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そうして皆、幸せに…
しおりを挟む「ねぇ、お母さん。結局セルディナ様は幸せだったのかな?」
「セナが幸せだったか、そうじゃなかったか、きっと皆言うことは違うさ」
墓参りを終えてピクニックついでに森を歩いていたダリアは、子供の疑問に少し考えてからそう答えた。
子供は不服そうに唇を尖らせた。
「お母さんの言ってること、よくわからない」
「そのうちちゃんと教えてやるよ。魔物を愛した英雄と、英雄を愛した魔物の話を。ま、身勝手な悪役令嬢の国をも巻き込んだ大恋愛って言う奴もいるけどな。」
だけど、とダリアは続ける。
「だけどそうだな…アタシはきっと、あの男がセナについてるなら…きっとセナは悪役と言われようが、楽しそうに笑うんだ。」
ギナンが違いないと笑って答えた。
―――きっとセナは幸せなはず。
『ロキ!見て!ダリアとギナンの子供よ!』
『微笑ましいですね』
『ねぇロキ、本当に後悔してない?』
『していませんよ』
『だって、私と一緒に来なければ、ロキにだって家族ができてたかもしれないのに…』
『良いのです。貴女との家族なら欲しかったかもしれませんが』
『…ごめんね』
『何がですか?』
『私、ロキのことが信じられなかったの。私のことを大事に思ってくれてるんて、思ってもなかったの』
『だから私を置いて?』
『ごめんなさい』
『…なら私も同罪です。魔物を守ると言いながら、最後は生きたいと言うと思っていたのです』
『死ぬことを選ぶなんて思ってなかった?』
『見くびっておりました』
『ふふ、ならおあいこね』
『ええ、おあいこですね』
『一人でも良いって思ってた。けど、ロキがいてくれてやっぱり良かったわ。ロキは今、ちゃんと幸せ?』
『貴女が幸せになれと言って、私はここに来たのですよ?幸せでないとでも?』
『ねぇ、ロキ。大好きよ』
『私も、お慕いしております』
『ちゃんと言葉にして!あと呼び方も。もうセルディナ様なんて堅苦しいのは嫌』
『セナ………様。愛しています』
ふと、頭上を見上げたダリアは、ふわりと花咲くような笑みのセルディナが見えたような気がした。
「…いや、まさかな」
けれどもしかしたら、セルディナとロキならば、この国を、かつて魔物だった者たちを、今なお見守っているのかもしれない。
これは、悪役とも、英雄とも呼ばれる少女の話。
ハッピーエンドかバッドエンドか、けれどきっと、皆最後は笑えるようになる日がくる。
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