4 / 13
もう、いいのです
4
しおりを挟む
「どんな事情があろうとも、王家との約束を反故にした貴様は咎人だ!」
「なら、後で何でも罪はお受けします!だから、それを返して下さい!!!」
「巫山戯るな!!!」
咎人の癖に、フィルを裏切っていた癖に、指輪にしか目を向けないクレアに、フィルはプツリと何かが切れてしまった。
「そんなにこれが大事か!ならこれを失うことを、貴様への罰としてやろう!!!」
怒りに突き動かされ、その勢いのまま窓から城の堀へと指輪を投げた。
クレアの瞳が大きく開かれる。
水の溜まった大きな堀の中に小さな指輪がぽちゃりと落ちたのと、クレアの瞳から涙がこぼれ落ちたのは同時だった。
クレアの瞳からこぼれ落ちた涙はたったの一滴だったけれど、その涙に全ての悲しみを込めたかの様だった。
『何故、泣いているの?我が愛し子』
その涙が、床に落ちもしないうちに、酷く美しい声が聞こえた。
ふわりと半透明な女が、どこからか現れた。
真っ白な髪に、金色の瞳をした、この世のものとは思えないほど、美しい姿の女だった。
『愛し子、何がそなたを苦しめた?』
女は項垂れるクレアの元に、宙を滑るように近寄り、その肩に透ける手を置く。
それでもクレアは答えない。
否、ショックで女の声が聞こえない様にも見えた。
『そこの、何が起きたのか教えなさい』
女はクレアが答えないと知ると、透き通る白い指でフィルを指差した。
変な女に答える道理などないとフィルは思った。
けれど。
「彼女との婚約を破棄し、婚約の印の指輪を取った。けどそれは王家の指輪ではなく、浮気をしていた罰として指輪をそこの堀に捨てた」
フィルの口は、思考とは別に勝手に動いた。
驚愕に目を見開くフィルなど微塵も気にせず、女はクレアを抱きしめる。
『可哀想な愛し子。そなたの悲しみは痛いほど伝わるわ。けれど私はそなたの声が聞きたい』
「なら、後で何でも罪はお受けします!だから、それを返して下さい!!!」
「巫山戯るな!!!」
咎人の癖に、フィルを裏切っていた癖に、指輪にしか目を向けないクレアに、フィルはプツリと何かが切れてしまった。
「そんなにこれが大事か!ならこれを失うことを、貴様への罰としてやろう!!!」
怒りに突き動かされ、その勢いのまま窓から城の堀へと指輪を投げた。
クレアの瞳が大きく開かれる。
水の溜まった大きな堀の中に小さな指輪がぽちゃりと落ちたのと、クレアの瞳から涙がこぼれ落ちたのは同時だった。
クレアの瞳からこぼれ落ちた涙はたったの一滴だったけれど、その涙に全ての悲しみを込めたかの様だった。
『何故、泣いているの?我が愛し子』
その涙が、床に落ちもしないうちに、酷く美しい声が聞こえた。
ふわりと半透明な女が、どこからか現れた。
真っ白な髪に、金色の瞳をした、この世のものとは思えないほど、美しい姿の女だった。
『愛し子、何がそなたを苦しめた?』
女は項垂れるクレアの元に、宙を滑るように近寄り、その肩に透ける手を置く。
それでもクレアは答えない。
否、ショックで女の声が聞こえない様にも見えた。
『そこの、何が起きたのか教えなさい』
女はクレアが答えないと知ると、透き通る白い指でフィルを指差した。
変な女に答える道理などないとフィルは思った。
けれど。
「彼女との婚約を破棄し、婚約の印の指輪を取った。けどそれは王家の指輪ではなく、浮気をしていた罰として指輪をそこの堀に捨てた」
フィルの口は、思考とは別に勝手に動いた。
驚愕に目を見開くフィルなど微塵も気にせず、女はクレアを抱きしめる。
『可哀想な愛し子。そなたの悲しみは痛いほど伝わるわ。けれど私はそなたの声が聞きたい』
704
お気に入りに追加
660
あなたにおすすめの小説

もうすぐ、お別れの時間です
夕立悠理
恋愛
──期限つきの恋だった。そんなの、わかってた、はずだったのに。
親友の代わりに、王太子の婚約者となった、レオーネ。けれど、親友の病は治り、婚約は解消される。その翌日、なぜか目覚めると、王太子が親友を見初めるパーティーの日まで、時間が巻き戻っていた。けれど、そのパーティーで、親友ではなくレオーネが見初められ──。王太子のことを信じたいけれど、信じられない。そんな想いにゆれるレオーネにずっと幼なじみだと思っていたアルロが告白し──!?

