上 下
7 / 7

そうして皆、幸せに…

しおりを挟む


「ねぇ、お母さん。結局セルディナ様は幸せだったのかな?」


「セナが幸せだったか、そうじゃなかったか、きっと皆言うことは違うさ」


 墓参りを終えてピクニックついでに森を歩いていたダリアは、子供の疑問に少し考えてからそう答えた。

 子供は不服そうに唇を尖らせた。


「お母さんの言ってること、よくわからない」


「そのうちちゃんと教えてやるよ。魔物を愛した英雄と、英雄を愛した魔物の話を。ま、身勝手な悪役令嬢の国をも巻き込んだ大恋愛って言う奴もいるけどな。」


 だけど、とダリアは続ける。


「だけどそうだな…アタシはきっと、あの男がセナについてるなら…きっとセナは悪役と言われようが、楽しそうに笑うんだ。」


 ギナンが違いないと笑って答えた。


 ―――きっとセナは幸せなはず。













『ロキ!見て!ダリアとギナンの子供よ!』


『微笑ましいですね』


『ねぇロキ、本当に後悔してない?』


『していませんよ』


『だって、私と一緒に来なければ、ロキにだって家族ができてたかもしれないのに…』


『良いのです。貴女との家族なら欲しかったかもしれませんが』


『…ごめんね』


『何がですか?』


『私、ロキのことが信じられなかったの。私のことを大事に思ってくれてるんて、思ってもなかったの』


『だから私を置いて?』


『ごめんなさい』


『…なら私も同罪です。魔物を守ると言いながら、最後は生きたいと言うと思っていたのです』


『死ぬことを選ぶなんて思ってなかった?』


『見くびっておりました』


『ふふ、ならおあいこね』


『ええ、おあいこですね』


『一人でも良いって思ってた。けど、ロキがいてくれてやっぱり良かったわ。ロキは今、ちゃんと幸せ?』


『貴女が幸せになれと言って、私はここに来たのですよ?幸せでないとでも?』


『ねぇ、ロキ。大好きよ』


『私も、お慕いしております』


『ちゃんと言葉にして!あと呼び方も。もうセルディナ様なんて堅苦しいのは嫌』


『セナ………様。愛しています』














 ふと、頭上を見上げたダリアは、ふわりと花咲くような笑みのセルディナが見えたような気がした。



「…いや、まさかな」



 けれどもしかしたら、セルディナとロキならば、この国を、かつて魔物だった者たちを、今なお見守っているのかもしれない。










 これは、悪役とも、英雄とも呼ばれる少女の話。

 ハッピーエンドかバッドエンドか、けれどきっと、皆最後は笑えるようになる日がくる。





しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(6件)

アザトース
2021.02.11 アザトース

涙が止まらない。

解除
アナカリス
2020.10.17 アナカリス

毒殺未遂の話の原点ってことで読みました。やっぱり涙腺崩れました。

解除
四十雀
2020.10.03 四十雀

「毒殺未遂だらけの私が王子様の婚約者?」からこちらの作品に来ました。
私は、幸せの価値観は人それぞれだとこの作品を読んで思いました。

千 遊雲
2020.10.03 千 遊雲

二作品も読んで頂き、ありがとうございます!
価値観は人それぞれ、確かにその通りですね!

解除

あなたにおすすめの小説

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

妻の死を人伝てに知りました。

あとさん♪
恋愛
妻の死を知り、急いで戻った公爵邸。 サウロ・トライシオンと面会したのは成長し大人になった息子ダミアンだった。 彼は母親の死には触れず、自分の父親は既に死んでいると言った。 ※なんちゃって異世界。 ※「~はもう遅い」系の「ねぇ、いまどんな気持ち?」みたいな話に挑戦しようとしたら、なぜかこうなった。 ※作中、葬儀の描写はちょっとだけありますが、人死の描写はありません。 ※人によってはモヤるかも。広いお心でお読みくださいませ<(_ _)>

まさか、こんな事になるとは思ってもいなかった

あとさん♪
恋愛
 学園の卒業記念パーティでその断罪は行われた。  王孫殿下自ら婚約者を断罪し、婚約者である公爵令嬢は地下牢へ移されて——  だがその断罪は国王陛下にとって寝耳に水の出来事だった。彼は怒り、孫である王孫を改めて断罪する。関係者を集めた中で。  誰もが思った。『まさか、こんな事になるなんて』と。  この事件をきっかけに歴史は動いた。  無血革命が起こり、国名が変わった。  平和な時代になり、ひとりの女性が70年前の真実に近づく。 ※R15は保険。 ※設定はゆるんゆるん。 ※異世界のなんちゃってだとお心にお留め置き下さいませm(_ _)m ※本編はオマケ込みで全24話 ※番外編『フォーサイス公爵の走馬灯』(全5話) ※『ジョン、という人』(全1話) ※『乙女ゲーム“この恋をアナタと”の真実』(全2話) ※↑蛇足回2021,6,23加筆修正 ※外伝『真か偽か』(全1話) ※小説家になろうにも投稿しております。

多産を見込まれて嫁いだ辺境伯家でしたが旦那様が閨に来ません。どうしたらいいのでしょう?

あとさん♪
恋愛
「俺の愛は、期待しないでくれ」 結婚式当日の晩、つまり初夜に、旦那様は私にそう言いました。 それはそれは苦渋に満ち満ちたお顔で。そして呆然とする私を残して、部屋を出て行った旦那様は、私が寝た後に私の上に伸し掛かって来まして。 不器用な年上旦那さまと割と飄々とした年下妻のじれじれラブ(を、目指しました) ※序盤、主人公が大切にされていない表現が続きます。ご気分を害された場合、速やかにブラウザバックして下さい。ご自分のメンタルはご自分で守って下さい。 ※小説家になろうにも掲載しております

そういうとこだぞ

あとさん♪
恋愛
「そういえば、なぜオフィーリアが出迎えない? オフィーリアはどうした?」  ウィリアムが宮廷で宰相たちと激論を交わし、心身ともに疲れ果ててシャーウッド公爵家に帰ったとき。  いつもなら出迎えるはずの妻がいない。 「公爵閣下。奥さまはご不在です。ここ一週間ほど」 「――は?」  ウィリアムは元老院議員だ。彼が王宮で忙しく働いている間、公爵家を守るのは公爵夫人たるオフィーリアの役目である。主人のウィリアムに断りもなく出かけるとはいかがなものか。それも、息子を連れてなど……。 これは、どこにでもいる普通の貴族夫婦のお話。 彼らの選んだ未来。 ※設定はゆるんゆるん。 ※作者独自のなんちゃってご都合主義異世界だとご了承ください。 ※この話は小説家になろうにも掲載しています。

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。