上 下
4 / 37
幼女が街にやって来た

4.いてはいけない子

しおりを挟む
 棚に並ぶお塩や胡椒。
 へへへ。思わずニヤついてしまうわ。

 ピィー『アイラ、変!』

 「ちょっと、カナ?言い方!」
 今は4聖神獣かもしんないけど、元はペットなんだよ?私は飼い主!皆の世話をしてたの私‼︎

 何はともあれ、無事、魔物の素材換金とお買物が出来ました。子供のお遣いも、稀にあるみたいで、門番の兵隊さんも、まぁ憐れんでくれてる気もするけど、ギルドや市場を案内してくれた。
 ギルドも市場の人も、普通に接してくれたから、私みたいな子供がやって来るのも、それ程珍しい事じゃないんだと思う。

 ついでに、市場で種も買う事が出来た。
 これで、ちょっとした畑も出来ると思う。

 コロに聞いたら、大地を耕すのは「お茶の子さいさい」って。今時使わないよ、その言葉。

 ココ、陽当たりもいいし。いい畑になると思うんだ。

「カナ、外に行くよ。コロが畑耕してると思う」
 ピィー『さっきやってたから、もう出来たんじゃない?』
「さっすがー!仕事早いねー‼︎」

 沼の辺り。陽当たりの良い場所が程良く耕されてる。そこへ野菜の種を蒔いていく。

 ガォオオーン『オイラ達の加護があるから、とっても美味いモノになるよ、アイラ』
「お、それは楽しみ」

 この世界に来てまだ数日。
 私は野性に染まりつつある。1人じゃ本当に心細かったと思う。でもこの子達がいる。コロ、カナ、キィちゃんがいるから、以前の日常のままでいられる。
 皆んなとともに、この世界に連れてきてくれた神様に感謝。

 ピィー『そうだ、アイラ。その神様から伝言があるんだ』
 ガォオオーン『そうそう。ちょっと面倒なんだけど』
 クヮアー『僕らもフォローするから』

 何々?え?せっかくのんびりロビンソンクルーソーやってたのに?

 ピィー『アイラの、その姿なんだけど』
 クヮアー『実は、この世界のある女の子の姿。丁度都合が良かったんだ』

「都合?これ、私の身体を変えたんじゃなくて」

 ガォオオーン『この世界の、とある事情で亡くなってしまった女の子の身体を器として転生したんだ』

「じゃあ、私は意識だけ?心だけこの世界に来たの?」

 ピィー『少し違う。その子は器。そこにアイラという生命を注ぎ込んだ。その身体には心、知識は勿論、アイラの経験、人生も宿ってる。だからアイラがやって来た家事をスムーズに出来てる』

 よかった。中身は全て私自身なのね。

「で、面倒って?」

 ピィー『その子の素性。実はその子の名前も"アイラ=サイモン"なんだ』
「待って、待って!この世界の姓持ちってお貴族様だって言ってたわよね?は?何で貴族の子が1人で?」
ガォオオーン『アイラ、その子…つまり君は、この世界で珍しい才能スキル無しなんだ。いや、本当はあるけど、唯一無二だから、才能スキル判定晶石が反応しなかった。能無し落ちこぼれとして貴族家から追放されちゃったんだよ』
「こんな子供を?じゃあ、この身体の子が亡くなったのは?」
 クヮアー『1人じゃ生きていけないよね』

 唯一無二の才能スキル
 それって?

 ピィー『うん。アタシ達の事。「聖獣使い」なんてこの世界に今迄無かったから』
 ガォオオーン『確かにアイラには力も魔力も何も無い。剣を振るう事も難しいし、魔法を唱える事も出来ない。でもオイラ達の加護があるんだ』
 クヮアー『僕の加護が防御。カナのが癒し。コロが恵み。だからアイラはケガしないし、しても直ぐ治る。飢える事も無い』

 別の意味でチートだわ。

「それが才能スキル。でも判定に出ない。じゃあステータスとかにも?」
 クヮアー『出ないかもね。だから「鑑定」受けても「才能スキル無し」になっちゃう』

 才能スキル
 この世界では人生そのもの。

 人は5歳の誕生日に教会で「鑑定」を受ける。
 そこで神より授かりし「才能スキル」で人生=職業が決まってしまう。
 確か、貴族なら高位才能スキルが殆ど。
 才能スキル無しなんて…。

 本当に面倒だわ。
 捨てられた、存在しちゃいけない貴族の事って事だよね。益々街では暮らせないわ。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

転生してテイマーになった僕の異世界冒険譚

ノデミチ
ファンタジー
田中六朗、18歳。 原因不明の発熱が続き、ほぼ寝たきりの生活。結果死亡。 気が付けば異世界。10歳の少年に! 女神が現れ話を聞くと、六朗は本来、この異世界ルーセリアに生まれるはずが、間違えて地球に生まれてしまったとの事。莫大な魔力を持ったが為に、地球では使う事が出来ず魔力過多で燃え尽きてしまったらしい。 お詫びの転生ということで、病気にならないチートな身体と莫大な魔力を授かり、「この世界では思う存分人生を楽しんでください」と。 寝たきりだった六朗は、ライトノベルやゲームが大好き。今、自分がその世界にいる! 勇者? 王様? 何になる? ライトノベルで好きだった「魔物使い=モンスターテイマー」をやってみよう! 六朗=ロックと名乗り、チートな身体と莫大な魔力で異世界を自由に生きる! カクヨムでも公開しました。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

転生5回目!? こ、今世は楽しく長生きします! 

実川えむ
ファンタジー
猫獣人のロジータ、10歳。 冒険者登録して初めての仕事で、ダンジョンのポーターを務めることになったのに、 なぜか同行したパーティーメンバーによって、ダンジョンの中の真っ暗闇の竪穴に落とされてしまった。 「なーんーでーっ!」 落下しながら、ロジータは前世の記憶というのを思い出した。 ただそれが……前世だけではなく、前々々々世……4回前? の記憶までも思い出してしまった。 ここから、ロジータのスローなライフを目指す、波乱万丈な冒険が始まります。 ご都合主義なので、スルーと流して読んで頂ければありがたいです。 セルフレイティングは念のため。

処理中です...