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貴族の戦い

24. 性格悪いお兄様

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「はじめまして、ですね。シャトナー伯爵。サイモン公爵嫡男ポールです」
「ようこそ、歓迎するよ、サイモン公子」

 成る程。
 ジェイムス=シャトナーの前にいる、まだ少年と言える若者。ポール=サイモン公子。
 公爵よりも物腰柔らかいが、確かに公爵の若き頃の面影もある。それに髪と瞳の色は、例のアイラ嬢と一緒か。

 彼女がサイモン公爵息女である何よりの証だ。

「先ずはアイラの事で。彼女を保護していただき感謝致します」

 妹?そう、はっきりと言ったか?

「公式には死亡している者です。我等が表立って保護出来ないのはかなり忸怩たる想いがあるのですが」

 これはまた、随分ストレートな物言いだ。

「とは言え現状が思わしくありません。先日も他家の者が彼女を拉致せんと動いたらしいと聞き及んでいます」
「ダッカード侯爵家だったか?確かにな。私の領地で公女が拉致されたのでは私の面目丸潰れだ。内密の申出は願っても無い事であるし、当方も今後2度とこの様な振舞いは赦さぬ事を密かに宣するつもりでいる」
「感謝します。此度はその宣言を聞き出したいが故の訪問でしたので」

 確かに公爵父君と違い此方の派閥とも宥和政策を理想とすると聞いてはいるが、ポール=サイモン公子、私の言質を引き出したいとは、やはり公爵家次期当主なんだな。

「まぁ、我等も彼女の保護にはかなり打算もあるがね。これは彼女自身と確認しているが、彼女の才能スキルは『聖獣使い』だ。現時点で彼女は大地ガイルフェンスピリッツタートルフェニックスを使役している。お陰でヒガンザタンサラスは、大地、水、炎~恵みの加護を得ていると言っていい。彼女様々なんだよ」
「成る程…、益々父上には語れないなぁ。これだけの加護を自領から手放したとあっては、それこそ面目丸潰れ。でも噂になりつつある」
「そうだな。ならばこそ彼女を自領へ連れ込みたい者が出て来ている」
「こうなると我等が表立って動けないのは痛恨の極みです。伯に頼るしか手は無い」
「公子の信に応えよう。派閥を抜きにしても貴方は手を組みたい相手だ」
「若輩な身に余る光栄。今後ともよろしくお願いします」

 内密だが、途轍もなく力強い味方を手に入れた想いだ。サイモン兄妹が我が領を選んでくれている証でもあるのだから。

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

「これは凄い。しかも外からは全くわからない。たいしたものだ」

 初めて私達の家隠れ家に案内したよ。

「成る程。本当に大地ガイルフェンスピリッツタートルフェニックスがいる。4聖神獣が3頭も。これでゼファーがいれば、アイラは世界の守護者にだって成れる訳だ」
「もう、いきなり訪ねて来られてたのは、皮肉言う為ですか?」
「そうだね。中々言う事を聞いてくれない頑固な妹に、少しくらい恨み言を言っても罰は当たらないと思うよ」

 どっちが頑固?

 ピィー『いや、どっちもどっち』
 クヮアー『兄妹だよね、アイラ』
 ガォオオーン『それな!』

 私の三銃士じゃなかったの?

「その表情カオから察するに、神獣は此方の味方かな?」

 むぅ(プクー)。

「あっははは。そんな子供っぽいアイラを見るのは何時以来かな?ひょっとして初めてかもな。うん、やはり来た甲斐が有ったよ」

 マジ性格悪いよ、この兄貴。

「さて、今回の件は内密にする様にはしておいた。父上の耳には入らない様にね。まぁ、シャトナー伯爵も領内で他家貴族の暗躍を捨て置けないだろうし、外聞だって悪い。表沙汰にはならない筈だ。アイラも充分気をつける事と、事!」
「お兄様?私がやってるのでも、やらせてるのでもなくて…」
「おやおや。何時もの賢過ぎるアイラは何処かな?」

 ピィー『ププッ』
 クヮアー『クスクス』
 ガォオオーン『ケケケケ』

 …本当に誰の味方なの?貴方達⁉︎
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