【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ

文字の大きさ
上 下
77 / 90
12.その名は滅亡

大地

しおりを挟む
ルーク視点

 「ここが…、リスティアが消えた場所?」

 激戦の跡は、豊かな森と泉に変わっていた。
 砂と塩の、死の大地であったそこは、リスティアの生命力と魔力を使い再生したという。

 「ここで、君は生きているんだね。母なる大地として、いつまでも…」

 「殿下…」

 魔族領たるギ王国は、リストガイア王国と名を変え復興の徒についていた。そう、『リスティアの大地』という国名に変わって…。
 
 魔王レベッカのテレポートで、やっと来ることができた。私だけでは、この場で自害するかもしれない。誰もがそう思ったらしく、関係者全員が共に来ることになった。
 ミリュー公爵にアイラ公爵妃。レムオン公子にカイルとチェレン。ローラにシャーロットも。

 あれから一週間。私はまだ信じていない。
 只、最後の場所を見つめていた…。


ローラ視点

 ルーク殿下は、只、リスティア様の最後の場所を見つめていました。私も信じられないのですが…。

 私自身は王城発表で、事の次第を聞きました。
 それまで、邪神復活の事すら知りませんでした。これは市民の大多数も同じです。
 復活した邪神の為に、北魔大陸が滅亡しつつある事。それを、魔族や神竜の力を借りたとは言え単身迎え撃ち、撃退殲滅したリスティア様は、死の大地を甦らせる為に禁呪を使い、還らぬ人になったと。
 邪神を倒した喜びも束の間、リンドガイア王国は悲しみに包まれてしまったのです。

 教会にはリスティア様の無事を、復活を、冥福を祈る方三様いて、国全体が喪に服す形になりました。
 嘗てダイアナ施薬院院長が言った、

 「貴女はこの国で、世界で一番愛されている女性なのよ」

 誇張でも妄言でもない真実の言葉だったと、誰もが納得出来たのです。

 婚約者を失った殿下は、一週間たった今もまだ婚約指輪をはめたまま。周りも、新たな婚約者をと殿下に話していません。話せません。
 この国の女性で、リスティア様の代わりが出来ると思う者は皆無でした。妙齢の娘を持つ貴族も、とても殿下に話をもっていけなかったのです。

 リスティア様。
 神界に旅立たれるの早すぎます!貴女はまだ十五です。もっと、もっと…。



 神界。
 私、リスティア=ミリューは不思議な体験をしています。まるで天空から見ているみたいに。
 地上ではルーク様やお父様、お母様。お兄様にカイル、チェレン、ローラにシャーロット。
 皆が悲しみに暮れているのを見て、本当に申し訳なく思います。

 「ここまで愛されている人も珍しいわね」
 「気持ちは分からんでもないがな」

 声のする方を見ると、白と黒の女神。

 「女神グランガイア様、ディロスガイア様」

 「こうして相対するのは初めてだな」
 「ある意味二度目ね。最も、貴女の前世での話ではあるけど。その時にお願いしました。世界を変えてくれと。ありがとう、約束を守ってくれて。私の願いを聞いてくれて」

 女神様に頭を下げられる? そんな?
 「あ、あの? 約束って?」
 「何の変化もなく、ゆっくりと衰退していた世界。貴女のお陰で一つになろうとしている。よりよく変わろうとしている。人族だけでなく、魔族までもが。本当にありがとう、リスティア。そんな貴女に、私達からお礼がしたいの」
 「お礼ですか?」
 「そうだ。女神として我々と共に世界を導くか、人として彼等と共に生きるか。好きな方を選んで良いぞ」
 「本当に? 本当にまた、人として生きていけるのですか? 私は、ルーク様と一緒にいられますか?」
 好きな方を! そんなの一択しかない!!

 「今の貴女は、あの時と同じ姿。よく、その指輪をはめていたわ」
 「それは、『対の命運』と呼ばれる物。相手を想う心が、僅かだが生命力に変わる。ルーク王子の貴女を想う心の大きさが、貴女の命となるのだ」

 『対の命運』? 同じ瞳の色の石。世間で恋人達に人気と聞いて、ルーク様が贈ってくれたもの。そんな力が、この指輪にあったなんて?

 「だから、貴女の生命力は尽きていないのです。それにゼルメイドやボスコーン、神竜の加護もありました。リスティア? 皆が待っています」
 「はい。ありがとうございます、グランガイア様、ディロスガイア様」

 女神様二人が、祈りの姿をとる。
 私の身体が、再び輝き出し、金色の粒子に変わる。

 「ルーク様…」


ローラ視点

 「殿下! 指輪が!?」
 ルーク殿下がはめている指輪が煌めいています。
 
 「まただ! 珠にこうして煌めいているんだ! だから、リスティアが生きていると思う。思いたいんだ!これは彼女の瞳の色。リスティアの輝き! 頼む! 女神グランガイア! ディロスガイア! この輝きをリスティアの命の輝きと信じさせてくれ!」

 「えぇ。貴方の想いが、リスティアの命になる。その指輪に、想いを込めなさい」

 この声は? 女神グランガイア様?

 「リスティア!」

 魂の叫び!
 ルーク殿下の指輪から一条の光が?

 照らされた大地から金色の粒子が立ち上る。
 それは、ゆっくりと人の姿をとって…。

 粒子が、輝きが収まった後、そこに立っていたのは?

 「リスティア!」
 「ルーク様、その、只今帰りました…、きゃっ?」

 殿下はリスティア様を抱きしめていました。
 しっかりと。あは、だんだん滲んでぼやけていきます。リスティア様…。本当に? 帰って来られたのですよね?
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!

白夢
ファンタジー
 何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。  そう言われて、異世界に転生することになった。  でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。  どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。  だからわたしは旅に出た。  これは一人の幼女と小さな幻獣の、  世界なんて救わないつもりの放浪記。 〜〜〜  ご訪問ありがとうございます。    可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。    ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。  お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします! 23/01/08 表紙画像を変更しました

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

処理中です...