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採掘依頼
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オレが果たした2つの同じ依頼。
これが面倒な事態を起こしていると教えてくれたのは義兄上だった。
「皇家御用達商会の面目をつぶした?オ…私がですか?」
「あぁ。結果としてそうなっているんだ。いや、君は悪くない。義兄を抜きにしても私は君を擁護するしルシアン殿下も同様だ。が、理屈で分かってはいても収まりがつかない事はあってね」
あの鉱石採取の依頼をこなして1週間後。
ファブリさんに呼び出されて、再び帝都へ。
法皇家帝都別邸の本宅。
そう、オレが住む事になってる離れじゃなくて本宅の方。
その一室。ここにファブリさんと法皇様がいる。
「君が帝都の鍛治ギルドから受けた硝煙鉱石採取の依頼。あれ、元々の依頼主は皇家御用達商会たるアドレー商会でね。良質な火薬を造る為に必要だったんだが」
「火薬?」
ゲーム内でも『攻城兵器』の1つとして大砲弾があった。カタパルトで放る巨石の代わりに強烈な衝撃を与えると発火して城の防壁等を破壊する奴。
大砲や銃は存在しないんだけどね。
「アドレー商会は大砲弾を造っていたのですか?」
「造る為の鉱石を卸していたんだ。で、造らせていたのは皇家。此処迄はいい?」
オレは頷く。
「この手の話はアドレー商会が一手に引き受けていたんだけど、新興のボーレック商会が食い込もうとしてね。で鉱石の入札を行う事にしたんだが、その、本来なら出来レースだったんだよ」
オレが鍛治ギルドに依頼を受けたのって?
「成る程。私に陞爵祝いとして魔鉱石精錬の剣を賜る事から始まっていたんですね?」
「ありていに言えばそうだ。その剣の調整に鍛治ギルドへ…、それも帝都のギルドへ向かうだろうと予想してね。ギルドは君を待ち構えて依頼を出す。知れば不本意だとは思うけど。君に依頼すれば短日でも熟るだろうから、相手は絶対に間に合わないと踏んでね」
「それを知ってか、ボーレック商会も私に依頼をしてきた。そういう事ですか」
「エラムギルドマスター・ドルフより報告があった。緊急の、しかも裏依頼としてギルドに来たので、当ギルド所属の新人冒険者に無理を言ってやらせた、と」
ビリー親分…。裏依頼…。
気前良く正当な価格で買い取ったのは、そういう訳だったのか。
「確かに鑑定でも、鉱石は同場所同時刻採石された物、だったからね」
「それでアドレー商会が怒った、と。皇家が手配した出来レースの筈が相手に引き分けに持ち込まれたから」
「ああ。理不尽な話だが、恨みの鉾先が君に向かっているんだ。その、最初に言った通り君が悪い訳じゃない。皇家も充分承知している。だがこのままでは皇家の裏切り行為となりかねない」
「やむを得ないから、私に詰腹を切らせる、と」
ファブリさん、無言。いや、もう肯定じゃん。
「鍛治ギルドで依頼を受けてるのは分かっているし、実際君が採掘している現場も目撃報がある。その上で2組の鉱石から同じ魔力が検出されているのだから。うん、せめて採掘現場の目撃報が無ければ多少の誤魔化しもあったんだが…」
あぁ。採掘中を見られてるもんなぁ。
グリフォンがいるから絶対オレって誰もが判断するだろうし。実際してるし。
「この場合のペナルティって?」
「降爵だ。最悪、騎士爵位まで堕ちる」
なら問題無いや。爵位なんてモンに未練は無いし。あ、でもこんな不名誉、ひょっとして婚約破棄にも繋がる?
それを尋ねてみると、
「それは無い。その、実は降爵もどうか、とね。何度も言うが、本来君に落度は無いんだ。でもだからこそ…」
「落とし所に苦労する、と?」
ボーレック商会はコリコス王国の広域交易商会。新興で最近急激に成長してる。帝国にも取引先をどんどん伸ばしてる。
帝国では敵無しのアドレー商会にとって目障りな出る杭。そこに出来レースを覆された訳だから、これはもう腑煮え繰り返る状況。
それもコレも、あのテイマーが二重依頼を請け負ったからだ!