【完結】愛されないと知った時、私は
yanako
恋愛
私は聞いてしまった。
彼の本心を。
私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。
父が私の結婚相手を見つけてきた。
隣の領地の次男の彼。
幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。
そう、思っていたのだ。

【短編】婚約者に虐げられ続けた完璧令嬢は自身で白薔薇を赤く染めた
砂礫レキ
恋愛
オーレリア・ベルジュ公爵令嬢。
彼女は生まれた頃から王妃となることを決められていた。
その為血の滲むような努力をして完璧な淑女として振舞っている。
けれど婚約者であるアラン王子はそれを上辺だけの見せかけだと否定し続けた。
つまらない女、笑っていればいいと思っている。俺には全部分かっている。
会う度そんなことを言われ、何を言っても不機嫌になる王子にオーレリアの心は次第に不安定になっていく。
そんなある日、突然城の庭に呼びつけられたオーレリア。
戸惑う彼女に婚約者はいつもの台詞を言う。
「そうやって笑ってればいいと思って、俺は全部分かっているんだからな」
理不尽な言葉に傷つくオーレリアの目に咲き誇る白薔薇が飛び込んでくる。
今日がその日なのかもしれない。
そう庭に置かれたテーブルの上にあるものを発見して公爵令嬢は思う。
それは閃きに近いものだった。

婚約者とその幼なじみの距離感の近さに慣れてしまっていましたが、婚約解消することになって本当に良かったです
珠宮さくら
恋愛
アナスターシャは婚約者とその幼なじみの距離感に何か言う気も失せてしまっていた。そんな二人によってアナスターシャの婚約が解消されることになったのだが……。
※全4話。

[完結]愛していたのは過去の事
シマ
恋愛
「婚約破棄ですか?もう、一年前に済んでおります」
私には婚約者がいました。政略的な親が決めた婚約でしたが、彼の事を愛していました。
そう、あの時までは
腐った心根の女の話は聞かないと言われて人を突き飛ばしておいて今更、結婚式の話とは
貴方、馬鹿ですか?
流行りの婚約破棄に乗ってみた。
短いです。

婚約破棄? そもそも君は一体誰だ?
歩芽川ゆい
恋愛
「グラングスト公爵家のフェルメッツァ嬢、あなたとモルビド王子の婚約は、破棄されます!」
コンエネルジーア王国の、王城で主催のデビュタント前の令息・令嬢を集めた舞踏会。
プレデビュタント的な意味合いも持つこの舞踏会には、それぞれの両親も壁際に集まって、子供たちを見守りながら社交をしていた。そんな中で、いきなり会場のど真ん中で大きな女性の声が響き渡った。
思わず会場はシンと静まるし、生演奏を奏でていた弦楽隊も、演奏を続けていいものか迷って極小な音量での演奏になってしまった。
声の主をと見れば、ひとりの令嬢が、モルビド王子と呼ばれた令息と腕を組んで、令嬢にあるまじきことに、向かいの令嬢に指を突き付けて、口を大きく逆三角形に笑みを浮かべていた。


【完結】留学先から戻って来た婚約者に存在を忘れられていました
山葵
恋愛
国王陛下の命により帝国に留学していた王太子に付いて行っていた婚約者のレイモンド様が帰国された。
王家主催で王太子達の帰国パーティーが執り行われる事が決まる。
レイモンド様の婚約者の私も勿論、従兄にエスコートされ出席させて頂きますわ。
3年ぶりに見るレイモンド様は、幼さもすっかり消え、美丈夫になっておりました。
将来の宰相の座も約束されており、婚約者の私も鼻高々ですわ!
「レイモンド様、お帰りなさいませ。留学中は、1度もお戻りにならず、便りも来ずで心配しておりましたのよ。元気そうで何よりで御座います」
ん?誰だっけ?みたいな顔をレイモンド様がされている?
婚約し顔を合わせでしか会っていませんけれど、まさか私を忘れているとかでは無いですよね!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる