうからね。
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