コレ、詰んでない?
「ファブリ。アドレー商会には法皇家から少し融通を利かす。コレで手を打たない?」
は?法皇様?
「それは?」
「ちょっと物入りな事があるけど、その辺の一切合切全部頼むと言う事で、今回の手打としたいのよ。ロディは末席傍流だから」
「落とし所…。分かりました。それで皇太子殿下とも話をしてみます」
「よろしくね」
「ついでにロディには、チョイと手伝って欲しい事があるの。この貸し、直ぐに取り立てさせてもらっていいかしら?」
「それ、拒否権処か選択肢無いですよね?仰せのままに」
法皇様から頼まれたのは水魔晶石。コレって北のリザン山脈最高峰、カイヌ山の火口湖にしか存在しないという魔晶石。
とある『熱波病』の特効薬原料。
教会に担ぎ込まれた重病患者。彼者のスキルが特殊な為に薬でしか治せないとの事。
珍しいスキル、『魔法無効』。
『全属性』と同様、先天性のスキルで文字通り魔法を無効化する。例外は無い為、回復魔法や防御、強化等の補助魔法も全て無効化する。
普通病気は『病状回復呪文』で直す事が出来る。それ程魔法ランクも高くないので、侍祭級程の神官ならば治療は可能なんだけどね。
攻撃系呪文を無効化出来るから無敵のステータスって言われてるスキル。でも実際にはそうでもない。例えば『窒息呪文』なら本人には無効だけど、周りの空間には有効。だからやっぱり酸欠になる。で『土壁防御』で囲ったら終わり。これも本人ではなく彼がいる地面に適用される呪文だから発動する。
閉じ込められて窒息。
碌な死に方じゃないよね。
確かに使える術者は少ないんだけどさ。
ドヤ顔で言うけど、オレ魔法使い系の呪文は全て使えるから。
話逸れたね。
兎に角、オレは法皇様の依頼でカイヌ山へ飛んだんだ。
これが面倒な事態を起こしていると教えてくれたのは義兄上だった。
「皇家御用達商会の面目をつぶした?オ…私がですか?」
「あぁ。結果としてそうなっているんだ。いや、君は悪くない。義兄を抜きにしても私は君を擁護するしルシアン殿下も同様だ。が、理屈で分かってはいても収まりがつかない事はあってね」
あの鉱石採取の依頼をこなして1週間後。
ファブリさんに呼び出されて、再び帝都へ。
法皇家帝都別邸の本宅。
そう、オレが住む事になってる離れじゃなくて本宅の方。
その一室。ここにファブリさんと法皇様がいる。
「君が帝都の鍛治ギルドから受けた硝煙鉱石採取の依頼。あれ、元々の依頼主は皇家御用達商会たるアドレー商会でね。良質な火薬を造る為に必要だったんだが」
「火薬?」
ゲーム内でも『攻城兵器』の1つとして大砲弾があった。カタパルトで放る巨石の代わりに強烈な衝撃を与えると発火して城の防壁等を破壊する奴。
大砲や銃は存在しないんだけどね。
「アドレー商会は大砲弾を造っていたのですか?」
「造る為の鉱石を卸していたんだ。で、造らせていたのは皇家。此処迄はいい?」
オレは頷く。
「この手の話はアドレー商会が一手に引き受けていたんだけど、新興のボーレック商会が食い込もうとしてね。で鉱石の入札を行う事にしたんだが、その、本来なら出来レースだったんだよ」
オレが鍛治ギルドに依頼を受けたのって?
