最弱職テイマーに転生したけど、規格外なのはお約束だよね?

ノデミチ

文字の大きさ
上 下
39 / 67
刺客

39.

しおりを挟む
 陞爵記念パーティは終わりました。
 カミーユもこのまま法皇家別邸の離れに泊まります。

 …婚約者の、とは言え他家の殿方の家にお泊まりです。

 大胆…だよね。
 この帝都にブヌア家はあります。本来、泊まらなくても大丈夫なんです。

 両親も兄も、よく許してくれたと思います。
 ロディへの信頼。勿論あるでしょう。

 両親には多少の打算もあるみたいです。
 末席傍流と言え法皇家一族。しかも男爵になりました。手放す訳にはいかない優良物件です。

 まぁ、それ以上に、誰が見ても娘の幸せな未来が確実だという事が大きいとは思うのですけど。


 従魔に、ハイ・ピクシーに嫉妬してる私がいます。見た目が美少女でなかったら、こんなにモヤモヤしないでしょう。
 ロディの従魔アリスを見つめる目の優しさ。微笑み。私に向けるものと違うから…。

 勿論、私は彼に愛されています。眼差しも言葉も雰囲気も。触れられた手から伝わるモノも。全てから愛が伝わってくるから…。

「独占したい?そんなに嫉妬深かったの、私」

 しっかりしないと。

 ロディの強さと存在。
 敵対する者にとって無視出来ないモノなのでしょう。法皇家別邸にも関わらず刺客を送られる程なのですから。

 でもロディと従魔達は、それを相手にしない程の力量を示しました。法皇家の権力も同様。

 だとしたら、彼の弱点ネックはどう考えてもです。それは自覚してるし、またロディも法皇様も思っているみたいで…。
 お泊まりの理由の半分です。

 目の前の暖炉の前。あ、火はついていません。
 まだ、そんな時期じゃないし。

 暖炉の前に、灰色の仔犬が眠ってます。
 …見た目が小さな、可愛らしい仔犬。実は従魔フェンです。
 本来なら10mを超える程の大きさを持つ神狼フェンリル。抱っこ出来る位の大きさになる事も出来るとの事。魔法で重さもどうにかしてるそうです。じゃないと抱っこ出来ません。
 この大きさでも、ランクAの実力は発揮出来るってロディは言ってました。

 フフ。
 心配症だなぁ。

 厩舎にはグリフォンもいるみたい。その知覚は人は勿論フェンリルをも上回るって。

 だから夜半も、この館を襲う事は不可能。
 法皇家別邸を襲う度胸のある者は、そうそういないとは思うのですが…。

 14歳。
 まだ同衾は出来ない年齢。

 前世日本人の時より身体的発育はしている、と思うの。胸は兎も角…。それに前世でさえ、この歳なら子を産める身体になってたし…。

 ロディに抱かれたい。
 ふと思い赤面してしまった。

 カミーユは淑女なのよ、ガイア。
 成人迄後2年…。

 おやすみ、ロディ…。

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

「で、ですが…」
我々ミリシアは此度の件から手を引く。もう彼の者に関わるな」

 水晶球から聞こえる冷たい声。
 本国ミリシア王宮からの直接指令。

 宮廷魔術師ロイス・テレーゼ=パルム侯爵夫人。

「お待ち下さい、我等はまだ…」
「愚か者!此度は失敗。貴様等はしくじったのです。既に帝国に攻め込まれてもおかしくない事由を与えた事が分からぬのですか‼︎」
「そ、それは…。申し訳ありませぬ。よもや自害も出来ぬとは」
「流石は帝国正教会法皇。蘇生魔法迄駆使するとは。私達の見通しが甘かったわ」

 くっ。この無念。この恨み。
 忘れぬぞ、クロノ男爵…。

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

「お姉様?」
「あぁ、コレ。詰問状よ。取り潰してやってもいいのだけど、ロディはあまり大事にしたくないみたいね。それにミリシアとのパイプ、使い道も有りそうだから」
「内々に処理する、と?」

 法皇キティ姉様は溜息を吐くと、

「政治の汚い処を見せているわね、エレンディア。幼き頃の、唯人を癒す事だけ考えていた時に戻りたいわ」

 私もだが、姉は本当に回復魔法癒しの奇跡の力に長けていた。人を癒す事が唯々嬉しかったのだ。

 だが法皇権力者は綺麗事だけでは済まない。学生の私ですら分かる話だ。

「ロディが羨ましい。彼の才能チカラは国をどうにでも出来る。それを己の良心のみで使えるし、その資格をも持ち合わせている」

 魔女メーヴの子の名に偽りなし。
 魔法の才は、最早宮廷魔術師をも超え大賢者レベル。しかも剣技として応用し得る。
 従魔の力も都市を軽々と滅ぼす事が出来る程。

 にも関わらずロディマス様は、権力欲は勿論金銭欲すら持っていない。いや、物欲すら乏しいのでは?と思える程だ。

 日々食えて寝る場所が有ればいい。

 多分、塔にいた時がそんな生活だったのだろう。
 でも街に出て来て、国家権力中枢に近い所に来ても、その意識が変わらないのは凄いと思う。

 その上、彼は基本的に性善主義だ。

 ~この世には善人しかいない~。
 その前提で対人関係を考えるのが性善主義。

 エラムは辺境という事もあり、街の雰囲気も助け合いに満ちている。塔から出て最初の街が彼の地エラムだったのも彼にとって良かった。

 また、ロディマス様はテイマーだ。
 魔物と心通わす者はピュアな者が多い。ロディマス様もその例に外れていない。
 貴族の価値観に理解があるから権謀詐術を嫌悪しつつ納得はされている様だけど…。

 その意味でも、本当に稀有な存在。
 そんなロディマス様が末席傍流でも私達一族なのはとても有り難い事だと思う。
 親戚…って言うより頼れる弟って言いたい程に。

救済の女神エルシュア様と共に彼の存在に感謝を」

 法皇お姉様は本当に貴方ロディマス様を信頼し頼りにしています。

 ありがとう、ロディ。

 私も、そう呼んでいいですか?
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました! 佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。 彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった... (...伶奈、ごめん...) 異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。 初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。 誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。 1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

処理中です...