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12.その名は滅亡
稀人
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魔族領にモルドが? しかも目的が邪神復活?
「少し信じがたいけど、本当なら世界の終わりだ」
闇教会からの帰り、聞いた情報があまりといえばあまりだったので、ルーク様に話すことにしました。
訪ねる前の腕輪通信。
点滅三回。『今から来ていい?』
点滅五回。『すぐ来い』
普通は一回『はい』か、二回『いいえ』だと思うのですが? 私が来て良いか尋ねる時、大概『すぐ来い』と返ってくるのです。
うん、会いたいって思ってくれてるのだよね。
その証拠に、私室を訪ねると、中に入りドアが閉まった途端にムギュッ! 抱き締められます。
後はお決まりのキスと、胸への顔埋め。
「ちょ? ルーク様?」
「癒されるなぁ」
「また育つから止めて…ほしいの…ですけど……」
「癒されるんだけどなぁ」
「もう、お蔭で『ポヨプニちゃん』なんですよ?」
で、冒頭の話。
まぁ確かに、愛撫され幸せ気分にはなりましたけど。
ルーク様は、闇教会の事もご存知です。私、ルーク様には全て話してます。尤も、お父様や国王陛下には話していませんけど、ルーク様も了承済みです。
「北魔大陸とは、あまり交易もしていないからな。情報が少なすぎだ。いや、待てよ? ヴォルコニアは交易しているはずだ! ならば…」
ちょっと考え込んだ後、ルーク様は、
「ミューク皇太子と連絡とってみるよ」
あまりにも大きく、信じがたい話。
対策を立てるには初動が遅かったのです。
ヴォルコニアのミューク皇太子から、交易相手のサイ=クェス連邦が滅んだ、と連絡があったのは三日後でした。
「滅んだ? 連邦が滅んだというのか?」
「ああ。魔族の襲撃ではないらしい。むしろ魔族が避難してきた? 押し寄せてきたって話だ。何か災厄レベルの魔物が出てきたらしいんだ」
ミューク皇太子も半信半疑のようです。
「魔物じゃないかもしれん。モルドが絡んでるところまでは確認がとれてるんだ。奴が邪神の封印を解いたかもしれない」
「邪神?」
「ザラードの伝承が、あの地にはある」
「ま、待て? ザラードは実在が確認されてる訳ではないし」
「ああ。でも、その可能性が一番高いんだ!」
二人の太子の話は、直ぐ様王へ報告されました。
私は、改めて闇教会を訪ねています。
「やはり邪神の封印を…」
「みたいです。確認するにも、北魔大陸は遠くて」
司祭は、何か思い悩んでいるみたいです。
「何か? 引っ掛かるものがあるのですか?」
「リスティア様、このことはご内密にお願いします。この教会の裏手、山に入って奥に祠があるのですが、魔族領につながるゲートがあります。この国、いや中央大陸で唯一稼働しているゲートです」
「祠? ゲート? どうして?」
「ディロスガイア教会の本山は魔族領にあるのです。だからという訳ではなさそうなのですが」
教会の裏手、山の中に入って少しすると、小さな祠がありました。その前に倒れている人影。
「もし? 大丈夫ですか? しっかりしてください!」
介抱しようと抱き上げると、頭の角に気付きました。
「え? これは魔族?」
耳の上から一回りして前に競り出す大きな角。魔族の少女?どうして?
「す、済まぬ。頼みが…ある。この国に『神竜の愛娘』が……いる…と聞いた」
「はい、あの、私です。私、リスティア=ミリューが、そう呼ばれてます」
魔族の少女は、マジマジと私を見ます。
「そなたが…。頼む、魔族を救ってくれ…」
気を失った? とりあえず闇教会に運びます。
「此の方は?」
「祠の前に倒れてたんです。多分避難してきた魔族?」
「この角…。リスティア様、多分此の方は魔王様。魔王レベッカ様だと思います」
「魔王?レベッカ様?」
見た感じは少女にしか見えない。
確かに私よりは年上に見えるけど…。
魔法で回復させて話を聞いて……、時間がない?
夕刻の鐘の音が響く。
今日はクーデルカ=グラント公爵令嬢がうちに来ます。交際五年。やっとレムオンお兄様との婚約が決まりました。
互いに好意を持っていらしたお二方。ここまで年月を費やさざるのは、ちょっとした権力闘争があったからでした。
三大公爵の一人で軍司令官たるお父様の権力は、ただでさえ強大です。国の兵権を抑えているのですから。
プラス王家と結ばれる事になりました。
私が、王太子と婚約したからです。次の王子の外祖父になれます。
国家を私物化できる地位に就くのです。
他家にとって、お父様の存在が脅威になりつつある時に、お兄様とクーデルカ嬢との交際が聞こえてきました。
クーデルカ嬢も三大公爵グラント家の令嬢です。グラント教皇の孫娘。
両家が一つになれば、兵権と神権が合体します!
