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迷宮探索
48.
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パキン…。
迷宮核晶石が砕け散った。これでもう、ここが迷宮として成長する事はない。
低ランク魔物が自然に棲みつくだけの存在になった。
「何故こんな事を?あんな魔道具まで使って迷宮を成長させる事に意味があったんですか?」
隠す気もない気配。
核晶石部屋入口にいるフランギルドマスター、ケインさん。
「君が言った通りなんだよ。兎に角、魔物暴走を引き起こす事が目的だった。その方法を見つけるのに3年、準備にも2年は掛かった」
何か遠い目?
「じゃあ皇女殿下弑逆は?」
「取ってつけたモノだ。あのタイミングで殿下がお忍びで来るなんて流石に我々も思っておらんよ。領主代官である兄貴の元に打診があったのも本当に直前だ。おそらく我々が聞いた時には殿下達はフランに到着されていたであろうよ」
言いながら入って来る。
何か、吹っ切れたみたいだけど?
「此処に、この迷宮核晶石に魔力を注ぎ込んだ者は、長く私に付き従ってくれた従者でね。苦しみはしたが、それでも恨み言1つ言わずに死んだよ。冒険者の数人は拉致して無理矢理だったがね。低ランク新人で異常な程の魔力持ち。探せば有るものだよ。それもこれも、この皇帝直轄地を滅ぼす為だった。それなのに何故、このタイミングで皇女殿下一行が来る?四天騎士に阻止されればフランは助かる。力を分散させねばならなかったからギルドの掃除屋を使ったのだが」
「オレが余計な事をした、と」
「考えもしなかったよ。まさか魔物暴走を単独で対処し得る者が居ようとは。しかも依頼すら受けずに。君は『冒険者の義務みたいなモン』と言ったが、そんな青い理想を言う者等幾久しく会わなんだから忘れていたよ」
「で、1人で来たのは?」
「冒険者達を送り返されたら、もはや手は無い。何人いても一緒だろう。それこそ山賊の手を借りてとも思ったのだが、彼等に何か事情が出来た様だ。どうやら君にも裏から手を貸す者がいる様だな」
裏から?
この時は思い当たらなかった。
ビリー親分が動いたみたいで。
蛇の道は蛇。
山賊デボルドはビリー親分とヤリ合う事を嫌がったらしい。
漢気あるなぁ。
「『皇帝直轄地を滅ぼす』貴方はそう言った。ゴーダ家は永らく近衛官僚層にいると思ってたけど?皇家に恨みがあるとは思えないけど?」
「そうだな。近衛官僚として皇家に仕える、他家貴族からすれば優遇されている位置にあるようにも見えるだろうな」
自嘲めいた表情。官僚家は表向きなの?
「代官がどれほど頑張っても所詮は代官なのだよ。どれだけ領地を発展させようともね。街が潤い税収が上がっても我家には関係ない。月々支給される給金のみだ。この地での実績を鑑みて領地を授かるとかもない。何故だと思う。元々ゴーダ家が戦時捕虜の家系だからだ」
戦時捕虜って?
