46 / 67
迷宮探索
46.
しおりを挟む
「それはそうと、あの子、この依頼を達成するとランク昇格条件を満たします」
今、ロディはランクB。
戦闘力、判断、対応…。能力的にもBレベルは超えていると思う。これでも私、受付嬢として色んな冒険者と接してきたから。冒険者を見る目はあると思ってます。
「そうだな。先日の法皇家の依頼で貴族対応もクリアした訳だ」
ギルマスも頷いている。
法皇家だけではなく皇女殿下の依頼も熟していたみたいだけど、これは冒険者ではなく派閥貴族として動いていたようだし。
「本当なら昇格試験なんだが、ギルマス推薦認定でも多分、何処のギルドも不服申立はしないと思うね。彼奴の能力や仕事は皆の認める処だ」
ランクAともなるとギルド共通の昇格試験を通じて他のギルドの承認も必要となります。他国は兎も角帝国ではそうなんです。
尤も、ロディは「なんでまだランクBなんだ?」と他のギルドから突っ込まれる存在でした。レッサーとは言えドラゴンを瞬殺出来る魔法を持ち、従魔も単体でドラゴンを倒せる実力です。ロディに不足しているのは達成件数。でもコレはやむを得ない所。
何せロディはまだ、ギルドに登録して数ヶ月。もうすぐ半年経つ?そんな期間で件数をギリ熟しているのって、やっぱり凄い。
グリフォンが従魔だから、ロディの機動力は群を抜いてる。馬車で5~6日かかる場所であっても、ロディ達は1日もかからず動けてしまうから。
そして何より、彼は未達成が無い。
受けた依頼は全て達成してる。
当たり前だけど、でも凄い事なの。特に低ランクの者は背伸びして能力以上の依頼に手を出す事がある。そして、彼等は大概失敗する。下手すれば生命をも失ってしまう。
未熟故の過ち。
それで死んでしまっては本末転倒。冒険者に向いてなかったって烙印を押されて、ともすれば皆の記憶から消えてしまう。
憶えられたとしても「そんなマヌケがいたな」程度の話。
でも受付嬢の立場では、そんな一言では済まされない。どうしてもっと強く引き留めなかったのか?自己嫌悪に陥る程私は落ち込んでしまう。
「リリアのせいじゃないよ」
ギルマスやジェシー女史、他のギルド職員も声をかけてくれるけど…。
それが身内なら尚の事。
だからあの子が、ドヤ顔で「達成しました!」って帰ってくると本当に嬉しいし、身の丈に合わせた依頼を受けている事にホッとしてるの。
「異世界人以外の、本当に久しぶりのランクAだな。それも最年少記録更新と言うオマケ付きだ」
ギルマスの感心したかの頷き。
本当に凄いわ、ロディ。
フフ、貴方はどうして甥っ子なのかしら…。婚約者が羨ましい…。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
「よく来てくれた。助かるよ」
フランに着いたオレを出迎えてくれてのはフランギルドのギルマス、ケインさん。
「オット。クロノ男爵閣下と呼ばないといけませんな」
「ランクBのエラム所属新人冒険者として来てます。只のロディマスで充分です」
ケインさんはフラン代官ゴーダ准男爵の異母弟で騎士爵位を持つ身。で今のオレは男爵だから領主代官よりも上位の貴族なんだよね。これ、真っ当に対応してたら面倒くさいからギルマスと新人冒険者って関係だけで話しようと思うワケ。
「ランクBの新人ねぇ…。私も色んな冒険者に会ってきたが、お前さんみたいな規格外は初めてだよ」
「迷宮が16階層まで成長したって聞きました。その上狭いトコが多々あるから小柄のオレに要請きた、と」
「うん、まぁ、身も蓋もない言い方だがその通りなんだ。それに商都のフランは護衛向きの対人戦力高めの冒険者が殆どだ。それ程階層のある迷宮ではなかったから、探索メインの冒険者は、迷宮都市の方へ行くだろうし」
帝国東部のセルズ辺境伯の領都ブリドニーは、街外れに広大な迷宮が有る事で知られてるんだ。この迷宮は35階層まで確認されてる。36階層から下は人跡未踏の地。で探索魔法で後12階層在る事がわかってるんだって。
母さん並の魔法使いが研究の為に拵えた迷宮みたいで、まぁ罠やら仕掛けもてんこ盛りだけど、研究の成果たるアイテムや武具も其処彼処にあるんだと。
