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1巻
1-1
しおりを挟むプロローグ 攻略対象その五と同じ世界に転生だそうです
唐突ですが聞いてください。
私には愛してやまない人がいました。
その人の名前はノルディア・カモミツレ。
『君と紡ぐ千の恋物語』、ファンからは略して『君紡』と呼ばれていた乙女ゲームの攻略対象の一人でした。
鳶色の短髪に、紅玉のような瞳。
魔力の強大さが全ての価値基準の世界で、魔力を全く有していないにもかかわらず、王族の護衛騎士になってしまうほどの剣士がノルディア様です。
魔力なしということで馬鹿にされたとしても、決して前に進むことをためらったりしない、信念に真っすぐなところは格好良くて。
それなのにブランデーの効いたチョコレートケーキが大好きで、「男の癖に恥ずかしい」と隠そうとするところは、思わず直視できないほど可愛すぎるくらいで。
何度SNSで「ノルディア様が大事にする剣になりたい! それが無理なら汗の染み込んだタオル! 吐く息でも可! でもこれから吸われる空気でも……」と呟いたことでしょう。
私にとってノルディア・カモミツレという存在は、液晶画面の向こう側、どうやったって手の届かない二次元のゲームの中のキャラクターだったけれど。
それでも、この世の何よりも愛していて、生きる理由と言っても過言でない存在でした。
さて、私がなぜ急にそんなことをつらつらと考えたかと言いますと……
「わぁ~! 可愛い赤ちゃん!」
ニコニコと私の顔を覗き込むその人が、どう見ても『君紡』の攻略対象その三の、リージア・ホワイトリーフでしかなかったからです。
白銀の髪に、緑色の瞳。それから、優しそうな印象を与えるタレ目。
幼い見た目になってはいるものの、『君紡』のパッケージに描かれていたキャラクターにそっくりです。
「あぅ⁉(え⁉)」
私の口から漏れた驚愕の声は、見事に赤ちゃんの声に変換されています。
つまり……もしかしてこれは……
「僕がユナのお兄ちゃんだよ。よろしくねぇ」
突然抱っこされた私はその分視点が高くなり、その視界には満面の笑みを浮かべたリージアがいました。
ニコニコとするリージアの言葉は、紛れもなく私に向けられたもので……
「あうううううううううう(ええええええええええ)⁉」
私、ノルディア様と同じ世界に生まれてしまいました⁉
つ、つ、つ、つまり私のいるこの世界の空気は、ノルディア様が吐いた息も混ざっているということでしょうか?
え、私、そんな神聖な空気を吸ってしまって良いのですか? 罰が当たったりしませんか?
というかこれは夢ではなく⁉
夢でないとしたら、前世の私、どんな徳を積んだらそんな奇跡が起きるのです⁉
……何にせよグッジョブです‼
突然奇声を上げた私に、リージア……いえ、リージア兄様……リー兄がびくっとしてしまいました。申し訳ないです。
リー兄は、乙女ゲームの攻略対象というだけあって、非常に顔が良いです。驚いた顔ですら、こちらがびっくりしてしまうくらい整っています。
私の顔も、せっかくなら可愛いと良いのですが。そしてできることなら、ノルディア様の好みに合っていると良いのですが……
そんなことを考えていると赤ちゃんの体力に限界がきたようで、急激に睡魔が襲ってきます。
うと、と瞼が落ちていく中、リー兄が「お休み」と額にキスをしてくれました。
……ちなみにユナ・ホワイトリーフは『君紡』の中では悪役でした。
どの攻略対象のストーリーを進めても、必ず妨害を行ってくる悪役令嬢。ファンからの好感度は低いキャラクターです。
かく言う私も、『君紡』のユナには、ノルディアとの攻略の邪魔を何度もされていましたが。
推しと同じ世界に転生をしたということに興奮して、すっかり頭から抜け落ちてしまっていたけれど……
「あら、ユナちゃん。もう起きたの?」
