最弱職テイマーに転生したけど、規格外なのはお約束だよね?

ノデミチ

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そして…婚約

18.

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「オレの所為だよね、ホントにごめん」
 しっかりと抱き締めて、オレはカミーユガイアに謝罪した。

「今の私は先祖返りの精霊魔法使いなの」

 精霊魔法はエルフか、エルフの血を引く者でないと使えない。人族の、しかも帝国騎士たる貴族にエルフの血が入るなんて事は普通有り得ない。

「元の私のキャラ、クラスを活かしてくれたんだと思う。ブヌア家の祖先にエルフの女性を伴侶に選んだ人がいたの」
「それで先祖返り、か」

 ごく稀にある遺伝の不思議。
 隔世なんてもんじゃなく、数世代も経ってからいきなり祖先のクラスを伝承する者が現れる事がある。

「勿論伴侶のエルフ共々その方は家を追われた。でも数十年後、その弟の曾孫が行方を必死に探したんだって。そしてハーフエルフの娘だけが見つかった。その子を引き取り、己が伴侶とする事にしたの」

 ハーフエルフと人族の子はどちらかにしかならない。エルフか人族か。遺伝的に人族の方が強いんだろう。ほぼ人族になる。そうして薄れていったとは言えエルフの血が受け継がれていったんだ。

「精霊魔法使いってメチャクチャ貴重だよね。でも帝国貴族で使い手なんて聞いた事ないけど」
「まだ表に出してない。私も親や兄の前でしか使ってないし」
「オレと一緒で珍しい存在な訳だ。ブヌア家ならルキアル殿下の希望にも添えるな。ね、いきなりだけど付き合わない?」

 まるでナンパだ。少し赤面する。
 しかも、オレ達まだ抱き合ったまま。

「コッチも秘密持ち。魔女メーヴの子供ってのがカモフラージュになってるけどさ。准男爵ともなれば社交に出るのも必要になるし。マヂ考えたくないんだけどさ。相手が事情を把握できるってかなりホッとすると思う」
「それ、事情だけ?」
「あのタンクトップ姿に一目惚れした」
「何それ?やっぱり胸なの?」

 ガイアはエルフキャラだ。
 アバターは中性的なスレンダーさがあった。それだけに本人のタンクトップ姿は強烈で…。

 あの溢れんばかりの胸に目がいかない男子高校生はいない!オレ断言する‼︎
 ま、それを主張する訳にもいかないか。

「言ったろ。オレの波目はコンプレックスでトレードマークって。ガキの頃から『寝てんのか、笑ってるのか?』散々貶された。でもアバターで色々な眼を試したんだけど、全部違和感があってさ。別人になれるのが…醍醐味なのかもしれないけど、この波目以外別人過ぎてさ。君も、その…セクハラっぽくて申し訳ないけど、その巨乳、散々言われたんだよね?」
「うん。好きでなった訳じゃないのに…。嫌で嫌で仕方なかった。コンプレックスでトレードマーク…。フフ、少し割り切れる気がしてきた。まぁ今はそうでもないし」

 そうか?カミーユの胸は結構有る様に見えるけど?オレと同じ位の年に見えるし。なので聞いてみる。

「うん。私も14。そうね、確かに、私もぼちぼち夜会に出る様になってるし。両親も何処かの騎士家に嫁げればって思っているし。准男爵相手なんて玉の輿…。ね、でも貴方は皇女殿下派じゃないの?皇太子殿下陪臣のブヌア家は…」
「そこ、ちょい政治的な事情あってね。皇女派閥の一員のまま、どちらかと言えば皇太子殿下寄りな存在でいて欲しいって言われてさ…。で、承諾でいいよね?って言うか、もう離したくないんだけど?」
 あはは、敢えて言うよ。
 オレ、カミーユをまだ抱き締めてる。
「まぁ、事情もあるし」
「事情だけ?」
「…クロノ准男爵様。流石に私も…、好きでもない殿方に身を任せたりは致しません。その、ロディマス様ジュピター?、アテにして良いんだよね」

 再びリネットを呼んで、オレはカミーユに、ブヌア家に交際を申し込んだ事を伝える。使用人の立場を超えて?リネットも我事の様に喜び、オレ達…って言うかカミーユを祝福してくれた。

「クロノ准男爵閣下。どうかお嬢様をよろしくお願いいたします。お嬢様はお身体が弱く、大病を患い死にかけた事もございました。でも、その大病から奇跡的に快癒されてからまるでお人が変わった様に元気になられて…。この様な日をお迎えする事が出来ようとは…」

 大病…。
 話によると高熱が続き衰弱が酷かったって。しかもその時は、何の病か分からなかった。

 『血の変革』だ。
 エルフの血の顕現の為に、人族から見た目は変わらずともハーフエルフに近い体質に変化したのだろうと。その事に身体が耐え切れなくなりつつあったという事らしい。
 ガイアの心が入った事で、エルフキャラで高位の精霊魔法使いの魔力がカミーユに入り、それで持ち直したみたいだ。
 オレの転生にも関わっている、名も知らぬ女神の仕業だと思う。

 それにしても、世界レムルに不要?
 勝手に連れて来ていて、何て身勝手な神なんだ。あの時の野太い男性神の声。絶対忘れないからな。

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

「あの2人を娶せたか。それもよかろう。我に思いもよらぬ駒の変革、実に魅惑的だ。本当に我を愉しませてくれることよ、のう、※※※」

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 後日、オレはブヌア家に、カミーユとの婚約を正式に申し込んだ。
 皇太子殿下直属とは言え、騎士爵位のブヌア家にとって娘の相手は同じ騎士家と考えていた当主ルイブロー=ブヌアにとって、准男爵であるオレからの婚約申込は願ってもない事だったみたい。恐縮しながらも大歓迎と言うのが丸見え。
 義父となるルイブローさんは近衛騎士団の班長をも勤める騎士。実質剛健を旨とする家柄の長に相応しく筋骨隆々で赤毛…金褐色と言える髪とライトグリーンの瞳の持ち主。
 そう言えばカミーユもそうだったけどライトグリーン系の瞳も人族では珍しい。
 成る程、エルフの血ね。
 エルフって銀髪にグリーン系の瞳色が特徴だ。カミーユはまんまだよ。兄君ファブリさんはセルリアンブルーと青味の強い瞳色だけど、これは母君たるアンリエットさんの系統。確かアクアマリンの如きな瞳色だった筈。

「大変ありがたい申出ですが、何故准男爵閣下は我娘を?」
「先日皇太子殿下と歓談する機会を得たのですが、その時に紹介されました。『我が盟友に素晴らしき妹御がおるのだが、年齢といい家格といい君に似合うのではないか?』と。実際会ってみて御息女に魅了されました。未だ婚約交際の相手がいないのであれば、ぜひ私が名乗り出たく思うのです」
「皇太子殿下が…。准男爵閣下の御相手ともなれば当家にとって光栄至極。身に余る誉れでありますれば是非とも。不束な娘ですが、私共も貴族の伴侶として恥ずかしくない教育はしてきたつもりでおります」

 これでオレとカミーユの婚約は決まった。

 そして、皇宮内にも波紋を起こしていた…。
 
 
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