そう。この人の研究のメインは付与術。
だから魔剣や希少アイテムがザックザク。
ゲーム内でも同様だったから、数100年前の世界である今は、ゲーム時よりもアイテムの宝庫だと思うよ。探索メインならばコッチに行くよね。
「ここ迄急激な成長は聞いた事ないですけど?魔物暴走の時には8階層だったんですよね?」
「それは間違いない。だからこそ私も代官も戸惑っているんだ」
オレはエラムギルドでした話~迷宮核晶石への人為的魔力付与の可能性を話した。
「母さんに教わってる知識で考え付く、1番可能性があるのはこの方法だと思うんです」
「目的は?その、皇女殿下を害そうとするのは二の次だとすると、何の目的で迷宮を成長させようとするんだと思う?」
「1番単純なのは迷宮守護者たる魔物のランクアップですね。10階層未満ならランクC位の魔物だと思うんですけど」
「ああ。オーガ・ジェネラルだからランクCだよ、間違いなく」
「多分、もうオーガ・キング位のヤツになってるんじゃ…」
「1ランクは上がった後か…。とは言えお前さんなら余裕だな。単純ねぇ。だとしても…」
「弱いですよね。次の理由も結構単純で、兎に角魔物暴走を起こしたかった。確実に起こせる方法ですので」
「おぅ。まだ納得出来そうな感じだなぁ」
「どうでしょう。明日にでも潜ります」
チョイと悪い予感がしてたけど…。
翌日、オレは迷宮に入った。
今、ロディはランクB。
戦闘力、判断、対応…。能力的にもBレベルは超えていると思う。これでも私、受付嬢として色んな冒険者と接してきたから。冒険者を見る目はあると思ってます。
「そうだな。先日の法皇家の依頼で貴族対応もクリアした訳だ」
ギルマスも頷いている。
法皇家だけではなく皇女殿下の依頼も熟していたみたいだけど、これは冒険者ではなく派閥貴族として動いていたようだし。
「本当なら昇格試験なんだが、ギルマス推薦認定でも多分、何処のギルドも不服申立はしないと思うね。彼奴の能力や仕事は皆の認める処だ」
ランクAともなるとギルド共通の昇格試験を通じて他のギルドの承認も必要となります。他国は兎も角帝国ではそうなんです。
尤も、ロディは「なんでまだランクBなんだ?」と他のギルドから突っ込まれる存在でした。レッサーとは言えドラゴンを瞬殺出来る魔法を持ち、従魔も単体でドラゴンを倒せる実力です。ロディに不足しているのは達成件数。でもコレはやむを得ない所。
何せロディはまだ、ギルドに登録して数ヶ月。もうすぐ半年経つ?そんな期間で件数をギリ熟しているのって、やっぱり凄い。
グリフォンが従魔だから、ロディの機動力は群を抜いてる。馬車で5~6日かかる場所であっても、ロディ達は1日もかからず動けてしまうから。
そして何より、彼は未達成が無い。
受けた依頼は全て達成してる。
当たり前だけど、でも凄い事なの。特に低ランクの者は背伸びして能力以上の依頼に手を出す事がある。そして、彼等は大概失敗する。下手すれば生命をも失ってしまう。
未熟故の過ち。
それで死んでしまっては本末転倒。冒険者に向いてなかったって烙印を押されて、ともすれば皆の記憶から消えてしまう。
憶えられたとしても「そんなマヌケがいたな」程度の話。
でも受付嬢の立場では、そんな一言では済まされない。どうしてもっと強く引き留めなかったのか?自己嫌悪に陥る程私は落ち込んでしまう。
「リリアのせいじゃないよ」
ギルマスやジェシー女史、他のギルド職員も声をかけてくれるけど…。
それが身内なら尚の事。
だからあの子が、ドヤ顔で「達成しました!」って帰ってくると本当に嬉しいし、身の丈に合わせた依頼を受けている事にホッとしてるの。
「異世界人以外の、本当に久しぶりのランクAだな。それも最年少記録更新と言うオマケ付きだ」
ギルマスの感心したかの頷き。
本当に凄いわ、ロディ。
フフ、貴方はどうして甥っ子なのかしら…。婚約者が羨ましい…。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
「よく来てくれた。助かるよ」
フランに着いたオレを出迎えてくれてのはフランギルドのギルマス、ケインさん。
「オット。クロノ男爵閣下と呼ばないといけませんな」
「ランクBのエラム所属新人冒険者として来てます。只のロディマスで充分です」
ケインさんはフラン代官ゴーダ准男爵の異母弟で騎士爵位を持つ身。で今のオレは男爵だから領主代官よりも上位の貴族なんだよね。これ、真っ当に対応してたら面倒くさいからギルマスと新人冒険者って関係だけで話しようと思うワケ。
「ランクBの新人ねぇ…。私も色んな冒険者に会ってきたが、お前さんみたいな規格外は初めてだよ」
「迷宮が16階層まで成長したって聞きました。その上狭いトコが多々あるから小柄のオレに要請きた、と」
「うん、まぁ、身も蓋もない言い方だがその通りなんだ。それに商都のフランは護衛向きの対人戦力高めの冒険者が殆どだ。それ程階層のある迷宮ではなかったから、探索メインの冒険者は、迷宮都市の方へ行くだろうし」
帝国東部のセルズ辺境伯の領都ブリドニーは、街外れに広大な迷宮が有る事で知られてるんだ。この迷宮は35階層まで確認されてる。36階層から下は人跡未踏の地。で探索魔法で後12階層在る事がわかってるんだって。
母さん並の魔法使いが研究の為に拵えた迷宮みたいで、まぁ罠やら仕掛けもてんこ盛りだけど、研究の成果たるアイテムや武具も其処彼処にあるんだと。
そう。この人の研究のメインは付与術。
だから魔剣や希少アイテムがザックザク。
ゲーム内でも同様だったから、数100年前の世界である今は、ゲーム時よりもアイテムの宝庫だと思うよ。探索メインならばコッチに行くよね。
「ここ迄急激な成長は聞いた事ないですけど?魔物暴走の時には8階層だったんですよね?」
「それは間違いない。だからこそ私も代官も戸惑っているんだ」
オレはエラムギルドでした話~迷宮核晶石への人為的魔力付与の可能性を話した。
「母さんに教わってる知識で考え付く、1番可能性があるのはこの方法だと思うんです」
「目的は?その、皇女殿下を害そうとするのは二の次だとすると、何の目的で迷宮を成長させようとするんだと思う?」
「1番単純なのは迷宮守護者たる魔物のランクアップですね。10階層未満ならランクC位の魔物だと思うんですけど」
「ああ。オーガ・ジェネラルだからランクCだよ、間違いなく」
「多分、もうオーガ・キング位のヤツになってるんじゃ…」
「1ランクは上がった後か…。とは言えお前さんなら余裕だな。単純ねぇ。だとしても…」
「弱いですよね。次の理由も結構単純で、兎に角魔物暴走を起こしたかった。確実に起こせる方法ですので」
「おぅ。まだ納得出来そうな感じだなぁ」
「どうでしょう。明日にでも潜ります」
チョイと悪い予感がしてたけど…。
翌日、オレは迷宮に入った。
10
お気に入りに追加
332
あなたにおすすめの小説

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜
むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。
幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。
そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。
故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。
自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。
だが、エアルは知らない。
ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。
遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。
これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる