異世界で俺はチーター

田中 歩

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{第八十七話} ブルーキャッツ

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用件が終わったおじさんとオレは、喫茶店から出た。
「俺はやる事がある」
おじさんはそう言うとバラスクの大通りを歩いて行った。
ふと、ネラが居ない事に気づいた。
記憶をさかのぼり、ネラを最後に確認した場所を思い出す。
北西の関所で最後に見てから、確認していない気がするな。
取り合えず、ネラに電話を掛けた。

「はい、ご用件は何でしょうか?マスター」
「今何処にいる?」
「京一様に頼まれて、エキサイトが詰まれた馬車を処理施設まで護衛していました。今丁度、目的地の処理施設までの護衛が終わったので、マスターの元へ行こうと思っていました」
「そうか。今は「ブルーキャッツ」って喫茶店の前にいるんだけど、おじさんは用事が出来たらしくて何処かへ行っちゃった」
「そうですか、分かりました。今からそちらへ向かいます」

もう一度喫茶店の中に戻り、コーヒーを注文した。
しばらくスマホで小説投稿サイトで異世界物の小説を読みつつ、朝食を食べ忘れている事を思い出したので、パンケーキを食べていると、ネラが店内に入って来た。
「お待たせてして申し訳ありません」
「問題ない」
「この後に何か予定はありますか?」
「それが無いんだよね。取り合えず、街中を散歩してみるか?何か予定が出来るかも分からん」
「分かりました、街中を散歩しましょう。付き合います」
喫茶店「ブルーキャッツ」を後にし、帝都の散歩に出かけた。

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 

気づくと自室のソファーに寝転がり「バック・トゥー・ザ・フューチャー」を見ている。
一作目の無印を見終わって、二作目の「2」に手を出そうとしている。
ちなみにネラは昼食の支度をしてくれている。
キッチンから漂ってくる匂いを嗅いだり、調理音から想像してみてはいるが、いまいちよく分からない。
「マスター、昼食の用意が出来ました。今日の昼食は「うどん」です」
ネラがお盆に載せて持ってきたうどんには、かき揚げとエビフライが載っていて、かまぼこを薄く切った物が二枚添えられていた。
先に食べて良いとネラに言われたので、オレは冷蔵庫の中から七味唐辛子を取り出しうどんに掛け、麺をすすった。
そこへおじさんが帰って来た。
スーツ姿のおじさんはジャケットをイスに掛け、席に着くとうどんをすすり始めた。
ネラの分だと思っていたもう一つの方は、どうやらおじさんの物だったらしい。
ネラはキッチンで麺の湯切りをしていた。
あれが本当のネラの分なのだろう。
ネラも席に着き、三人でうどんをすする。
おじさんが話しを切り出した。
「さっき言ってたカジノだけど、俺がオーナーになったから。姫様と行くカジノはウチにするといい。その方が安心だし、安全だろ? そうだ、ネラは後でパナノに来てくれ。店の改装の手伝いを頼みたい」
「わかりました」
食事が終わると、ネラは食器の洗いおじさんと部屋を出て行った。
さてと、どうしたものか?
取り合えず、姫様に「カジノに連れて行く」と言う約束をすっぽかした事への謝罪をしなければ。
姫様に謝罪すべく、オレは自室を後にした。

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 

宮殿の前まで来た。
中に入ろうとしたら門番に止められたが、おじさんから貰った貴族の紋章が書かれたバッチを見せると、簡単に通してくれた。
そう考えると、おじさんってやっぱりすごい人なのか?
宮殿内に入るが、姫様の居場所を知らない。
近くを通った使用人を捕まえ、居場所を聞くが教えてくれない。
さてどうしたものか?
辺りを見回すと、何処かで見たことある執事が歩いていた。
向こうもオレに気づいたようなので、近づいて行き姫様の居場所を聞く。
さっきまでの使用人とは違い、意外とあっさりと教えてくれた。
場所を聞きたが、「書斎」と聞いただけでは結局場所は良く分からなかった。
しかし、これは一歩前進である。
姫様の場所を聞くより、姫様が居るその書斎を聞く方が普通に教えてくれるだろう。
姫様の場所を聞くと、よからぬ疑いを掛けられたとえ知っていたとしても教えてくれなかっただろう。
逆にその書斎の場所を聞くだけなら、何か用事があるとしか思われず、特に何も無く教えてくれるだろう。
とは言ったものの、その書斎の場所を聞かなくてはならないわけだが、誰に聞こうか?
と、おや~?また、何処かで見た事があるメイドさんが居る。
あの子は誰だっただろうか、何処かで見たことがあるような。
思い出した、パーティーの時に一緒にビュッフェを食べたメイドさんだ。
そのメイドさんに書斎の場所を聞き、そこまで連れて行ってもらった。
部屋の前に着くと、メイドさんにお礼を言って別れ、ノックをして部屋の中へ。
「失礼します」
「入りたまえ」
中から国王の声が聞こえたのを確認し、扉を開け中へ入った。
中へ入ると、国王と姫様が読書をしていた。
「読書中失礼します」
申し訳なさそうに部屋に入っていくオレに対し、国王と姫様は何時も通りと変わらぬ様子だ。
何故かとても久しぶりな気がするが、気のせいだろう。
「今日は姫様に用事があって来た」
姫様の方を見ると何のことか分からないと言った感じだ。
「この前「カジノに連れて行く」と約束したのに、約束を守れなかった。申し訳ない」
「その件ですね、理由は京一様から聞きました。仕方ないですよ」
ん?理由?京一様?オレは聞いてないぞ?
これは姫様の口から聞きだすしかない。
だって、オレは何も聞いてないからな。
「おじさんからはどういった感じで聞いてる?」
「京一様からは「今のバラスクあまり姫様にオススメ出来ない場所になってるから、俺がオススメ出来る場所になるまで少し待ってもらえるか?昌はそう言った理由で姫様を誘うことが出来なかっただけだから、責めないであげてくれ」と言われました。そういった理由があったなら仕方ありません。私のためにわざわざすいません」
内容は大体理解した、どうやらおじさんはオレを擁護してくれらしい。
ここはおじさんの心遣いをありがたく受けさせていただこう。
「なるほど、分かった。その「オススメ出来ない」って言う理由はおじさんが片付けたらしいから、もう行けると思うからまた誘うよ」
おじさんに助けられた感じだが、問題は解決した。
そろそろ助けられるが、おんぶに抱っこになりそうだ。
助けられているようでは、この世界に来た意味が無い。
異世界に限らず、現世でもそうだが。
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