「成る程。私に陞爵祝いとして魔鉱石精錬の剣を賜る事から始まっていたんですね?」
「ありていに言えばそうだ。その剣の調整に鍛治ギルドへ…、それも帝都のギルドへ向かうだろうと予想してね。ギルドは君を待ち構えて依頼を出す。知れば不本意だとは思うけど。君に依頼すれば短日でも熟るだろうから、相手は絶対に間に合わないと踏んでね」
「それを知ってか、ボーレック商会も私に依頼をしてきた。そういう事ですか」
「エラムギルドマスター・ドルフより報告があった。緊急の、しかも裏依頼としてギルドに来たので、当ギルド所属の新人冒険者に無理を言ってやらせた、と」
ビリー親分…。裏依頼…。
気前良く正当な価格で買い取ったのは、そういう訳だったのか。
「確かに鑑定でも、鉱石は同場所同時刻採石された物、だったからね」
「それでアドレー商会が怒った、と。皇家が手配した出来レースの筈が相手に引き分けに持ち込まれたから」
「ああ。理不尽な話だが、恨みの鉾先が君に向かっているんだ。その、最初に言った通り君が悪い訳じゃない。皇家も充分承知している。だがこのままでは皇家の裏切り行為となりかねない」
「やむを得ないから、私に詰腹を切らせる、と」
ファブリさん、無言。いや、もう肯定じゃん。
「鍛治ギルドで依頼を受けてるのは分かっているし、実際君が採掘している現場も目撃報がある。その上で2組の鉱石から同じ魔力が検出されているのだから。うん、せめて採掘現場の目撃報が無ければ多少の誤魔化しもあったんだが…」
あぁ。採掘中を見られてるもんなぁ。
グリフォンがいるから絶対オレって誰もが判断するだろうし。実際してるし。
「この場合のペナルティって?」
「降爵だ。最悪、騎士爵位まで堕ちる」
なら問題無いや。爵位なんてモンに未練は無いし。あ、でもこんな不名誉、ひょっとして婚約破棄にも繋がる?
それを尋ねてみると、
「それは無い。その、実は降爵もどうか、とね。何度も言うが、本来君に落度は無いんだ。でもだからこそ…」
「落とし所に苦労する、と?」
ボーレック商会はコリコス王国の広域交易商会。新興で最近急激に成長してる。帝国にも取引先をどんどん伸ばしてる。
帝国では敵無しのアドレー商会にとって目障りな出る杭。そこに出来レースを覆された訳だから、これはもう腑煮え繰り返る状況。
それもコレも、あのテイマーが二重依頼を請け負ったからだ!
コレ、詰んでない?
「ファブリ。アドレー商会には法皇家から少し融通を利かす。コレで手を打たない?」
は?法皇様?
「それは?」
「ちょっと物入りな事があるけど、その辺の一切合切全部頼むと言う事で、今回の手打としたいのよ。ロディは末席傍流だから」
「落とし所…。分かりました。それで皇太子殿下とも話をしてみます」
「よろしくね」
「ついでにロディには、チョイと手伝って欲しい事があるの。この貸し、直ぐに取り立てさせてもらっていいかしら?」
「それ、拒否権処か選択肢無いですよね?仰せのままに」
法皇様から頼まれたのは水魔晶石。コレって北のリザン山脈最高峰、カイヌ山の火口湖にしか存在しないという魔晶石。
とある『熱波病』の特効薬原料。
教会に担ぎ込まれた重病患者。彼者のスキルが特殊な為に薬でしか治せないとの事。
珍しいスキル、『魔法無効』。
『全属性』と同様、先天性のスキルで文字通り魔法を無効化する。例外は無い為、回復魔法や防御、強化等の補助魔法も全て無効化する。
普通病気は『病状回復呪文』で直す事が出来る。それ程魔法ランクも高くないので、侍祭級程の神官ならば治療は可能なんだけどね。
攻撃系呪文を無効化出来るから無敵のステータスって言われてるスキル。でも実際にはそうでもない。例えば『窒息呪文』なら本人には無効だけど、周りの空間には有効。だからやっぱり酸欠になる。で『土壁防御』で囲ったら終わり。これも本人ではなく彼がいる地面に適用される呪文だから発動する。
閉じ込められて窒息。
碌な死に方じゃないよね。
確かに使える術者は少ないんだけどさ。
ドヤ顔で言うけど、オレ魔法使い系の呪文は全て使えるから。
話逸れたね。
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