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3.新年度、学校で

医術

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 医学の授業って言うか休日の実地体験です。

 王都郊外の教会で医療行為の見学、及び体験してます。医学を選択したのは三人。私と騎士爵位令嬢のシア=デイル、薬師の息子のマイク=ドーン。
 で、護衛のカイル。
 
 どうしてカイルが自習って言って時間割開けたのか? 私のせいだよね? ごめん、そしてありがとうカイル。
 普通に側にいるから、いつもいるから気付かなかった。私しかとっていない授業、カイルはただ護衛についているのです。

 さて、この世界は魔法医療です。回復魔法で大概何とかなるのです。ケガの治療がメインですけど毒や大人の二日酔いまで。

 でもこの日、急患の重病患者が担ぎ込まれてきました。

 「司祭様いますか?うちの人が!」

 血相を変えて入ってきた婦人と苦痛に顔を歪ませて呻く男性。何かお腹を押さえて両脇抱えられて。
 え?何か臭い?

 「吐いて下して大変なんだ」

 脇で支える男性が訴える。
 とにかくまずはベッドに寝かせる。

 何?食当たり? え?でもこの人だけ?違うもの食べた?

 司祭様も医学の講師フィン=カーター先生も同じ事考えた?

 「同じものです。なのにこの人だけ」
 「何食べた?生のモノ?」

 揚げ物やお肉、とにかく脂っこいモノばっかり。油?まさか?

 司祭様と先生が何だろうと考えてる中、ピンとくるものがあった私は寝ている患者の横に座る。

 「痛いの、ここですか?」
 
 お腹をやさしくゆっくり触っていく。

 「その下。あぁ、そ、そこ!くっ!」

 あ、ある。お腹にしこり。これって、うん、間違いないと思う。
 司祭様と先生が私を見る。

 「何か、しこりがあるんです。ここ」

 私に言われて先生も触る。
 先生もピンときたみたいだ。

 「カーター先生?」

 司祭様が尋ねる。先生、ちょっとつらい表情。

 「多分、黒変臓病。胃が変化しつつあるんだ」

 患者とその奥様、顔色真っ青!

 黒変臓病。内臓が黒く変化していく奇病。傷みを伴い黒変が広がり、やがて死んでしまう病気。回復魔法でも治らない奇病で数年で命を失う。
 
 前世の知識で癌と言われていた病気。そうか、癌の治療は確か…。これを魔法に置き換えて…。

 「黒変臓病?え?あ、あの、そんな!」

 泣き崩れる奥様。患者の男性茫然。うん、不治の病で、治療方法がないのだから。でも、…私なら。

 「先生!私…、あの、治療して、いいですか?」

 みんながびっくりして私を見ます。

 「リスティア嬢?え?できるの?何か知っているの?」

 頷く私。先生と患者を見る。

 「お願いします!何か治療できるのなら。お願いします!!」

 奥様が叫ぶ。頭を下げる。先生も頷く。

 「私を信じてください。楽にして、スリープ!」

 まずはリラックスしてもらい眠ってもらう。

「スタン!」麻酔代わりの麻痺呪文。
 しっかり患部を把握するため、透視呪文「クリア・アイ」。
 うん、見えた。この黒く変化したところだけもぎ取る。転移呪文「アポート!」。
 で、すぐ再生「ハイヒール!」。よし!麻痺呪文利いてるから出血もあまりない。胃が再生していく。うん、外科手術完了。

 「もう、大丈夫!黒変した部分を切除して残ったキレイな臓器を再生しました。見る限り他に黒変した部分はありませんから、これで黒変臓病治ったと思います」

 周りの驚嘆の顔!

 「お嬢!スゲェ!」

 カイル、びっくりしすぎ!って先生も‼︎

 「回復魔法効かない病気に、補助魔法の組み合わせで取り除くなんて!本当にすごい‼︎リスティア嬢、誰に聞いたの?どこで覚えた?」
 「あ、あの、お、お母様からです」

 ごめんなさいお母様。名前借ります。

 「そうか、君の母上は天才魔術師アイラ=シャーリー、いや、ミリュー公爵妃か」

 流石はお母様。説得力あります。後で報告したら、ある意味騒ぎになっていて、「事前に報告しなさい」と怒られました。だって…、急患だよ?

 でも治って良かった。うん、頭にある異世界の知識。上手く使えて万事O.K.だよね?

 この事が、医学界と魔術師の間で大革命の騒ぎになっていくなんて!私、まったく思ってなかったのです。
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