目を覚ますと全部夢だった……ということはなく、やっぱりユナのままでした。
お母さんと思われる銀髪の女の人が、私を抱きかかえながら「ユナちゃん」と呼び掛けてきます。
どうやら、本当にノルディア様のいる『君紡』の世界に転生しているようです。
そうとわかれば、さっそくノルディア様に会うための脳内作戦会議を……
「ユナちゃん、もう少しおねんねしましょうね~」
作戦会議を……
「ねんねんころり、ねんねんこ」
……さくせんかいぎ……
「いい子ね、私の天使ちゃん」
さくせ…………
お母さんの子守歌攻撃に、なんとか寝たふりが成功したのは、作戦会議をしようと思い立ってから一週間後でした。
赤ちゃんの体力は思っていたより減りが早いようです。意思に関係なくすやぁです。
まずは『君紡』の主要登場人物を思い出して、情報の確認をしておきましょう。
えーっと……
攻略対象その一、フェリス・ユーフォルビア。
確か、私のいるユーフォルビア王国の第一王子でした。
攻略対象その二、ルーファス・ラベント。
乙女ゲームの舞台である学園の先生だったはずです。
攻略対象その三、リージア・ホワイトリーフ。
ユナ・ホワイトリーフ……つまりは現在の私のお兄様で、確か公爵家の長男だったと思います。
攻略対象その四、レオン・キュラス。
隣国・キュラスの第二王子で、ユーフォルビア王国に留学にきたという設定だったような気がします。
そして……攻略対象その五、ノルディア・カモミツレ。
魔力が一切ない特異体質にもかかわらず、剣の腕一つでフェリス王子の護衛の地位まで上り詰めた、とんでもなく格好良いお人です‼
身長は、『君紡』公式データでは百八十三センチメートル。筋肉がしっかりと付いた体型で、体重は非公開。
好物はブランデーの効いたチョコレートケーキと、お酒に合う味のもの。
苦手なものは味の薄い固いもので、戦場で食べた携帯食料とそこで死んだ騎士の仲間を思い出してしまうからという理由なのです。
ああああああああ優しいいいいいいいい‼
髪の色は赤がほんのり混ざったような茶色で、瞳の色は綺麗な赤色。
左耳にだけ赤色の魔石で作られたピアスを着けていて、実はそのピアスは『君紡』の中のリー兄が作った魔道具なのです。
魔力を持たないノルディア様が、窮地に陥った時にのみ結界を張ってくれる魔道具は、ノルディア様の容姿をさらに際立たせてしまう危険なアイテムです‼
性格は自分の信じたことに真っすぐ。
ある程度の好感度が上がるまでは、フェリス王子の護衛だからと「はい」、「いいえ」しか返してくれないノルディア様は、本当に仕事に真面目で格好良いです‼
好感度が上がってくると会話ができるようになりますが、しっかり好感度を上げておかないと、王都に魔物がやって来るイベントで、ヒロインや街の住民を守って命を落としてしまうのです……
ノルディア様が死んでしまうなんて、考えただけで涙が滲んでしまって駄目です。
ちなみに、ちゃんと攻略成功になると「お前と一緒に生きたい」と、自分の命も大事にしてくれるようになります。
性格も少し柔らかく、甘い雰囲気になって。そうすると時々見せてくれる笑顔が本当に言葉にできないほどに整っていて…………あ、無理です。想像だけで格好良すぎます‼
と、まぁ……登場人物はこんな感じだった気がします。
改めて思い返すと、私はほとんどノルディア様の攻略イベントしかやっていないので、ノルディア様以外の情報量が少なすぎますね。
もうすでに前途多難な気がしますが、一応ストーリーも思い出しましょう。
確かヒロインさんは平民だったのですが、ある日突然ローズマリーと名のる男爵がやって来て、初めて自分に巨大な魔力が宿っていると知るのです。
ユーフォルビア王国では魔力量は多ければ多いほど良いとされるので、ローズマリー男爵はヒロインを引き取って養女にします。
