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11.王太子妃 (ほぼ確定) の日常
感触
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施薬院での治療・介護活動。
ちょっとした事件が起こってしまいました。
「お嬢! 無自覚過ぎ。この『たゆん、ぷに事件』。周りが大騒ぎ!」
「お嬢様、私もカイルと同意見です。存在の影響力が大き過ぎるし、他と違い過ぎます」
馬鹿馬鹿しい事件名で、ピンと来る方もいると思います。
確かに初等部の時も、私が介護奉仕すると『公爵令嬢にしていただく訳には』『王太子妃殿下、畏れ多い事です』と拒否や恐縮される方がいたのです。
でも、今度のはそれプラス『王太子妃殿下に欲情してしまった? なんという不敬! 私は万死に値します』と言う方や、『王太子妃殿下のオッパイを味わえる』目当てでケガをする方が出てきたのです。
他と比べて、並以上に大きいとは思えないのですが、白い介護服の胸が、今は『たゆん、プク』って膨らんでいて、介護治療の時、『ぷに、ぽよん』と頭や肩、場合によっては顔に当たります。
「女性スタッフは他にもいるし? 皆も一緒でしょう? 私だけ特別というの変じゃない? そんな大きい訳ではないし…」
「お嬢!不敬な言い方…ですけど、…その『王太子妃殿下のオッパイ』は特別って思います」
「普通はあり得ない状況です、お嬢様」
施薬院の一室。
『万死』騒ぎのオジさんを、他の男性スタッフが宥め、安堵させて帰らせてから、私はカイルやチェレンから猛抗議プラスお叱りを受けているところです。
そこへダイアナ院長が入ってきました。
「リスティア様、ご苦労様。その、ごめんなさいね、貴女が悪くないのは分かるのですけど」
「私の立場が、もう皆さんにご迷惑掛けてる訳ですよね。院長の方が遥かに豊かだと思うのですが?」
「伯爵夫人とは言え子供も大きいオバサンと、うら若い『公爵令嬢』『王太子妃』とではね。それに貴女は、この国、いえ世界中で一番人気のある女性なのよ?」
ふぇ? 一番人気って?
ちょ? カイル?チェレン? 頷かないで! 恥ずかしいよ!
「潮時かもしれないわね。リスティア様、おそらく色々な行事や公務が増えてくると思います。ここでの活動を減らす時期に来ていたのかもしれません」
「やむを得ず、ですか? 私が納得できる理由を見つけてくださり、ありがとうございます。それにクビでは無いのですよね」
「ずっと続けたい。そう仰有ってましたわね。何とか空いた時間があれば、お願いしたいと思います」
ダイアナ院長、本当にありがとうございます。
施薬院からの帰宅後、左手首にある腕輪の装飾の宝石が、チカチカ光りました。
「五回? 直ぐ来い? ルーク様?」
初等部修了のお祝いにルーク様から貰った腕輪。
ついている宝石は、点滅する事で、ちょっとした合図・ルーク様からの連絡を教えてくれます。
あ、その、『王太子妃』の立場で公務の時は左薬指に指輪してます。婚約指輪、ルーク様の瞳と同じグレイブルーの魔法石がついているもの。
ちなみに、ルーク様が嵌めているのは私の瞳と同じライトグリーンの魔法石の指輪です。
急いで身仕度して王城へ。
案内されたのは、ルーク様の私室でした。
「ごめん、急に呼び出したりして」
「いえ、何か御用でしょうか? ルーク様」
あれ? 何か言いにくそう?
「その、聞いたんだ、…『たゆん、ぷに』事件」
ふぇ? 恥ずかしいよ! しかもそれが正式名なの?
「…申し訳ありません、ルーク様。私が軽率なばかりに要らぬ騒ぎになってしまいました」
「ダイアナ院長から聞いた。だから君の気持ちは分かる。困惑してる、納得できないのも…。でも、その、ごめん」
抱き締められ、胸に顔を埋められました。
「全部分かってる。でも、ごめん…、君の胸…、いや君を独り占めしたくて、つい呼び出した」
うわぁ、ルーク様? 正直過ぎです。
「ごめ…」
謝るルーク様の言葉を遮る方法。口を塞ぐ大胆なやり方。女神様、光神銀竜様! 私に勇気をください!
Chu!
「…私は、何時だってルーク様のものです。だから、今、世界中で一番幸せな女なんです」
「…リスティア?」
「はい、ルーク様」
微笑む、幸せな二人。
「君からキスされるとは思わなかったな」
ふわぁーん! やっぱり大胆過ぎですか?
「ありがとう。本当に君に甘えてばかりだな、私は」
「嬉しく思います。私も、フフ、ルーク様にヤキモチ妬かれるとは思いませんでした」
逆襲!って、ルーク様?
「そういうことを言うのは、この可愛い口かな?」
Chu!
だめです。やっぱりルーク様に勝てません。
落ち着いて、ソファに座る二人。
「ヤキモチは妬くよ。私もそこまで聖人君子ではないし。それに、君は『前科アリ』だし」
「ふぇ? ルーク様!」
「その唇を許そうとした事、私はショックだったんだ」
「わ、忘れてください!」
四年前、施薬院での治療作業中に近所の男性が溺れて担ぎ込まれた時、蘇生行為の為、私は人工呼吸をしようとしました。
途端に大騒ぎ!
婚約者のいる女性が、他の男性にキスしようとした!
婚約解消にも匹敵する大痴態。皆に怒られ、ルーク様はショックを受け、数日間学校を休まれ、本当に大事だったのです。
「忘れられないよなぁ。本当に…」
Chu!
「ここ、本当にルーク様独占ですから。お父様にもお兄様にも許していませんから!」
こんなにいっぱいキスしたの初めてです。
頭ぐるぐる。恥ずかしいよ!
「うん、安心した」
「…意地悪ですぅ、ルーク様」
カイル達に知られたら「バカップルですか?」って絶対言われそう。そんな幸せな一時。
この頃は私も、世界も平穏無事だったのです。
ちょっとした事件が起こってしまいました。
「お嬢! 無自覚過ぎ。この『たゆん、ぷに事件』。周りが大騒ぎ!」
「お嬢様、私もカイルと同意見です。存在の影響力が大き過ぎるし、他と違い過ぎます」
馬鹿馬鹿しい事件名で、ピンと来る方もいると思います。
確かに初等部の時も、私が介護奉仕すると『公爵令嬢にしていただく訳には』『王太子妃殿下、畏れ多い事です』と拒否や恐縮される方がいたのです。
でも、今度のはそれプラス『王太子妃殿下に欲情してしまった? なんという不敬! 私は万死に値します』と言う方や、『王太子妃殿下のオッパイを味わえる』目当てでケガをする方が出てきたのです。
他と比べて、並以上に大きいとは思えないのですが、白い介護服の胸が、今は『たゆん、プク』って膨らんでいて、介護治療の時、『ぷに、ぽよん』と頭や肩、場合によっては顔に当たります。
「女性スタッフは他にもいるし? 皆も一緒でしょう? 私だけ特別というの変じゃない? そんな大きい訳ではないし…」
「お嬢!不敬な言い方…ですけど、…その『王太子妃殿下のオッパイ』は特別って思います」
「普通はあり得ない状況です、お嬢様」
施薬院の一室。
『万死』騒ぎのオジさんを、他の男性スタッフが宥め、安堵させて帰らせてから、私はカイルやチェレンから猛抗議プラスお叱りを受けているところです。
そこへダイアナ院長が入ってきました。
「リスティア様、ご苦労様。その、ごめんなさいね、貴女が悪くないのは分かるのですけど」
「私の立場が、もう皆さんにご迷惑掛けてる訳ですよね。院長の方が遥かに豊かだと思うのですが?」
「伯爵夫人とは言え子供も大きいオバサンと、うら若い『公爵令嬢』『王太子妃』とではね。それに貴女は、この国、いえ世界中で一番人気のある女性なのよ?」
ふぇ? 一番人気って?