ベルン王国との前戦争は確か12年前だけど、この時は捕虜交換やら身代金譲渡で捕虜を連れ帰らなかった筈。
家系…。それじゃ何年前の戦争の話だよ。
「君が、と言うより我々が生まれる前の話だ。祖先に技術者がいた。だから捕虜として奴隷ではなく騎士爵位と新たな家名が与えられた。元はケント家だそうだ」
「ベルン王国の?それじゃミスリル精錬の魔綱炉を造り上げたガムラン=ケント?」
「そう。彼が祖だ。尤も名ばかりでね。扱いは奴隷に等しかった。この地の代官職も恩着せがましくね。皇家は兎も角、宮廷官吏長以下の官吏達からすれば職人風情の成り上がり貴族、としか思われておらんよ」
「だからって」
「此処で騒動を起こし、連鎖的にミズル公国に続くはずだったが…、そう言えばそちらの鎮静化にも君は関与していたな。君に恨みを晴らすのはあながち筋違いというわけでもなさそうだ」
とばっちりにしか思えねーよ。
「どっちにしろベルン王国でも闇竜ヴァルザールの活動に端を発した魔物暴走が起こったからベルンは動けなかった。この騒動で利を得ることになりかけたのはミリシア王国…、まさか!貴方達に話を持ち掛けたのはベルンじゃなくて?」
「本当に大賢者の息子は頭の回転が早いな。刺客を送られるのも当然か。君さえいなければミリシアは…」
「ね、そこまで暴露して大丈夫?まさかオレに対して『死人に口無し』が通じるなんて思って」
「ないな。流石にそこまで自分が愚者だと思いたくはない。笑ってくれていい。ミリシアが君から手を引いた事の意味はわかるな。我々は無かった事にされたよ。こう何度も国の都合に左右されるとね。意趣返しの1つもやりたくなる。例え愚者としてでもいい。君の記憶に留めて欲しくてね」
吹っ切れてたんだ、心底。
「オレに伝えた位では何の意味も無い。オレが法皇家一族であったとしても?」
「子供の戯言にしかならん。が、私の溜飲位は下げられよう」
確信犯か。でも残念だね。
「聞いているのがオレだけならね」
「何?」
「今言ったよ。オレが法皇家の一族だって」
後ろを指す。
本来なら迷宮核晶石があるべき場所。薄らと輝く水晶球がある。
『私達も聞いたわ、ケイン=ゴーダ。リスティア皇女と法皇たる私がね』
水晶球を睨み付けるギルマス。
吹っ切れた割には、鬼の形相だよ。
「オレが誰の駒か、知ってる筈だよ」
冒険者として、貴族として。
まだまだオレは法皇様の掌で動く程度なんだよ。政治・謀略となると。
「く、ククク…. 、こ、このガキがぁ!」
「電撃呪文」
ぐはぁ。ドサッ。
オレの肩に座ってるハイ・ピクシーが見えてない訳無いんだけどな。
それにしても…。
「法皇様の読み通りでしたね」
『《紫光の魔女》の受け売りよ。まぁ、彼女にしても可能性の問題位の認識だったけど』
ミリシアへはパイプ役の子爵家を手にしてたよね、法皇様。
どんな交渉をする事やら…。
とりあえず、フランの迷宮探索は終了。
…疲れた…。
迷宮核晶石が砕け散った。これでもう、ここが迷宮として成長する事はない。
低ランク魔物が自然に棲みつくだけの存在になった。
「何故こんな事を?あんな魔道具まで使って迷宮を成長させる事に意味があったんですか?」
隠す気もない気配。
核晶石部屋入口にいるフランギルドマスター、ケインさん。
「君が言った通りなんだよ。兎に角、魔物暴走を引き起こす事が目的だった。その方法を見つけるのに3年、準備にも2年は掛かった」
何か遠い目?
「じゃあ皇女殿下弑逆は?」
「取ってつけたモノだ。あのタイミングで殿下がお忍びで来るなんて流石に我々も思っておらんよ。領主代官である兄貴の元に打診があったのも本当に直前だ。おそらく我々が聞いた時には殿下達はフランに到着されていたであろうよ」
言いながら入って来る。
何か、吹っ切れたみたいだけど?
「此処に、この迷宮核晶石に魔力を注ぎ込んだ者は、長く私に付き従ってくれた従者でね。苦しみはしたが、それでも恨み言1つ言わずに死んだよ。冒険者の数人は拉致して無理矢理だったがね。低ランク新人で異常な程の魔力持ち。探せば有るものだよ。それもこれも、この皇帝直轄地を滅ぼす為だった。それなのに何故、このタイミングで皇女殿下一行が来る?四天騎士に阻止されればフランは助かる。力を分散させねばならなかったからギルドの掃除屋を使ったのだが」
「オレが余計な事をした、と」
「考えもしなかったよ。まさか魔物暴走を単独で対処し得る者が居ようとは。しかも依頼すら受けずに。君は『冒険者の義務みたいなモン』と言ったが、そんな青い理想を言う者等幾久しく会わなんだから忘れていたよ」
「で、1人で来たのは?」
「冒険者達を送り返されたら、もはや手は無い。何人いても一緒だろう。それこそ山賊の手を借りてとも思ったのだが、彼等に何か事情が出来た様だ。どうやら君にも裏から手を貸す者がいる様だな」
裏から?