王家すら覆せる存在。他家はそうはさせ時と猛抗議しました。
結局「有り得ぬ!」という王の一言で決着が着いたのですが、火種は燻ったままであり、その説得や調整で時間を取られ、婚約発表が今になってしまったのです。
これからの打ち合わせを兼ねたお茶会が今夜でした。
欠席は勿論、遅刻遅滞も許されません。
「彼女をお願いします。私、今日はもう帰らないと不味いです」
「わかりました。お任せください、リスティア様」
後から思えば、『どうして?』と思えるくらい対応が遅れてしまいました。
「少し信じがたいけど、本当なら世界の終わりだ」
闇教会からの帰り、聞いた情報があまりといえばあまりだったので、ルーク様に話すことにしました。
訪ねる前の腕輪通信。
点滅三回。『今から来ていい?』
点滅五回。『すぐ来い』
普通は一回『はい』か、二回『いいえ』だと思うのですが? 私が来て良いか尋ねる時、大概『すぐ来い』と返ってくるのです。
うん、会いたいって思ってくれてるのだよね。
その証拠に、私室を訪ねると、中に入りドアが閉まった途端にムギュッ! 抱き締められます。
後はお決まりのキスと、胸への顔埋め。
「ちょ? ルーク様?」
「癒されるなぁ」
「また育つから止めて…ほしいの…ですけど……」
「癒されるんだけどなぁ」
「もう、お蔭で『ポヨプニちゃん』なんですよ?」
で、冒頭の話。
まぁ確かに、愛撫され幸せ気分にはなりましたけど。
ルーク様は、闇教会の事もご存知です。私、ルーク様には全て話してます。尤も、お父様や国王陛下には話していませんけど、ルーク様も了承済みです。
「北魔大陸とは、あまり交易もしていないからな。情報が少なすぎだ。いや、待てよ? ヴォルコニアは交易しているはずだ! ならば…」
ちょっと考え込んだ後、ルーク様は、
「ミューク皇太子と連絡とってみるよ」
あまりにも大きく、信じがたい話。
対策を立てるには初動が遅かったのです。
ヴォルコニアのミューク皇太子から、交易相手のサイ=クェス連邦が滅んだ、と連絡があったのは三日後でした。
「滅んだ? 連邦が滅んだというのか?」
「ああ。魔族の襲撃ではないらしい。むしろ魔族が避難してきた? 押し寄せてきたって話だ。何か災厄レベルの魔物が出てきたらしいんだ」
ミューク皇太子も半信半疑のようです。
「魔物じゃないかもしれん。モルドが絡んでるところまでは確認がとれてるんだ。奴が邪神の封印を解いたかもしれない」
「邪神?」
「ザラードの伝承が、あの地にはある」
「ま、待て? ザラードは実在が確認されてる訳ではないし」
「ああ。でも、その可能性が一番高いんだ!」
二人の太子の話は、直ぐ様王へ報告されました。
私は、改めて闇教会を訪ねています。
「やはり邪神の封印を…」
「みたいです。確認するにも、北魔大陸は遠くて」
司祭は、何か思い悩んでいるみたいです。
「何か? 引っ掛かるものがあるのですか?」
「リスティア様、このことはご内密にお願いします。この教会の裏手、山に入って奥に祠があるのですが、魔族領につながるゲートがあります。この国、いや中央大陸で唯一稼働しているゲートです」
「祠? ゲート? どうして?」
「ディロスガイア教会の本山は魔族領にあるのです。だからという訳ではなさそうなのですが」
教会の裏手、山の中に入って少しすると、小さな祠がありました。その前に倒れている人影。
「もし? 大丈夫ですか? しっかりしてください!」
介抱しようと抱き上げると、頭の角に気付きました。
「え? これは魔族?」
耳の上から一回りして前に競り出す大きな角。魔族の少女?どうして?
「す、済まぬ。頼みが…ある。この国に『神竜の愛娘』が……いる…と聞いた」
「はい、あの、私です。私、リスティア=ミリューが、そう呼ばれてます」
魔族の少女は、マジマジと私を見ます。
「そなたが…。頼む、魔族を救ってくれ…」
気を失った? とりあえず闇教会に運びます。
「此の方は?」
「祠の前に倒れてたんです。多分避難してきた魔族?」
「この角…。リスティア様、多分此の方は魔王様。魔王レベッカ様だと思います」
「魔王?レベッカ様?」
見た感じは少女にしか見えない。
確かに私よりは年上に見えるけど…。
魔法で回復させて話を聞いて……、時間がない?
夕刻の鐘の音が響く。
今日はクーデルカ=グラント公爵令嬢がうちに来ます。交際五年。やっとレムオンお兄様との婚約が決まりました。
互いに好意を持っていらしたお二方。ここまで年月を費やさざるのは、ちょっとした権力闘争があったからでした。
三大公爵の一人で軍司令官たるお父様の権力は、ただでさえ強大です。国の兵権を抑えているのですから。
プラス王家と結ばれる事になりました。
私が、王太子と婚約したからです。次の王子の外祖父になれます。
国家を私物化できる地位に就くのです。
他家にとって、お父様の存在が脅威になりつつある時に、お兄様とクーデルカ嬢との交際が聞こえてきました。
クーデルカ嬢も三大公爵グラント家の令嬢です。グラント教皇の孫娘。
両家が一つになれば、兵権と神権が合体します!
王家すら覆せる存在。他家はそうはさせ時と猛抗議しました。
結局「有り得ぬ!」という王の一言で決着が着いたのですが、火種は燻ったままであり、その説得や調整で時間を取られ、婚約発表が今になってしまったのです。
これからの打ち合わせを兼ねたお茶会が今夜でした。
欠席は勿論、遅刻遅滞も許されません。
「彼女をお願いします。私、今日はもう帰らないと不味いです」
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後から思えば、『どうして?』と思えるくらい対応が遅れてしまいました。
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