ヒロインさんはその後、貴族や裕福な家の子供しか通えない学園に通うことになり、そこで出会った攻略対象達との恋の物語が始まります。
そして悪役令嬢のユナ・ホワイトリーフの妨害を乗り越えて、ハッピーエンドを目指していく……といった王道の話でした。
…………やっぱり情報量が少ないです⁉
なんだか、最初から行き詰まってしまった感があります。
でもこのままだと、ノルディア様が今どこにいて、何をしているのか、乙女ゲームが始まる前に出会う方法がわからない状態です。
これは冷静に考えないといけません。
まず、ゲーム開始時のノルディア様の年齢は二十五歳でした。
ヒロインさんと王子様、そしてその恋路を邪魔する悪役令嬢ユナの年齢は十五歳。つまり、私が生まれたばかりの今、ノルディア様は十歳ですね。
ノルディア様、十歳。
ノルディア様の十歳とか……絶対に可愛いです……‼
なんで私は今、〇歳なのでしょう⁉
見に行くことができません……‼
むしろ、ノルディア様の成長過程を〇歳から見守りたかったのです‼
……話が脱線してしまいました。
ノルディア様はあと五年後に騎士の育成学校に通うはず。魔力がないということで嫌がらせを受けながらも三年後無事卒業し、すぐに隣国との戦争の最前線に送られてしまいます。
『君紡』公式サイトから、ノルディア様の過去として発表されていたので間違いありません。
つまり私が八歳になった時、その時までにある程度の戦力を有していれば、ノルディア様を助けることができます‼
もちろんノルディア様が、戦いで後れを取るとは思っていませんが……ノルディア様であっても全ての人を守れる訳ではありません。
守り切れなかった人のためにノルディア様の心が痛まないよう、その負担が減るよう、私も今から備えておきましょう‼
今の私は公爵家の令嬢‼
魔力もある程度は絶対にあるはずです‼
思い立ったが吉日、今日から……いえ、今から魔法の特訓です‼
……公爵令嬢ということは、やっぱり話し方もお嬢様らしくした方が良いでしょうか?
お嬢様……お嬢様言葉……ですの?
第一章 攻略対象その五に会いたいのです
アイキャンフラーイ!
風になるのです‼
あ、お久しぶりです。ユナ・ホワイトリーフ、五歳です。
私は今……風魔法の応用で空を飛んでいるのです!
遡ること五年前、この世界に生まれた私は少しずつ魔法を使いこなせるようになって、最愛のノルディア様に会いに行こうと思いました。
毎日ノルディア様を想いながら、魔力切れで倒れるまで魔法を使い続け……今では火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、光魔法に闇魔法と、基本的な属性の魔法は使えるようになったのです。
そしてついに、風魔法で体を浮かせられるようになったのが三か月前!
安定して飛べるようになり、さらに進んでいる時の風の抵抗を受け流して、快適に飛べるようになったのが先日!
ここまで来たらもう……ノルディア様に会いに行くしかないでしょう‼
……と、やる気満々で部屋を飛び出したのがつい一時間前のことです。
誰もいなかったはずの部屋から、「ユナ様、なんで窓から身を乗り出して……って、飛んで⁉ え、え、えええええ⁉」という声が聞こえたような気もしましたが、恐らく気のせいです。
一瞬護衛の人かな、と思いましたが、部屋の中には誰もいなかったので、気のせいということにしておきます。
……ノルディア様に一刻も早く会いたくて、気のせいだと思い込むことにした訳ではありません。
「だって生ノルディア様には誰も勝てないのです。仕方がないですの」
顔も知らない護衛さん(と思われる人)よりもノルディア様です! ……と思っていたのですが…………ノルディア様はどこにいるのです⁉
多分、騎士学校に通っているはずなのですが、騎士学校の場所がわからないのです!
リ、リサーチ不足でした……!