この時は思い当たらなかった。
ビリー親分が動いたみたいで。
蛇の道は蛇。
山賊デボルドはビリー親分とヤリ合う事を嫌がったらしい。
漢気あるなぁ。
「『皇帝直轄地を滅ぼす』貴方はそう言った。ゴーダ家は永らく近衛官僚層にいると思ってたけど?皇家に恨みがあるとは思えないけど?」
「そうだな。近衛官僚として皇家に仕える、他家貴族からすれば優遇されている位置にあるようにも見えるだろうな」
自嘲めいた表情。官僚家は表向きなの?
「代官がどれほど頑張っても所詮は代官なのだよ。どれだけ領地を発展させようともね。街が潤い税収が上がっても我家には関係ない。月々支給される給金のみだ。この地での実績を鑑みて領地を授かるとかもない。何故だと思う。元々ゴーダ家が戦時捕虜の家系だからだ」
戦時捕虜って?
ベルン王国との前戦争は確か12年前だけど、この時は捕虜交換やら身代金譲渡で捕虜を連れ帰らなかった筈。
家系…。それじゃ何年前の戦争の話だよ。
「君が、と言うより我々が生まれる前の話だ。祖先に技術者がいた。だから捕虜として奴隷ではなく騎士爵位と新たな家名が与えられた。元はケント家だそうだ」
「ベルン王国の?それじゃミスリル精錬の魔綱炉を造り上げたガムラン=ケント?」
「そう。彼が祖だ。尤も名ばかりでね。扱いは奴隷に等しかった。この地の代官職も恩着せがましくね。皇家は兎も角、宮廷官吏長以下の官吏達からすれば職人風情の成り上がり貴族、としか思われておらんよ」
「だからって」
「此処で騒動を起こし、連鎖的にミズル公国に続くはずだったが…、そう言えばそちらの鎮静化にも君は関与していたな。君に恨みを晴らすのはあながち筋違いというわけでもなさそうだ」
とばっちりにしか思えねーよ。
「どっちにしろベルン王国でも闇竜ヴァルザールの活動に端を発した魔物暴走が起こったからベルンは動けなかった。この騒動で利を得ることになりかけたのはミリシア王国…、まさか!貴方達に話を持ち掛けたのはベルンじゃなくて?」
「本当に大賢者の息子は頭の回転が早いな。刺客を送られるのも当然か。君さえいなければミリシアは…」
「ね、そこまで暴露して大丈夫?まさかオレに対して『死人に口無し』が通じるなんて思って」
「ないな。流石にそこまで自分が愚者だと思いたくはない。笑ってくれていい。ミリシアが君から手を引いた事の意味はわかるな。我々は無かった事にされたよ。こう何度も国の都合に左右されるとね。意趣返しの1つもやりたくなる。例え愚者としてでもいい。君の記憶に留めて欲しくてね」
吹っ切れてたんだ、心底。
「オレに伝えた位では何の意味も無い。オレが法皇家一族であったとしても?」
「子供の戯言にしかならん。が、私の溜飲位は下げられよう」
確信犯か。でも残念だね。
「聞いているのがオレだけならね」
「何?」
「今言ったよ。オレが法皇家の一族だって」
後ろを指す。
本来なら迷宮核晶石があるべき場所。薄らと輝く水晶球がある。
『私達も聞いたわ、ケイン=ゴーダ。リスティア皇女と法皇たる私がね』
水晶球を睨み付けるギルマス。
吹っ切れた割には、鬼の形相だよ。
「オレが誰の駒か、知ってる筈だよ」
冒険者として、貴族として。
まだまだオレは法皇様の掌で動く程度なんだよ。政治・謀略となると。
「く、ククク…. 、こ、このガキがぁ!」
「電撃呪文」
ぐはぁ。ドサッ。
オレの肩に座ってるハイ・ピクシーが見えてない訳無いんだけどな。
それにしても…。
「法皇様の読み通りでしたね」
『《紫光の魔女》の受け売りよ。まぁ、彼女にしても可能性の問題位の認識だったけど』
ミリシアへはパイプ役の子爵家を手にしてたよね、法皇様。
どんな交渉をする事やら…。
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…疲れた…。
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