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召喚者達

35.

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「工作に失敗したか。矢張り異世界人エトランゼ達の働きは予想以上だ。それにしても何故我が国には異世界人エトランゼが現れてくれないのだ?」

 ミリシア王国元帥府。
 ベルン王国の工作に乗じてグランザイア帝国に攻め入る手筈を整えていたダン=エイクロイド元帥の元へ、内部工作失敗の報が届いたのは昨日の事だ。

「返す返す残念です。千載一遇のチャンスだと思えたのに」
 宮廷魔術師で我が軍師とも言うべき女性。
 ロイス・テレーゼ=パルム侯爵夫人。
 侯爵家の奥方ではなく、自身が堂々たる侯爵当主だ。夫と息子を魔物暴走スタンピードから領都を守る戦いで喪った後、嫡孫フィリップの後見として侯爵家を継いだ女傑。
 何処ぞの廃嫡された公孫と違い6歳にして神童と噂されているフィリップなので侯爵家は今後も安泰であろうな。

「確認出来ただけでも数十名はいると思われます。が、彼等は全てグランザイア帝国かベルン王国に召喚されております。他国では確認出来ておりません」
「両国が時同じくして召喚儀式を行ったとは考え難い。それに数も多過ぎる。神の介入でもあったと思えるのだが、だとすれば何故我が国に現れないのだ」

 不可解、寧ろ理不尽と言っても良い。
 元々両国は2大国と呼べる程の国力を持つ。今のままでは全く太刀打ち出来ぬ。その上異世界人エトランゼと呼ばれる者達は皆能力ステータスが高い。冒険者として遥かに有望な者が多いのだ。

 現にベルン王国に現れた勇者一行は魔物暴走スタンピードを鎮め原因の闇竜ヴァルザールをも倒している。

「後一つ。魔女メーヴの子供の存在」

 そう。帝国に時同じくして現れた、我々の常識を粉砕したテイマー。不遇職ハズレと言われていたテイマーが高レベルだとこれ程優れた冒険者と成ろうとは夢にも思わなかった。しかも彼は高ランク冒険者だけではなく帝国貴族としても動いている。

「本当に、全くもって厄介な存在だな」

 ミズル公国動乱は彼が帝国正教会法皇を動かした事で、彼が法皇一族だった事で早々と皇帝も決断してしまった。よもや三公を降爵し別の家を陞爵しようとは?
 帝国は皇帝が現人神で救世の女神エルシュアの代理と言う形でのエルサー教信仰だ。政治と信仰が一体化している分、正教会トップの法皇の発言力が強い。確かに法皇はあまり施政に口を出す事は無いとは聞くが…。

 しかも彼の婚約者は皇太子の乳母の娘と聞く。
 こんな規格外の者が帝国中枢部にいる?

 彼は何者だ?

 異世界人エトランゼではない。だがそれに匹敵する様な能力を持ち、権力者にも近い存在。

「帝国は第2皇子を宰相に据えた。これで皇子両輪の体制が出来た訳だ。後継争いもなく宮中がまとまった。一段と強固になった。くっ、何たる事ぞ。最早生半可な工作では藪蛇にしかならぬ」
「元帥、今は目先を変えましょう。どうやらアマレゴは我等以上に事が見えぬ様ですので」

 フム。そうらしい。
 奴等はベルン王国の魔物暴走スタンピードに乗じて国境を侵すべく準備をしていたらしいが、早々収まったにも関わらずそのまま侵攻を開始してしまい、王国の反攻にあっている。

「アマレゴの肥沃なる土地をベルン王国のみに与える必要は無きものと考えます」

 そう。我が国が国境を接しているのは帝国だけではない。アマレゴ王国とベルン王国もだ。
 大国に挟まれているが故に悩む日々もあったが…、今現在はベルンと協調、同盟関係にある。

「そうだな。それも一つの手か」

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 ベルン王国とミリシア王国に挟撃されたアマレゴ王国は、何とか王都は守り切れたものの都市国家に近い形にまで押し込められてしまった…。

 歴史は変わった。

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

「レッサードラゴンを3頭瞬殺…か。件のテイマーは魔法使いを成長しきってレベルカンスト魔法剣士になり、テイマーとなった訳だ」
「信じられんの。単純にレベル200超えか?おぉ、テイマーレベル48といっておったの。では248か。儂等足下に及ばんの」
「14歳だろ?有り得んよ」
魔女メーヴが時空フィールドを作ってその中で鍛えたのでしょう?確か1日が1年分。だとすると週2日の鍛錬でも1年で100年分の鍛錬となるわ。8歳位から特訓し始めたらしいから6年はそういう修行を積んできたとみていい」
「600年…。テイマーは上がり難いし妥当なとこじゃな。で、此奴の特徴が波目…。フム。確かに珍しいが偶然の一致じゃろ」
「そう?ジュピターの転生体という可能性は?」
「無い。あの召喚時、転生を選んだのは少数だが、殆ど生き残ってない」

 闇竜ヴァルザールを倒した我々地上の星はパンタン山脈の麓で魔物暴走スタンピードの後始末をしつつ、そのままキャンプを張る。
 聖女ビーナスの結界と賢者サターンの防護壁魔法。そうそう破れる実力を持つ魔物等存在しない。

「転生体が生き残っていない?」
「あぁ。召喚が大体森とかに転移させられてこの世界レムルに来ていただろ。俺達ですらベルン王宮じゃなかった。王都ベリア近くの街道だったよな。これさ、転生も同じなんだよ。つまり赤子の姿で森とかに転移させられてるんだ。で魔物の餌と化してる。出産は勿論、街中で棄子の形ですらない。俺達を世界レムルへ送り込んだ神は、本当に唯送り込んだだけなんだ。何の配慮もしてネェ。それに生き残ったとしても赤子だ。子供の形での転生者は皆無だよ」

 マーキュリーが呆れた口調で吐き捨てた。馬鹿馬鹿しい、とでも言いたげだ。

「そう決めつけて良いのか?それに其奴の婚約者。先祖返りの精霊魔法使いと言うではないか。もし、此奴等がジュピターとガイアだったら何とする」
「ガイアは転生処か、例の神に消されたぜ。アンタも見てたろ?サターン」

「お前は、この世界レムルに不要だ」

 そう声が響いたかと思ったらガイアが弾け飛んで消えた。我々の目の前で。ハッキリと覚えている。

「そうだな。偶然の一致、であろうな。似てる部分はあるかもしれんが、そうでない部分が致命的に違っていると聞くぞ。件のテイマーは紅眼でさっきも言ったが魔法使いをレベルカンストしてる。ジュピターは戦士から魔法剣士への転職だった。魔法を全て収めた訳ではない」

 奴は広域極大爆裂呪文エグゾフレイム窒息呪文アスフィケイションを使った。こんな高レベルの呪文をジュピターが使える筈が…。

 では彼は何者だ? 
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