街に出れば、なんとなくゲームの情報を頼りに行けるかと思ったのですが、ゲームでは主要施設以外はカットされていた上に、選択肢でパパッと移動できていましたから、まるでわかりません。
悔やんでも仕方ないので、一度街に降りて情報を集めることにしましょう。
「安いよ安いよ~! オレンジが一つ五十ウォル! まとめ買いでさらに値引くよ~!」
「今朝取れた新鮮魚介類! 売り切れたら店仕舞い!」
「冒険者ギルド、依頼受け付け中でーす♪」
人気のない場所からそっと降りてみた街は活気に満ち溢れ、たくさんの人が通りを歩いています。
フラフラと余所見をして歩けば、誰かしらに蹴飛ばされてしまいそうです!
そんな場所に突き進む勇気が持てず、大通りの隅からそっと周りを見ていれば、たくさんある屋台の一つ、『いちご飴』と書かれた看板のお店にいる方が、こちらを心配そうにチラチラと見つめているのに気付きました。
体は大きめで、五歳児の私からしたら巨人のような印象を受けますが……あの視線は「迷子? 大丈夫かな?」と言っているのです! 絶対良い人です!
「あの、騎士学校に行きたいのです! 場所を知っていたら教えてほしいのです!」
なぜかいちご飴の屋台にはお客さんが一人もいないので、歩きやすくて良いですね!
私が近付いて店主さんにそう言うと、周囲がざわめきました。
「え? あ、オレに言ってるのか?」
「もしかして、騎士学校の場所を知らないのですか?」
店主さんの顔を見るには、首をまっすぐ上に上げないといけなくて少し疲れます。
びっくりした顔の店主さんに落胆の色を隠せずに聞けば、「い、いや、知っている」と道を答えてくれました。
意外と近い場所にあるみたいです! お礼に屋台の商品を買ったりできれば良かったのですが、今日はお金を持ってきませんでした……!
店先に並ぶ綺麗ないちご飴をチラリと見てそう思っていれば、店主さんは私の視線を辿り……
「良かったら……一つやる」
売り物のいちご飴を差し出してくれました⁉
「良いのですか⁉」
「……見ての通り、売れ残りばっかりだから」
寂しそうに笑う店主さんに、遠慮なく一つ頂いて……キラキラと輝くいちご飴を口に含めば、優しい甘さといちごの酸味が口いっぱいに広がりました。
「とっても美味しいですの!」
「……良かった」
「ありがとうですの! 次はお金を持って買いに来るのです! ハッ! ノルディア様の差し入れにしても良いのです‼」
ぺこりと頭を下げて、店主さんに教えてもらった騎士学校の方向へと走ります。
背後から「次?」と、店主さんの呆けたような声が聞こえた気がしました。
「……次も、来てくれるのか? 皆から怖がられる、俺の店に?」
何やら真剣そうな声ですが……多分、あれは店主さんの独り言でしょう!
ノルディア様が近いというのに、立ち止まっている暇はないのです!
いちご飴店の店主に教えられた通りに道を歩いていくと、すぐに騎士学校が見えてきました。
「やっとノルディア様に会えますの!」
画面上のノルディア様も格好良かったですが、三次元のノルディア様もきっと格好良いはずなのです。
今は十五歳のノルディア様の姿を考えるだけで動悸が……‼
……なんて、上の空で考えていたのがいけなかったのです?