ちょ? カイル?チェレン? 頷かないで! 恥ずかしいよ!
「潮時かもしれないわね。リスティア様、おそらく色々な行事や公務が増えてくると思います。ここでの活動を減らす時期に来ていたのかもしれません」
「やむを得ず、ですか? 私が納得できる理由を見つけてくださり、ありがとうございます。それにクビでは無いのですよね」
「ずっと続けたい。そう仰有ってましたわね。何とか空いた時間があれば、お願いしたいと思います」
ダイアナ院長、本当にありがとうございます。
施薬院からの帰宅後、左手首にある腕輪の装飾の宝石が、チカチカ光りました。
「五回? 直ぐ来い? ルーク様?」
初等部修了のお祝いにルーク様から貰った腕輪。
ついている宝石は、点滅する事で、ちょっとした合図・ルーク様からの連絡を教えてくれます。
あ、その、『王太子妃』の立場で公務の時は左薬指に指輪してます。婚約指輪、ルーク様の瞳と同じグレイブルーの魔法石がついているもの。
ちなみに、ルーク様が嵌めているのは私の瞳と同じライトグリーンの魔法石の指輪です。
急いで身仕度して王城へ。
案内されたのは、ルーク様の私室でした。
「ごめん、急に呼び出したりして」
「いえ、何か御用でしょうか? ルーク様」
あれ? 何か言いにくそう?
「その、聞いたんだ、…『たゆん、ぷに』事件」
ふぇ? 恥ずかしいよ! しかもそれが正式名なの?
「…申し訳ありません、ルーク様。私が軽率なばかりに要らぬ騒ぎになってしまいました」
「ダイアナ院長から聞いた。だから君の気持ちは分かる。困惑してる、納得できないのも…。でも、その、ごめん」
抱き締められ、胸に顔を埋められました。
「全部分かってる。でも、ごめん…、君の胸…、いや君を独り占めしたくて、つい呼び出した」
うわぁ、ルーク様? 正直過ぎです。
「ごめ…」
謝るルーク様の言葉を遮る方法。口を塞ぐ大胆なやり方。女神様、光神銀竜様! 私に勇気をください!
Chu!
「…私は、何時だってルーク様のものです。だから、今、世界中で一番幸せな女なんです」
「…リスティア?」
「はい、ルーク様」
微笑む、幸せな二人。
「君からキスされるとは思わなかったな」
ふわぁーん! やっぱり大胆過ぎですか?
「ありがとう。本当に君に甘えてばかりだな、私は」
「嬉しく思います。私も、フフ、ルーク様にヤキモチ妬かれるとは思いませんでした」
逆襲!って、ルーク様?
「そういうことを言うのは、この可愛い口かな?」
Chu!
だめです。やっぱりルーク様に勝てません。
落ち着いて、ソファに座る二人。
「ヤキモチは妬くよ。私もそこまで聖人君子ではないし。それに、君は『前科アリ』だし」
「ふぇ? ルーク様!」
「その唇を許そうとした事、私はショックだったんだ」
「わ、忘れてください!」
四年前、施薬院での治療作業中に近所の男性が溺れて担ぎ込まれた時、蘇生行為の為、私は人工呼吸をしようとしました。
途端に大騒ぎ!
婚約者のいる女性が、他の男性にキスしようとした!
婚約解消にも匹敵する大痴態。皆に怒られ、ルーク様はショックを受け、数日間学校を休まれ、本当に大事だったのです。
「忘れられないよなぁ。本当に…」
Chu!
「ここ、本当にルーク様独占ですから。お父様にもお兄様にも許していませんから!」
こんなにいっぱいキスしたの初めてです。
頭ぐるぐる。恥ずかしいよ!
「うん、安心した」
「…意地悪ですぅ、ルーク様」
カイル達に知られたら「バカップルですか?」って絶対言われそう。そんな幸せな一時。
この頃は私も、世界も平穏無事だったのです。
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