みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜

ノデミチ

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公爵家の思惑

15. 私は諦めが悪いんだ

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「それは、本当かい?」
「確証はありません。ですが、そう思わざるを得ない状況です」

 ヒガンザタンサラスの官吏であるヘイスティングスと町長のカル=ハッキネン。その2人が領主たるシャトナー伯爵の元に来て、驚くべき報告をしてきた。

 街の周りの畑や果樹園の、今年の作付が信じられない程の良いとの事。おそらく収穫が例年の1.3倍は見込めるのではないか。

 そして、その主因が水源たる森の奥の沼地の変化だと。

「ゴミの埋立地の崩壊等もあり、一時は汚染されていた沼地の畔ですが、この数ヶ月劇的な変化を遂げています。その、崩壊がいつの間にか修復され、汚染が除去されただけではなく以前よりも清廉になっています。草木や動物が蘇っているかの如く咲き誇り、生命溢れてるんです」
「また、沼地の奥に果樹や、その、畑が見受けられ、その生育が街の周りの物より遥かに良いのです。その影響が街の方へも波及してきてるのではないかと思われるんです」

 沼地の奥に畑や果樹?

「すると、あの沼地の畔に誰かが畑や果樹園を作っていると?それがとても生育が良い為、街の周りにも影響が出始めていると、君達は言いたい訳だ」
「その通りです。おそらく、例の少女かと」

 不思議な、そして愛らしい幼女が頭をよぎる。

「アイラ=サイモン…。彼女が。そういう事だな」

 何度か確認するのだが、それでも彼女が、あの沼地の畔の何処に住んでいるのかハッキリしない。おそらく何かの隠匿魔法でもかけられているのだろう。

「ヘイスティングス。君は彼女が魔物を使役していると言っていたね。いや、確かに私も共に確認してはいるが」
「はい。実際私は大亀と狼を見ていますし、ギルドの者が紅い鳥を肩に留まらせている彼女を見ておりますから」
「どうだろう。それらは魔物ではなくて聖獣ではないだろうか。ならば、あの沼地の変化が納得出来る。そう思わないかい?」
「聖獣ですか?するとガイルフェンにスピリッツタートル、それにフェニックス。成る程。大地に炎、水の聖獣が彼女と共にいる事になりますね」
「そうだ。そして沼地は神域と化している」

 そう考えると何もかもが一致するのだ。

「あの娘は神の御使なのでしょうか」
「あの娘の才能スキルは〇〇使〇となっていたな。多分聖獣使いなんだと思う」
「その様な才能スキルが?」
「表に出せない訳だ。これ以上の神の御加護はないからな」

 4聖神獣の内の3頭がいる事になる。これで風のゼファーまでそろったら、彼女は風火地水全ての力を手にする事となる。

 ならばこそ。

「そっとしておこう。あの娘と言うか4聖神獣の機嫌を損ねる訳にはいかないからな」

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

「何だと?お前は儂が間違っておるというのか」
「少なくともアイラは才能スキルを持っておりました。しかも隠される形のモノが。表に出せない程の珍しいレアな才能スキルという事です。その様な者を父上は放逐したのです。彼女は家名を捨てていました。ギルドカードにも姓がなかった処を見ると、女神フェリシアも家名を捨てた事をお認めになったという事。もはやアイラを害する理由は当家にありません」

 激発寸前の父上を前に、ポールは一歩も引けない。先ずはアイラへの刺客を絶対に止めさせなければ。

 リディアを王都の魔術学院に送った私は、そのまま王都別邸へ。公務もあり父上も王都に来ている筈だったので、アイラに会ってきた事を伝えた。

 案の定、父上は激昂した。
 が、此方も負けてはいない。そもそも父上以上に私も激怒しているのだ。

「か、家名を捨てていた…。確かなのか」
「アイラは、サイモン公爵家と関わりなく、冒険者として自活出来ている様です。街の者達とも上手くやっていると。今、アイラに手を出すのは、シャトナー伯爵家に喧嘩を売るも同然の無思慮な行為です」
「な、何?お、お前は、儂のやる事を無思慮な行為と言うのか」
「他に何と呼べと?父上!いい加減、眼をお覚まし下さい」
「黙れ!儂の、儂のやる事に子供が口を出すな‼︎」

 ええい。父上、何と頑固な。
 こうなったら…。
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