「捕まえたぞ! ずらかれ!」
「……⁇」
一瞬、何が起きたのか全くわかりませんでした。
まるで走っているかのように流れる風景、私の体を掴む人攫いの太い腕、遠ざかっていく騎士学校……遠ざかっていく騎士学校⁉ ノルディア様が遠ざかっていくのです⁉
「ノルディア様と私を引き離すなんて、万死に値するのです。氷魔法〈氷の……」
「いよっしゃぁ! こんな上物が手に入るなんてツイてるな! コイツを売れば、今までの比じゃない位の大金が手に入るぞ‼」
鍛え上げた魔法で人攫いさんを倒してしまおうかと思ったのですが……どうやらこの人攫いさん、話を聞く限り常習犯のようです。
手足も縛られず口も塞がれず、ただ片手で抱えられて走っているだけなので逃げ出すのは簡単ですが……このまま逃げてしまうと別の子供が被害に遭ってしまいそうです。
「兄貴! うまくいきやしたね!」
「やっぱり兄貴はスゲェや!」
考えている間にも、どこに隠れていたのか子分のような男二人組が現れます。三人で細い路地を幾つも曲がってどこかに向かっていますが、その動作も手馴れているようです。
「ノルディア様に早く会いたかったのですが、仕方ないのです」
「はぁ」とため息をついて、人攫いさんの腕に体を預けます。
もしもノルディア様がゲーム通り、優しくて正義感の強いお方だったなら、子供が誘拐されるのを黙って見過ごすはずありません。
私はノルディア様の隣に立った時に、ノルディア様に会った時に、恥じない自分でいたいのです‼ そのためにはまずアジトまで連れ去られて、人攫い集団を一網打尽ですの‼
「兄貴、出荷はいつにする?」
「兄貴! こいつの服も綺麗だ! これだけでも高く売れるか?」
「おいおい、落ちつけ。出荷は高い値を付ける買い手が現れるまでは保留だ。小物から足がついたら厄介だから、これはセットで売りつける。わかったな?」
「「へい、兄貴!」」
……と、思って大人しくしていたのですが、あれ? アジトらしき小屋に着いてしばらく待っているのに、最初の三人から増えません。
「あの、人攫いさん達の、他のお仲間はいつ来るのですか?」
おそるおそる、私を抱えてここまで走ってきた「兄貴」と呼ばれている人攫いさんに聞いたのですが……
「俺様達は三人組の人攫い、悪名高きペジット三兄弟って言えばガキでも知ってんだろ!」
答えてくれたのは違う人攫いさんでしたの。とりあえず、ペジットAさんと呼びますが…………今の話が本当なら、誘拐犯は兄貴さん、ペジットAさん、ペジットBさんで終わりですの⁉
何という少数精鋭……最初からそうとわかっていれば、わざわざこんなに騎士学校から離れたところまで連れ去られる必要もなかったのです……
さっさと倒して、ノルディア様のいる騎士学校に戻りましょう……
――コンコンコン
「「「「???」」」」
魔力を高めていたタイミングで響いたノックの音に、思わず人攫い三兄弟を見てしまいましたが、三人ともハテナマークを浮かべています。
「兄貴、誰か呼んだか?」
「いや、来客の予定はない」
「俺が見てくる」
ペジットBさんが玄関まで歩いていき、扉を開けた瞬間……足下から何かが勢い良くペジットBさんの顎を打ち上げました⁉
ゴスッと鈍い音がしてペジットBさんは倒れてしまいましたが、あれは絶対に痛いです……
ペジットBさんの体が地面に倒れたことで、扉の外の様子が見えるようになりました。
「白昼堂々人攫いなんて油断しすぎじゃねェか? いつもはコソコソ動く臆病野郎共が、上玉見つけて舞い上がりすぎだろ」
振りあげられていた木刀の切っ先が、ゆっくりと室内に向くように下ろされてきます。
白地に赤の差し色が入った制服に身を包み、好戦的な瞳で人攫いさんを睨みつけるとてつもなく格好良い青年。
…………ノルディア様にしか見えないのですけれども⁉
ななななな、なんでノルディア様がこんな場所に⁉ でもあんなに格好良い人が、ノルディア様以外にいるはずがありません‼
混乱で固まる私に、ノルディア様がニッと笑みを浮かべます。
「嬢ちゃん、安心しろ。すぐに助けてやっからよォ」
決して優しい笑顔ではないのですが、自信に満ち溢れたその笑顔は格好良すぎるのです。
しかも、私のために、ノルディア様が作ってくれた笑顔。
画面越しでしか見ることのできないと思っていた笑顔が私のために……感動で視界が滲んで、生ノルディア様が見えないのです……‼
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